第12話 家で、べんきょー
杖に付けていた魔石の力が切れてしまった。
今の私は魔法が使えない。つまり無防備で誰かの悪意に抵抗できない。
ただの女の子じゃ力も弱いし、悪者に出会ったが最後奴隷行きまっしぐら。
街に繰り出すのに待ったがかかる。
「なるほど、では私はウィッチクラフトを教えればよいのですね?」
モディはニコラに凄く嬉しそうに問いかける。
やっぱり構ってほしくて仕方ない子犬のように見える。
さっき首を切り落とされたばかりなのにもう傷は消えている。
不忘の魔女は決して忘れない魔法の発案者。
状態を記録してその状態を決して忘れない。少しでも変われば即座に戻す。
つまり、死なないらしい。
不死身の魔女は数人いるらしいけど、その一人なのだとか。
「ステラにひどいことをした罰です。しっかり覚えさせてください」
「そのウィッチクラフトって危なくないの?」
「要は錬金術です。まあ、魔女式のものなので魔術の心得がないと難しいですが」
「ふむふむ、たまに作る魔石鉱溶液の調合みたいなのか」
この世界に来てからは薬とかそう言ったこまごましたものは自分たちで作っている。
錬金術は前の世界ではほぼファンタジーだったけどここでは本当に実在する。
ニコラにも基本の薬や魔石鉱溶液の作り方は習っていた。
「魔法薬と混合魔石ぐらいは作れるようにしてください。森の亡者狩りは先日のお陰で、数日の猶予はあるでしょう。それまでには完成させておいてください」
「他から亡者が夜中に集まってくるんだっけ。あんなにやっつけたのにまたあの生活か……」
「領主、カンカンでしたよ。慰謝料も請求額がすごいことに、お姉さまこれ……」
モディの見せた請求書らしき紙に目を通したニコラ。
「ええ、あの。これ、間違いではないのですか?」
ニコラは何度も見直してモディに確認する。
「いいえ、その額です。街道をそれて散った亡者に壊された外れに立ってた家々の修理依頼が多いです」
「そ、その人たちは無事だったの?」
「幸いどれも空き家です。人的被害は軽微とのことです」
「す、少しお勉強してもらうわけには……」
「無理そうですね~。あの領主ですから」
その言葉にニコラはがっくりと頭を垂れる。
人死には出なかったものの結構な被害を出してしまっていた。
「もう絶対、あの仕事の時には大声は出さない……」
「本当にもうやめてください。これでは私でも破産してしまいます」
ニコラの稼ぎが消えるほどの金額に戦慄を覚える。
また私の借金が増えましたとさ……
これは本気で薬師になって稼ぎまくらないと何されるかわからない。
私は命の危機よりも、真っ先に貞操の危機を感じていた。
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