第11話 町の、おうちで……
モディはやっと私を解放した。
「さてっと、じゃあおうちに帰ろっか?」
突然の変貌ぶりに私はあっけにとられる。
私の殺害に失敗したから家に行って今後を話し合うという。
「もちろんだけど、さっきのことは二人だけの秘密ね?」
ウインクして笑顔を向けられても怖いだけだ。
可愛いおねーさんモードのモディは女の子でも騙されそうだ。
やばい契約書にサインしてしまっても仕方ない。
うん、新たな魔女の契約。ニコラを全力で守ること。
ニコラの危機に裏切らないことなどが追加された。
「断ったら殺す。お姉さまへは野盗にうっかり殺されたせいで、泣く泣く魔石に封じたと説明する」
こんなこと言われたら仕方ない。
それでもニコラ、あなたのことを物凄く怒ると思うけど。
この世界私にちょいと厳しすぎません?
命の価値が呪いのせいで酷く軽くなりすぎている。
「ただいま戻りました、お姉さま」
「ああ、モディ。思ったより早かったですね」
「はい、お姉さまの大切なペットを危険にさらすわけにもいかず急ぎ戻ってまいりました」
ああ、ペット枠なんだ私。
それよりこのモディさんさっきの雰囲気から一転して明らかにニコラしか見てない。
尻尾があったらぶんぶん振ってる子犬みたいだ。
ニコラにぞっこんなのね、この人。
「ペットじゃないよ!」
「そうです。私の大事な抱き枕です」
「そ、そんな。抱くなら私にしてください」
モディがそんなことを言いだす。
稼ぎがなかったときは体で払う。そういう話で抱き枕になるんだけど、ニコラは寝相が恐ろしく悪い。幾度か絞殺されそうになった。
あんな目にあいたいとはこの人やっぱヤバイ。
「それならとりあえず今日は部屋の中で過ごしましょうか?」
ニコラの提案に三人で家の中に入る。
そのとたんぞわっと髪の毛が逆立つ。
「私のステラに、よくもやってくれましたね?」
ニコラが激おこです。もしかして、さっきのやり取り最初から見られていた?
そして、止める暇もなくモディの首を切り落とした。
床に飛び散る蒼い血。ゴロゴロと転がるモディの首と目が合った。
途端、こみ上げてくる酸っぱいもの。
私はいつものごとくトイレに駆け込み戻してしまった。
「ちょっと、チャーム効きすぎてない?」
「そうかな、いつものことのように思えるけど」
「ニコラも、あんたたち魔女もいかれてる……」
私はえづきながらもなんとかトリッシュと話す。
この世界の者たちは命に対して軽く考えすぎる。
それに殺してしまって領主にどう説明する気なのか。
「あ、もう平気ですか?」
ニコラはいつもの笑顔で私を迎える。
その横には見知った顔が立っていた。
「ご、ごめんなさい……」
ついさっき首を切り落とされて死んだはずのモディだった。
「ああ。いつものことってそういう事ね……」
魔女は不老。ついでに不死のものも結構多いようだ。
後に聞く話。不忘の魔女、モディ。
その二つ名は伊達ではなかった。
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