第43話 ゼロが彼女を救う理由
あのぉ……☆の増え方がえげつなくてビビってるどうもあおぞらです。
1日で☆が約1500くらい増えました。
普通に意味わからないくらい増えてて、この作品が愛されてんだなぁ……って思いました。
それに沢山の応援コメントもありがとうございます。
愛用のモンスター片手に頑張るとします。
—————————————————————
———やはりと言うべきか……戦いは完全に泥沼と化していた。
『むぅぅぅんッッ!!』
「あがっ……!?」
全方位から放たれる土の槍と風の斬撃を避ける俺の一瞬の隙を突いて、ヴルガンと呼ばれる火の精霊の炎の拳が襲い掛かる。
何とか避けようとするも、拳に気を取られて足に槍が刺さり、本日何度目になるかも分からない半身が消し飛ぶ炎の一撃をモロに食らい……流石の俺も思わず苦痛で顔を歪めた。
しかも面倒なことに、切断面が炭化していて再生も遅いのに飽き足らず———
「複合魔法———【
精霊魔法ではない、セラ自身の魔法がこうして飛んでくるのだ。
セラが手を翳すにと同時に現れた魔法陣から放たれる一条の雷が、光に迫る速度で空を駆け———俺の身体を貫くと共に内側を焼き尽くした。
ビクンッと身体が痙攣し、一瞬意識が飛びそうになるが……寸前の所で踏み留まり、全身がミシミシと音を鳴らすのも無視して片腕のまま構えを取ると。
「【飛燕斬:連式】」
一瞬にも満たぬ時の中で幾度となく剣が閃き、ほぼ同タイミングで放たれた幾つもの斬撃が、俺へと迫る風の斬撃や土の槍をはたき落とす。
「【縮地】」
続けざまに使用した【縮地】でパッと消えるような動きでセラの眼前に迫ると。
「【剛剣】」
「【
右手だけでなく、既に再生している左手でも柄を握って、重くなった剣を振るう。
対するセラも『高速詠唱』と呼ばれる高等技術を使って一瞬の内に硬質な風の防壁を発動。
———ギギギギギギッッ!!
両者が激しくぶつかり会うとこで甲高い音が響き渡り、接触面から地面を焦がすほどの熱量を誇る火花が散った。
……チッ、届かねーか。
てか魔法使いなのにどうして騎士の動きについて来れんだよ……!!
ずるだろ、チート過ぎるだろ!
またもや渾身の一撃を涼しい顔で受け止められたことに、俺は内心舌打ちを打つ。
———ずっとコレだ。
既にこれと似た攻防を十数回も繰り返している。
どれだけ俺が果敢に攻め立てようと、いつの間にか此方が攻撃を受け、俺の攻撃はセラに触れることすら出来ない。
「……いい加減諦めてはどうでしょうか?」
全く汚れの付いていないドレスを身に纏ったセラが眉間に皺を寄せ、呆れや驚嘆、疑問などの籠もった瞳を向けて、コレで何度目かになる全く同じ提案を提示する。
しかし、俺の返答も今までと全く同じだ。
「無理だね、こちとら負けたら団長に殺されるんだわ。それに悪いけど……あの時から俺だけは絶対的な俺の味方でいるって決めたんだ。だから、俺のわがままを押し通させて貰うぜ?」
そう肩を竦めて告げた俺は背後から拳を振るっていたヴルガンの拳を、セラの防壁を足場にして飛び上がりながら避ける。
身体が宙を舞い、一瞬だけ浮遊感が俺の身体を支配するが……その直後には押し潰さんとばかりに水が俺の身体を包み込んで締め上げた。
しかし、いい加減対処にも慣れてきた。
俺は全身に掛かる重圧を諸共せず、剣を何度も振るって水牢を破壊。
『うそっ……!?』
「もうその攻撃は見飽きたわ! あんま俺を舐めんなよ!」
俺は足場のない空中でそう叫ぶと。
「いい加減くたばれ———【震剣】ッッ!!」
腕をしならせながら剣の腹でウンディーネと呼ばれた水の身体を持つ美女を叩く。
———パァァァァン!!
風船が破裂する音を何倍にもしたかのような破裂音が木霊し、断末魔を上げる間もなくウンディーネの身体が四方八方に爆散する。
これには他の精霊達やセラも驚愕に目を見開き、反対に俺はニヤッと笑みを深めた。
どうせこの程度では死なないだろうが……再び顕現されるには魔力が必要になるので、仮に顕現させるならセラの魔力も大幅に減らせる。
そして例えセラが再び顕現させない選択をしても、相手が減れば俺が勝つ確率も増えるのでデメリットはない。
ふっ……我ながら完璧な動きだぜ……。
まぁそれでも勝率は遥かに低いんだけどね、くそったれが。
何て内心でテンションがジェットコースター並に上下する中、俺は何故か動きを止めたセラへと言葉を投げ掛ける。
「おいおい何ぼーっとしてんだよ。そんなんじゃあ———」
俺が勝っちまうぞ、と続く言葉は結局音となることはなかった。
空気が変わったのだ。
セラの纏う空気が、人間ではなく……本当に戦争兵器のようにどこまでも冷酷で鋭いモノへと一変した。
「……お前……」
「そう、ですね……私の不始末です。あまりにも貴方が綺麗で……その光を失うことを躊躇った結果です。ですので———」
彼女と視線が合う。
同時に、全細胞から今までないくらいの警鐘が鳴り始めた。
目を逸らせば死ぬと直感が囁いている。
彼女の瞳は……既に俺を映しているようで映していない。
例えるならば、そう———。
「———次で貴方を殺します。跡形もなく、この世から葬り去ります」
ただ標的に狙いを定める———銃の照準のように無機質で冷たかった。
噂に違わぬ空気を纏う彼女は、アメジストの髪を揺蕩わせながら俺へと手を翳す。
そんな彼女に倣うように俺が爆散させたはずのウンディーネも含めた四大精霊達も俺に向けて手を翳した。
魔力が煌めく。
5人の膨大な魔力が可視化され、混ざり合い———美しく光り輝く。
俺を中心に、空に巨大な魔法陣が浮かび上がり、それの周りに大小様々な魔法陣が付随して展開される。
その光景を、俺はただ眺めていた。
身体は動かない。
否、動けない。
今から繰り出される一撃からは、逃げることなど出来ないと悟ったから。
は、ははっ……これは、無理だ。
いやぁ……マジでヤバいと笑いしか出ねーな。
何て乾いた笑みを浮かべて呆然と見つめる俺を他所に、魔力吹き荒れる中心にて———セラがそっと物を置くように紡いだ。
「星魔法———【
眩い光が俺を包み込む———。
———なぜ俺がこんな無謀な行動に出ているんだろうな。
眩い光の中。
まるで時の流れが遅くなったかのように、薄れゆく意識の中でゆっくりと身体が消滅する喪失感に襲われながら……俺は胸中でポツリと呟いた。
もちろん彼女ともう1度しっかり話したい、というはある。
あの時もし引けていれば、絶対に後悔していたのも嘘じゃない。
ただ、それだけで命を賭けられるほど……俺もお人好しじゃない。
では何故か?
何故俺は彼女を見捨てられなかったのか?
答えは単純だ。
この世界の両親に———セラが似ていたから。
もちろん見た目は全然違う。
母さんはこんな美人じゃないし、そもそも父さんに至っては女ですらない。
似ているのは、その雰囲気だ。
儚くて、何かの拍子に壊れてしまいそうな、消えて無くなってしまいそうな雰囲気が、自らを顧みない俺の両親に似ていた。
どれだけ2人が楽しそうに笑っていても、その雰囲気は一切消えることはなく……それが俺は怖くて、無性に落ち着かなかった。
嫌な予感がしたと初めて感じたのは、多分その時だと思う。
そしてその嫌な予感は的中し———2人は死んだ。
始めに死んだのは、父さんだった。
まだ6歳だった俺と母さんに少しでも裕福な暮らしをさせようと、1人、魔物を狩りに行き……そのまま食い殺されてしまったのだ。
騎士の人が殺した魔物の近くに落ちていた、と言ってその日父さんが着ていった服と斧を持ってきたので間違いない。
そして父さんが死んでから5年後、母さんが死んだ。
俺も働くと告げても結局最後まで頷かずに『ゼロはお友達と遊んでいなさい。それが子供のお仕事です』と言って、父さんの代わりに俺を養おうと色々な仕事を掛け持ちした結果———過労死した。
だから誓った。
———2人の分まで精一杯楽しく生きてやろう、と。
そんな経験をしたからだろう。
今の俺を作った、今は居ない両親と似ている———セラという少女をどうしても見て見ぬふりすることが出来なかったのは。
まぁそれで自らの命を賭けている時点で、結局俺も自分の身を顧みなかった両親と大して変わらないんだけど。
うーん……遺伝って怖いね。
何て在りし日のことを思い出した俺は、小さく苦笑を零す。
———こんなとこで、終わってられないな。
この命は、父さんと母さんの命を糧に出来ている。
2人が命を燃やして、俺という薪に火を焚べたお陰で生きている。
ここで死ぬことほど———親不孝なものはない。
だから生き残るためなら———。
———限界?
———絶体絶命のピンチ?
ハッ、全部まとめて———ぶち破ってやんよ。
そう啖呵を切りつつも、意識がもう風前の灯火であり、助かる可能性がないことは分かっていた。
当たり前だ。
身体のほぼ全てが消滅してしまっているのだから。
でも、俺は諦めない。
なぜなら———俺は馬鹿だから。
意地でも生き残って———あの時両親に言えなかったことを、今度こそ言ってやるのだ。
———人を頼ったっていいんだぞ、と。
その言葉を胸に———俺の意識は途絶えた。
『———君は、本当に面白い子だね。だから……今回だけ』
意識のないゼロの口が、無意識の内に魔法名を紡ぐ。
「«概念強化・対象:【無限再生】»———【
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます