連作短編についていろいろ

今回は、連作短編について書いてみますね。

短編が得意な方は、短編をつなげていって長編にすることがあると思います。

そんなときに、参考にしていただけると幸いです。



▼連作短編について考えたきっかけ

僕自身が短編小説が好きで、読んだり書いたりしてきました。

そこで、連作短編にして、短編スキルを活かせないかな、と思っていろいろ研究してきました。

そんな中での、僕の考えたことを紹介したいと思った次第です。



▼連作もののタイプ

世の中にある連作短編の種類を、以下のように勝手に分類します!


・アンソロジー型

コンセプトに従い、作家やジャンルをまたいでいろんな短編小説を集めたタイプ。


・群像劇型

ひとつのテーマや事件を取り巻く複数人の物語が展開するタイプ。(ミステリーで多い気がします)


・旅行記型

旅や移動の中での様々なエピソードを描くタイプ。


・連作中編型

ミステリーやライト文芸で見かける、四つくらいの、キャラ中心の活躍物語があり、最後にキャラ自身の問題に立ち向かうようなタイプ。


・箱庭型

同じ地域や、同じ条件下の別の物語を並列するタイプ。

(ホラーやファンタジーなどで、ある場所の不思議や怪異を描く、などに向いている。最近だと、変な家とか)


・来客型

店などにくる来訪者との絡みで進行するタイプ。(⚪︎⚪︎商店日誌、的な)


・アラビアンナイト型

奇妙な話が順番に語られるタイプ。

不思議な本を読むとか、語り部に聞くとか。

(このタイプだと、多崎礼の煌夜祭などの連作ものや、タニス・リー諸作品などが好みです)


こんな感じに分類してみました!

いずれにしても、エピソードごとの色合いやボリュームを揃えないとガタガタするので、読み口のコントロールも重要です。



▼連作もののメリット

ふつうの長編に比べて、読み手のモチベーションを保ちやすいです。

短編の終わりまで進めば、カタルシスを得られることが約束されていれば、まずは最初を読んでみるか、などととっつけると思います。

短編に自信があったら、連作ものは強力な選択肢になると思います。

ただ、はじめのエピソードが弱いと、見切りをつけられる可能性もありますね。



▼連作もののデメリット

連作ものを書く場合は、短編小説が書けないと難しく、連作の中に、ひとつでも質が落ちるものがあると、全体の足をひっぱりそうです。


あとは、一本の長い話にした方が輝くお話は、ぶつ切りになると読みづらくなりそうです。



▼エピソードはMECEに

連作短編の各エピソードについては、

一言でいうとMECE(ミーシー)です。MECEとは(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)の略であり、論理思考法の一種です。連作短編でいうと、『同じ深さ、同じ粒度でエピソードを揃える。さらに連作として作品世界を幅広く表現する』みたいなことです。


例えば特定の地域での不思議な話を描くとしたら、

・ある地域の中を舞台にすること

・不思議なネタが登場すること

・かぶらず、まんべんない話を揃えること

これらを満たすことで、バランスがよくなりますよね。



▼連作短編の具体例

いろんなジャンルから具体例を挙げてみます。


・キノの旅(時雨澤恵一)【旅行記型】

旅を通じて、寓意性の高い変わった国を巡る、という形式。旅そのものが、連作の必然性になっています。


・煌夜祭(多崎礼)【アラビアンナイト型】

架空の島国で開かれる、語り部たちの集まりとして展開されます。


・雪沼とその周辺(堀江敏幸)【箱庭型】

架空の町を巡る、静かで緩やかな人間模様が描かれます。地域縛りという趣向。


・風の十二方位(ル=グウィン)【箱庭型】

宇宙文明が見守る中で、寓意性のある、様々な惑星文明を描いてゆくSF作品。惑星文明縛りですね。


あくまで一例ですがこんな感じで、どんな縛りをつけて、どんな枠をつけるかがポイントです!



▼枠の話

連作短編については、各エピソードがつながっているだけの場合もあれば、枠を設ける場合もあります。

例えば、本に書かれている話を読ませていくスタイルだと、『誰がどんな状況で読んでいるのか』が枠の話になります。

先に紹介した分類の中の、どれを選ぶかで、およそ枠の話が決まってくると思います。

この枠の話によって、雰囲気や読み口もがらっと変わるので重要ですよね。



▼連作もののクライマックスについて

連作もののクライマックスについては大きく分けて、

・大きなドラマがある

・短めに終わるタイプ(まだ旅や商いは続く的な。または強烈などんでん返しで終幕)

があると思います。

いずれにしても、

本当にゆるいタイプのもの以外は、各連作のエピソードごとに、クライマックスに収斂するトリックや意味を持たせる必要はありますよね。

クライマックスは、聞き手や語り手の人物像を覆すタイプが結構多いと思います。



こんな感じで連作短編についてまとめてみました!

参考になったでしょうか?



あと、僕自身もいくつか連作短編を書いていますので、少しご紹介します。


・滅びの国の魔女紀行【旅行記型】

https://kakuyomu.jp/works/16817330669354890071


・凛都のアルカナアイズ【来客型】

https://kakuyomu.jp/works/16817330656773167740


こんな感じの連作ものを書いてみたりしています。


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