第五話『花柄シャツと硝薬』
——無人島生活開始からちょうど三週間目。
辺り一体に青臭さが立ち込める。それは、大勢が、クローバーの緑の地面を一歩、二歩と踏み締めているせい。あ、今プチプチと何かを踏み潰す音がした……えーっと、シロアリかな? シロアリってゴキブリの仲間らしい。物知りなハイジャンがそう言ってた。で、今度はグリュンとしたものを踏んだ! うーわ、キノコ! 白くてもくもくした、綿菓子か雲みたいな形。毒キノコじゃ、ないわよね? こうして今ジャングルの中にいるのも…………色々あって三日前から、生存者全員で絶賛大移動中だから。いよいよ無人島サバイバルらしくなってきた、とも言えるけれど、そんな
今やわたしとハイジャンは、生存者の二大リーダー格となったエイディ……じゃなくてルーク・マンとアダム・オーヴェルアトモスからの厳しい監視下に置かれている。二人とは仲良くなれそうだったのに、ほとんど敵同士みたいになってしまった。ああ、噂をすれば、アダムが、大玉のココヤシの実を片手に、こっちを見て嫌な笑みを浮かべている。
「おおっ、いい個体だな。これはかなりの水分が期待できそうだ」
アダムは、わざとらしくこっちに聞こえるような声量でそう言った。見せつけてくるの、ちょっと……キショいかも。アダムは近くにあった
爆散。
「チッ、破裂しちまったぜ。もったいねぇ」
うわぁ……だっさぁ。わたしはハイジャンに目配せして、仲良くクスッと笑い、しくじったアダムを小馬鹿にする。常識人のルークさんもちょっと
生存者集団の
そういうわけでわたしたちは資源を求めて、右上の島から反時計回りに、右下の島を目指している。右下の島の可能性は未知数だし、行ってみる価値は大いにあるんだけど、
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______△△←ココナッ!____
かなり歩いた。
もうヘトヘト。しかも、さっき景色がクローバーの緑から、見渡す限りの岩に変わってから、辺りは急に蒸し暑くなって、まるでサウナにいるみたい。顎や、肘や、指先から滴る汗の量が、水分摂取量を明らかに上回っている。ハイジャンはさすがレエム捜査官というだけはあって、涼しい顔をしている。でも他のみんなは……限界って感じよね。
……ん?
わたしはスースーと鼻で呼吸する。
何か臭うわね。
クローバーの青臭さではない。
ゆで卵、のような…………そう、あれよ、腐卵臭ってやつ?
「ねぇ、腐った卵みたいな臭いがしない?」
相変わらずわたしの横にピッタリとくっついているハイジャンに、そう尋ねる。まぁ、わたしの方がハイジャンにくっついているとも言えるけどね。いや、二人ともくっつきたいのよ、きっと相思相愛、ぐへへ。あと一つ付け加えるとすれば、わたしが汗臭くないかどうかについても、ちょっと懸念。
「うん。こりゃきっと……温泉だろうな」
おんせん!!
本当ですか隊長殿!?
つまり海水でなく淡水があるってことよね?
「えっ嘘、温泉?」
「ああ、間違いない。この強烈な硫黄臭は、温泉だ」
現役レエム捜査官のあなたがそう言うなら、そうに違いないわ。きっと火山地帯のミッションなんかもあって、こういう場所も慣れっこなんでしょうね。
目の前の大きな岩の裏手から、灼熱の湯気が、雲のようにもわっと漂ってくる。そして湯気が晴れると……
ここは海なのかと思うほどの温水の広がり。
ところどころ、ブクブクと音を立てて泡立っている。間違いなく、温泉だ。
「まぁ、本当に温泉があるなんて!! 感動だわ……」
わたしが温泉に目を輝かせていると、ハイジャンがしゃがみ込み、そばの湯だまりから両手で湯をすくい上げて、口に含んだ。喉仏が色っぽく、上下に動く。
「うん、ちょっと苦いけど、いけるぞ。この苦さはきっと、この温泉が
わたしも飲みたい気持ちは山々だけど、ちょっと立ち止まる。硫酸とかなんだか危なそうだし、そもそも温泉って飲んでいいの??
「それ、本当に飲んでも大丈夫? 硫酸なんでしょ? それに他にも何か良くないものというか、不純物が入っていたりしない?」
「問題ない。怖がらなくていい、硫酸と言っても、何もみんながよく思い浮かべるような液体の強酸が大量に溶け込んでいるってわけじゃなくて、硫酸
ふぅん。とにかく大丈夫そう、なのね。そうときたら、やることは一つよね。わたしは岩場を力強く踏み込んで、久しぶりの
ざぶーん。
「ひゃー!! なんて気持ち良いのかしら!!」
飛び込み。
汗を流しながら、水分補給。それだと流した自分の汗を飲んでいることになるのでは、という指摘は受け付けない。
「ははは、夏海さんは、豪快だなぁ。じゃあ俺も」
ハイジャンも続いた。これってつまり混浴? どきどき。
「おおっ、あの二人、思い切りがいいな」
ご新規一名様、ざばーん。
ルークさんの水しぶきは少し大きい。
「お前ら、子供かっての」
アダムはそう言いつつも、ちゃっかりゆっくり湯に浸かっている。
みんな、次々と真似し始めた。わたしはファーストペンギン温泉バージョンだったというわけね。もう何日も、お風呂に入れずにいたもの、こうする他ないわ。みんなの
ああ、極楽極楽。
いい湯加減。
でもあんまり
のぼせちゃいそうね……
ちょっと頭がぼーっとしてきたかも……
湯気も相まって視界がぼんやりとしてきた……
って危ない危ない!
気を抜くと溺れちゃうわ。
近くにハイジャンの腕を見つける。
そこに、コアラみたいにしがみつく。
あなた、いい腕、しているわねぇ。
ブクブク……
あ、沈みそう。
ブクブクブク…………。
……。
……。
……。
「夏海さん? 夏海さん!? 早く、起きて!」
ハイジャンがわたしの肩を叩く。
ん?
わたし寝てた?
いや……
ぼーっとして沈みかけてただけね。
「どうしたの? そんなに慌てて」
「慌てるも何も、早く上がって逃げないと!」
は!? 逃げる? どういうこと!?
「逃げるって何からよ?」
「見えないのか? そこらじゅうで! よくわからん部族が! 銃をバンバン撃っているのが!」
部族? 銃? ちょっと飲み込めないかも。
でも確かに……
バヒューンバヒュンと絶え間ない発砲音。
なんだか……時代遅れな印象の音ね。
「何か襲って来るぞ! みんな逃げろぉおおお!!!!」
今のはルークさんの声かしら。
「くたばれ! 野蛮
あ、そっちはアダムね。声質を抜きにしても、その過激な
湯気のもくもくの
温泉の中をザバンザバンと必死ながらもゆっくりと駆けるシルエットは、きっとわたしたち生存者のうちの誰か。
一方で温泉から上がったところの岩場には細長い何かを抱えた……あ、それは銃ね、銃を抱えて堂々とゆっくりと歩き回るシルエットは……誰?
一人、二人、四人、八人……十人以上いるわ。
なんなの、こいつらは!!
「よそ者たちめ! 聖なる泉を
男の野太い声。
わたしの知らない声だわ。
湯気が、コンサートの演出のように晴れて、声の主の姿が露わになる。
やけにでかい男。周りに部下らしきものたちを数十人従えている。ということはでかいのはリーダー格? 彼らの第一印象、ステレオタイプ的熱帯雨林の奥地の未開部族。いや、未開ではないかも、だって銃を持っているもの。わたしの、現代的な銃に対するイメージからすると、ずいぶんと旧式のものだけど。火縄銃、ってやつかな、わたしの少ない知識ではそう表現するしかない。みんなずいぶんと薄着で、浅黒い肌を露出している。髪型は男女問わず外ハネボブ。青髪。足には
「ワイの名は……ルドウィッグ。お前ら、何モンや? ちょっと来てもらおか」
デカ男はそう言って、わたしたちをどこかへと連行するのだった。
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薄暗くだだっ広い洞窟の中。
最低限の家財が配置され、洗濯物も干されていたりして、生活感がある。ここに住んでいるのかしら? わたしたち生存者百二十五人は、ぎゅっとひとまとめに集められ、周囲を銃を
「お前らの処刑は決定事項や! せやけど最後に一つ明らかにしておきたい、お前らは何モンや?」
青髪外ハネボブのデカ男、ルドウィッグが怒鳴る。
さっきからこの質問の繰り返しなのよね。
それに口調がなんか嫌。
「だから、言ってるだろう? ここにいるみんなは、飛行機っていう空飛ぶ乗り物に乗っていた。だが、そこにいる黒ずくめ、ハイジャンという男のせいで、飛行機は故障して、墜落、この島に流れ着いたんだ。つまりは事故なんだ、この島に危害を加えようとしてやってきたわけじゃない」
ルークさんも、同じような返答を何度も何度も強いられている。
「んー、信じられヘンなぁ。昔、遠い海から
それも何回も聞きました……もういいです……解放してください。効果があるかはわからないけど、わたしは一応、首から下がる十字架を握っておく。
「ワイらはこの目で見たわけやないけども、お前らは鉄の塊に乗って空から降ってきたんやろ? ワイらサザーニャ族の古くからの言い伝えにこうあるわ、『いずれこの
四つ葉島。サザーニャ族たちは、この四つ葉のクローバーみたいに四分割された島々をそう呼んでいる。四つ葉のクローバーさん、幸運を起こすなら今ですよ!
「ルドウィッグさん、あの……質問いいですかね? ちょっとした興味から、聞きたいことがありまして」
ハイジャン! 何か起死回生の一手を思いついたのかしら?
「なんや、黒いの。言ってみぃ」
あなたも相当黒いけどねー。
「こんな絶海の孤島の住人が……言い方が気に食わないかもしれませんが、もっと言えば、未開の部族が、銃を作れるほどの工業力を持っている。金属加工だけならまだしも、火薬を使った武器を扱うとは……俺としては、非常に違和感を感じます。本当にあなたたちは、この島から出たことがないのですか?」
確かに。こんな大自然って感じの島で、火縄銃とはいえ、銃なんて高度な道具を持ってるのは確かに不思議よね。可能性としては……海からの侵略者から買ったとか、奪ったとかそんなところかしら?
「ない」
「だとしても、火薬なんか、どうやって作ってるんです?」
「
「おおっ、完璧」
アダムが感心してそう言った。ハイジャンもこくこくと頷いていて、納得の様子。細かいことはわたしにはわからないけれど、サザーニャ族はかなり正確な科学を有しているということよね。意外や意外。
「なら、この島での火薬の生産方法は? 詳しく教えてもらえます?」
ハイジャンは、
「ん? 何を疑っとるんか知らんが、そんくらい教えてやろう。島全体に生息する四つ葉のクローバー、つまりはシロツメクサは豆科の植物や。窒素固定により空気中の窒素を取り込んで地中に固定するから、硝酸カリウムのもとになる窒素を絶えず供給しとるわけやな。その窒素から、分解者たるキノコ、お前らも見たかもしれんけど、雲みたく白くふわふわっとした形の
ごめん、思わない。というかこの人、化学者ですか?
「で、硝酸たっぷりの土から抽出水を得て、さらに煮詰めて濃縮。その濃縮液の中に、それとは別で水溶性のカリウムをたっぷり含んだ
いやぁ…………超絶詳しかった。わたしには、ほとんど何を言っているのかさっぱりだったけど、彼はもはや……
「なるほどねぇ、あんたらが火薬を作れることはよくわかったよ……あ、そうだ。俺からも質問がしたい。この洞窟、どうやって掘ったんだ? 隅々まで見渡してみたが、自然のものじゃなくて、無理やりこじ開けたって感じ? 何か爆発したような形跡もあるし……」
こらアダム、『あんたら』とか言わないの。というか、ハイジャンもアダムも、ここまでの話を全部理解しているわけ? レエム捜査官と
「小僧、よくわかったなぁ。ダイナマイトを使ったんや」
「小僧じゃねぇ、MITの院生だっての。まぁいい、ダイナマイトか。ちなみに、
「
「だと思ったよ。この辺りは
「ああ、せや。せやせや、お前の言う通りや。珪藻土はニトログリセリンを安定化するのにはええけども、だいぶ威力が弱まるんよなぁ。ちょうど困ってるんよ、なっかなか崩せヘン岩盤があってやな……」
「ほう、それならいいこと教えてやろうか? 強力なダイナマイトの作り方」
アダムが、悪魔的な笑みを浮かべる。あんた、いけ好かない男だけど……今は応援してる。行け! アダム!
「むっ……教えて、ほしい! ぜひ、ぜひ!」
おっ!? 流れが変わってきた??
「条件がある。俺たちの処刑を中止にしてくれ。それと、最低限の食事と水を分けてほしい」
「くっ……」
これはもしや、解放してもらえそうなのでは?
「ルドウィッグさん、ちなみにですが、その埋もれてしまった『十字の洞窟』とやらは、どこにあるんです? 崩せない岩盤、っていうのと同じ場所かなぁとは思いながら聞いていましたけど」
と、ハイジャンも加勢する。今は共闘よ!
「おいハイジャン、あれじゃないか? 四つ葉島の中心の入り組んだ岩場。ちょうどあそこは十字の海の中心に当たるし、何か大事な儀式をするなら、島の中心でっていうのは、いかにもそれっぽいとは思わないか?」
「確かに……もっともらしいな。ルドウィッグさん、そうなんですか?」
「…………そ、そのとおりや」
「族長さんよぉ、儀式を……再開したいか? 手伝ってやるぞ?」
うわー、今だけかもだけど、アダムが味方でよかったと思う、うん。
「くっ……」
「ルドウィッグさん、他のサザーニャ族のみなさんの顔を見てください、みなさん……ものすごい勢いで首を縦に振ってます」
ハイジャンも容赦ない。こりゃ、決まったわね。
「わーった! 処刑は中止や! 食糧も水も十分量を渡す! せやから頼む、十字の洞窟を取り戻してくれっ!」
大勝利!
「よっしゃ、交渉成立。約束通り、早速高性能のダイナマイトの製法を教えよう。メモの用意はいいか?」
「誰か! メモをとれ!」
あらら。完全に、形勢逆転しちゃったわね。
「安定剤には、珪藻土を使うより、ゼリグナイトを使った方がいいぜ?」
「ゼリグナイト? なんやそれは?」
「簡単に言えば、プラスチック爆弾の元祖みてぇなやつだな。あ、そもそも『プラスチック』って伝わる?」
「知らん! 全部詳しく教えろ……ください」
「それでよし。プラスチック爆弾ってのは、粘土みたいに
みんなの視線が、一斉にハイジャンに集まる。そうだ、この人はテロリストまがいのことをしていたんだった。
「はいはい、俺はもちろん知っていますとも。みなさん、この回答で満足ですか?」
ハイジャン、ハイジャック犯のくせに、なんか可哀想。
「ハイジャンはご機嫌斜めみたいだから、俺がこのまま説明を続けるぜ? 珪藻土は確かにニトログリセリンの安定にはもってこい。だが、肝心の爆発の威力を弱めてしまってニトログリセリンの良さを十分に活かしきれない。何せ不活性物質だからな。相性が良いようで悪いんだ。そこでゼリグナイトを使うと、珪藻土のダイナマイトと違って、ニトログリセリンが染み出さないから、爆発の威力が格段に上がる。ここまでは良いな?」
「
ルドウィッグさんの声がハイジャンに
「そうだアダム、お前の
「俺の専門は、『花火』だよ」
「花火? ほぉ、その選択肢があったか。つまりは、お前は花火師になろうってのか?」
「ああ、そうだ。意外だったか?」
「いや、良いと思うぞ」
「なんだよ、気色悪いな。てわけで、俺は薬学にも詳しいんだぜ?
あれ、ハイジャンとアダム、ひょっとして仲良くなってる? やだ、わたしのハイジャンを取らないで?
「おいおいおーい! 聞けや!! で、ゼリグナイトってのは、どうやって合成するんや?」
かなり必死なルドウィッグさん。
「おっとすまねぇ。安心しろ、ちゃんと教えるから。で、ゼリグナイトの成分は、ニトログリセリン七五パーセント、ニトロセルロース、綿っぽい材質のニトロだな、これを三・七パーセント、
「もちろんや!」
「だからあとはニトロセルロースさえ作れたら、材料は揃うな。これもそう難しくはないぞ。セルロースを硝酸と硫酸の混合液で処理するだけ。セルロースはもちろん、いつもシロアリを
「もちろんや! 硝石も木粉も、任せてくれ、楽勝や」
「じゃあ早速ゼリグナイト生産にとりかか——」
そうはさせないわ!!
「ちょーっと待った! 先に、みんなでご飯にしましょう? 喉も乾いたことだし!」
そう、これ大事よ。男っていうのは、
「えーっと、お嬢さん、ご飯ってのはどういう??」
ルドウィッグさんが困惑している。
「いやぁねぇ族長さん。さっき交換条件として、食糧と水を十分量くださるっておっしゃったじゃあないですか。ほらみんな!
みんなの反応はどうかしら……?
「「「「宴! 宴! 宴! 宴!」」」」
大成功!
▲ ▲
+←ココナッ!
______△ △______
「みんな、しっかり耳を塞いでくれ! 鼓膜が破れて耳が聞こえなくなっても俺は責任を取らないからな! ハイジャン! 導火線に異常はなさそうか?」
「ああ、アダム! 完璧だ!」
ハイジャンは壁から離れて、こっちへ駆け戻ってくると、アダムとグータッチした。なんだか昨日から、息が合っているわよね、あの二人。ずるーい。
「いよいよ十字架と再会や! この時を待ち侘びてたんや、ワイらは! な、せやんな! みんな!」
「「「はい、ルドウィッグ族長!!!」」」
青髪外ハネボブの集団の熱気がものすごい。
「じゃあ、準備はいいな? いくぞ! 四カウントで導火線に着火する。
(・、<)—◉……………………|||| 十
アダム
ジジジジ………………
ジジジ…………
ジジ……
ジ…。
__人人人人人人__
> ドガーン! <
 ̄ ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄ ̄
とてつもない煙。
昨日の温泉の湯気といい勝負。
いやそれ以上かも。
煙が晴れる。
振り向く。
するとそこには、思ったよりも広い空間。地面いっぱいのシロツメクサ畑。その中心に、深い黒色をした、飾り気のない、太く角張った十字架が立っている。その高さは、成人男性の背丈くらいはありそう。
瞬間の沈黙。
……。
「「「うぉおおおお!!!!」」」
ルドウィックさん含め、サザーニャ族のみなさんが夢中になって十字架の方へと駆けていく。
よかった。みんな嬉しそう。
「そうだっ! 今の爆発でいいことを思いついた!」
アダムが叫ぶ。
思いついた? 何かしら。
「なにー? どうしたの?」
声をかけてみる。
「花火を打ち上げよう。救難信号として!」
それは、名案かもしれない。
〈第六話へ続く〉
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