第13話:光を捕まえるクラフトを考えよう

 まずは準備。

 第一の課題の時と違ってここは部室だ。贈り物マテリアルは豊富に用意できる。

 まずクラフトに必要な要素としては3つ。


 対象の光を引きつける光を放てること。

 対象を閉じ込めるか捕獲すること。

 対象の危険性を封じるか減らすこと。

 追加で一つ、つくって面白いこと。


 子供の頃によく遊んだあのシンプルなおもちゃを思い出す。簡単なつくりだが、いつまでも飽きない遊び勝手があり、遊ぶ人の気持ちで無限の楽しみが得られるおもちゃ。

 僕は今でも大好きなおもちゃの一つだった。

 もちろんそのままつくるわけではなく、上手に閉じ込めるための正確な設計が必要だ。

 ただその前に一つ確認をしないといけない。

「七樹先輩、この前の課題で使ってたタブレットで、今回の贈り物マテリアルの情報って見てもいいですか?」

 七樹先輩は少し考え込んで、タブレットを少し操作してから口を開いた。

「可能よ。暴れ回っているせいか、それなりの情報はあるわ。あとは課題条件だけど、個人的には多少はいいと思うけど部長はどう思います?」

「そうだね。答えにつながる情報はアウトだけど、見てもわかりそうな程度の情報くらいならいいかな」

 七樹先輩は、それならいいという感じに一つうなずいた。

「じゃあ、基本的なところから。今回の贈り物マテリアルは光属性で、基本的には中心核の周りにエネルギー体をまとった構造のようね。基本的な性質は光そのもの。行動特性は直進と反射」

 タブレットを操作して次を読む。

「ただ、進む方向性には選択性がありそうね。ただ進むだけじゃ無くて、光に向かって進むみたい。スピードの上昇を見る限り、光を吸収してエネルギーを蓄えているのかも」

 なるほど、ここまでは大体想像の通りだ。

「あと反射について教えてください」

「壁や障害物にぶつかった時には跳ね返るようね。この場合は、ぶつかった先に破壊が生じるわ。ただし……」

「ただし?」

「例外のパターンが一つ。どうやら鏡やガラスなんかにぶつかったときは破壊無しにはねかえっているみたい。その辺りは光そのものの性質ということね」

 やっぱり……。校舎からなかなか出て行かないのはなぜだろうと思ってたんだ。

 ぶつかればすぐ壊れるはずのガラス窓。通過しそうなもんだけど、反射すると言うことならやりやすい。


 よし、クラフト作成を始めよう。

 まずは大きな筒を用意。普通ならこんなに大きくはしないが、小さいとあのスピードを捉えるのが難しくなるので少し妥協。

 丈夫さと取り扱いをかねて、塩ビの丈夫なパイプを選択。

 パイプに入る大きさの、細長いガラスの板を三枚用意。

 クラフト部には、工具だけでは無くて、加工用の機械も設置されているのがありがたい。これ高いんだよなあ。

 切断したガラスの板に、銀色の塗装を施す。なめらかにかつ歪みなく。

 できあがったものは三枚の鏡だ。

 そう、ボクがつくろうとしているのは万華鏡。

 のぞき込んでくるりと回すと、無限パターンの模様がみられるこどものおもちゃ。

 それを使って光の贈り物マテリアルを閉じ込めると言う作戦だ。中に入った光の贈り物マテリアルは鏡に反射して閉じ込められるというわけ。

 三枚の鏡を三角形になるように筒の中に配置して固定する。多少のことではずれないように、強力に接着をする必要がある。

 そして遊び心も込めて、中には様々な色に発光する小さなLED球を多数入れる。これもこのクラフトの肝だ。贈り物マテリアルがいつまでも鏡に映ったLEDに向かって突き進むことになる。

 そしてもう一つ。このままでは、鏡にぶつかってるうちはいいが、底やふたにぶつかった場合に危ないし、いつまでも危険性が減らない。

 そのための贈り物マテリアルを僕は取り出す。

「へえ、それを使うのか。試験のときに置いてた一つだけど、覚えてたんだね」

 そう、ここで使うのが『蓄光水晶』。

 入試の時に置かれていた素材の一つで、光を吸収して蓄積する性質がある。これにぶつかっていくうちに光のエネルギーは吸収され、スピードを失うはず。

 僕は『蓄光水晶』を薄くカットし、ふたと底に取り付ける。ふたは捕まえた後に閉じなくてはならないから、そこは僕の度胸と反応速度が試される。

 最後に底につけた『蓄光水晶』に仕掛けをして底を完全に接着する。

 僕のクラフトは完成した。

 名前をつけるなら『迷宮万華鏡』といったところかな。

「なるほど、万華鏡か。面白いけど、さて、あのスピードをうまく捕まえられるかな?」

 からかい半分にハヤテ先輩が言う。

「そこはクラフトの技術と発想で対応ですよ。先輩たちも見にきてくださいね」

「もちろん。課題の判定をしなくちゃならないからね。七樹くんはどうする?」

「クラフトの続きをやりたいところですが、結果が心配なので私も行きます。それに贈り物マテリアルの場所がわかる方がいいでしょう」

 七樹先輩も立ち上がって、タブレットを手に持った。

「そうですね。お願いします」

 さあ、行くとしよう。まだ、根方先輩が捕まえていませんように。

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