第5話 思いついたことを〜罰ゲーム1 後編〜
「ウニョー!!」その姿を見た瞬間、ハトは背筋が凍っただけでなく、冷凍されてしまった。
「ちょ、ちょっと!! 電子レンジ持ってきてよ〜」パグも困惑するくらいに。
*
さて、前編を軽く振り返ってみようと思う。
十分前。
無理ゲーのミッションに7分の1の確率で挑戦させられて、ブツクサ言いながらも惜しいとこまで行ったがやっぱり失敗……
*
でも。
「奇跡だし、フトに関してはもう動かないと思うから、ベアに【思う存分】楽しませてあげよっかな〜♪」
スタッフの口笛は、運動会といえば、のソングの「地獄」パートのように聞こえた。
「デデデン! デデデン! デデデデデ〜ン!」
そんな中でも一人なぜか楽しんでいるのがこの犬ふうな男、パグだ。
*
デン、デデンデン、デデンデンデン!
ハトの左の赤い文字が「0:03」になった。
「や……」
0:02。デルレルレン! デルレルレン!
「やめ……」
0:01。 デデデデ デデデン
「やめてくれっ!」
と、同時に。
ぶほっ——!
三体のおならベアが出現した。
「……!?」
カプセル場の透明な箱の中に自分はいたのだと、その時初めてハトは気づいた。
*
パグもまた、カプセルの中に入っていた。しかし、気づくのはハトよりはやく、「これどんな素材で作られてるんだろ?」と気にする余裕まであった。
しかし、もう気にする余裕は無くなっていた。
今、パグの目の前には茶色い尻があった。
*
〜ドローンから見た景色。実況……スマホで確認しているテツ。電波特急にいる割には安定。実況『 』」〜
3、2、1——。
「あっ、中継が始まったねぇ」こりどうがスマホを指差す。テツは無言で頷くと、画面中央にある赤いマイクのボタンを押した。『ウゥン』 会場にテツの咳が響き渡った。
鬼ごっこ法により、鬼ごっこの日は外にでちゃいけない。代わりにスマホで中継を観れるのである。棒人間はこんな醜態を見せるわけにはいかないと思っていたが、仕方がないと目を瞑った。
『え〜、さて。気持ちの良い晴天ですねぇ』
うん、そうだね——パグは心の中で頷く。カプセルの中に薄い黄色が広がってゆく。ベアの放屁はまるでアニメのように視覚化できるのである。
『今、濃度1ぐらいでしょうか〜』
観客はリアルタイムでカプセルを見ながらテツの実況を聞いているわけである。
『はい、スタッフさ〜ん! 濃度2にして〜』
鬼ごっこ法により、テツたちがいる場合、特急内がいくらうるさかろうともいいのである。それをいいことに、今テツたちはスマホ画面へ、そしてその向こうへエコー全開で懸命に叫び続ける。
『濃度が2になりました! パグが悶え始めた。カプセルの中からベアがパグたちを取り出しました。は〜い、尻向けて〜』
ベアがテツに服従した。パグはオドオドしながら、その時を待つ。
『3,2,1。全開!8』
本来ベアの八は二週間取れない大きい方が付着するが、それは人(棒人間兄弟の次男)にしかつかなかった。天高くまで五人は勢いで飛ばされたのである。まるで真上を向いた状態の扇風機にティッシュ一枚浮かべてどれだけ耐えられるか試験しているみたいな状態が、10秒ばかり続く。
『はい、OK——っと。ベア。えーっと落として』
五人がふわふわのクッションの上に落ちた。
『で、濃度1』
おならベアだけにいうモードもある。以後これを【】で解説しよう。
「うっ……!?」棒人間の嗅覚がそれに気づく。パグも、「なんか……少しずつ臭くなってきてないか?」彼らはおならベアモードがあることを知らされていない。
【濃度3】
【はい、司令官!】ベアから応答が来た。
「「「「「う……」」」」」
五人の棒人間の叫びが、
「「「「「ウニョー!」」」」」
公園にこだましたのだった。
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