第2話 スタート!
1
「えっと、まず。この広いアラバキ星を二周した方が勝ち。代わり鬼。タッチしたら一人交代可能……。こういうルールでいいよね」
テツチームは確認をしていた。
「どんなときも、確認は必要だ」
それがテツチームの信念だった。
「ちょっと、俺、見てくるわ」電気あんま隊のサブローとユースケがいった。(注・電気あんま隊のアラバキ中学生は三十四人もいるのでこの登場人物の欄には含みませんでした)
「おお、それは助かる!」テツたちは二人を送り出した。
*
「前略 浅川洋次郎殿
急ぎの頼みがあります。至急麻村公園にきてもらえないでしょうか。
[日時]
12時36分まで
では、おねがいまで。草々
追伸 この話を誰にも話さないこと。」
ところどころひらがなで、そう書かれてあった。テツは読み終えた。「八時になった」とこりどうがぼやいた。「いこっか」秋なのに、目立たないぼんやりとした小学生のような、そんな空気が、公園に流れ込んでいた。
浅川といえば、ここから電車で四駅だ。無理に急がなくても絶対に着くだろう。
「それに、万が一となったら歩けばいいしね」テツが太い足をパンパンと叩いた。
「よっ! 5km男! 52cm前屈」
「いやな……見方によっては、そんなふうに思えるのはぼくだけだろうか」
テツは小首を傾げた。
浅川洋次郎というのは、万一スパイが棒人間に見つかった時、怪しまれないようにテツが即興で決めた名前だ。とはいえ「山田太郎」とか「鈴木花子」とかはより怪しまれるだけなので、少しは考えた。
「よっ! さすが頭脳担当 最年少な」
「今度こそは見方によっては悪い気がするなっ」
テツが凄んでみせると、ひえ、と中学生たちは下がった。
2
ボタンを押すおとがした。
「ぼく、ぼうにんげん!」
呑気で甲高い、一番簡潔な一言の自己紹介がきこえた。棒人間たちは歩いていた。ときおり金木犀がかおっている。強く甘いかおりだった。
金木犀がないときは、棒人間たちは自分の手のにおいを嗅いだ。事前に配られたみかんだ。喉を潤して、手に押し付けて接着させていた。
左手にみかんを持ち替えて、香りを嗅いで、右手に戻す。
三十秒に一回は、機械的にこのポーズを取るようになった。
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