道程


「……ウス」


『うすじゃないよ。今日、アイツと会うんでしょ?ほら』


「ネムイ」


『はいはい』


「頭痛い」


『大変だね』


「朝から可愛い妹が起こしてくれるなんて、まるでラノベの一ページ目みたいだな」


『私は可愛く無いし、アラサーの妹口説いてる暇あるんだったら顔洗って現実見て来た方が良いと思う』


「アーイ」






「鏡で美少女が俺に向けて笑ってる!」


『おかしいのが現実だったの忘れてた』


一週間に一回ぐらいの確率でこの寝惚けをやらかすのだが、思い出すと凄い恥ずかしいのでその時は二度とやらないと誓う。なのに数時間後にはすっかり忘れてしまうのだから嫌になる。


「戻って無いな、今日も」


『変わらず、美少女だね』


「……行くか」


『行こう』


まだ重い身体を動かして、ゆっくりと外へ出た。いつになったら寒くなるんだこの世界は。もう九月で秋だろ。全然肌寒くも無いしな。


『九月も半ば過ぎたのに暑いね』


「もうすぐハロウィンだろ?なのに、この暑さはおかしいだろ。例年こんなもんだっけ」


『間違い無く、例年よりは暑くなってるとは思うよ。毎年言ってる気がするけど』


今日はロリーさんの事務所に行くのでまずお土産を買わなきゃいけないので、少し早めに出てトンキに来ている。


「○まい棒の詰め合わせじゃ駄目か?」


『自治会の子供の集まりとかなら良さそうだけど、大人の仕事の集まりだからそれは無いね』


バッサリ切り捨てられた。さらばサラミにコンポタ……。


「ご縁玉チョコは?」


『駄菓子コーナーから離れようね兄貴』


「ラムネが凄いある」


『離れよう、ね?』


視線が刺さったので、仕方なく俺は引いた。まぁ、兄貴ですからね。当然の事です。


『やっぱり、こう言うブランドっぽい物がハズレ無いんじゃ無いかな。高めの奴は手が出しにくくて、お土産で貰うしかないからそれで試せるなら良いやって発想になるし。不味くても「貴方のお土産不味かった!」なんて言えないもん』


「……じゃ、それにするか」


なんか妹の言う通りにしていれば良い気がして来た。怖いな、洗脳でもされてる?なんてな。


まだ時間が余っていたので。店内で色々物色したり、暫く彷徨って時間を潰してから店を出た。


「あっちい」


『そんなに此処から事務所は離れてないみたいだし、もう行こうか』


「楽しそうだな」


『そりゃあ、ファンがいくら手を伸ばしてもいくら出しても分からない美少女ちゃんのプライベートを知ってるんだからね、そりゃあ楽しいよ。それに、これから撮影の裏側も見れるんでしょ!最高だよ』


鼻歌を歌ってスキップをしている様子を見て、良かったなと思いながら俺は後ろを歩いた。流石に事務所内では襲われないだろうから安心だな。

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