現実はタイトル回収しても終わらない


「なんか終わった様な気がする様な。ま、気の所為ですね〜。はろはろ〜!今日も何も変わらない美少女ちゃんです!」


『ども、普通の少女。ノマです。お久しぶり』


いつも通りの挨拶を終えた所で、俺達は揃って後ろを振り返った。


『良かったね』


「何が?」


ニコニコと笑う妹の意味が分からず、そう尋ねる。


『だって行きたかったんでしょ、水族館』


「うーん、別に水族館に行きたかった訳じゃないけどな」


『え?』


「どちらかと言うとそっちが行きたかったんじゃないのか?俺はただ、(皆が見てて)楽しそうな所へ行きたかっただけだし。それで希望聞いたら……『美少女兄貴』ん?」


『そんな事に気も回らないからモテなくて、無職で。個人情報がバレて、美少女になっちゃうんだよ』


「まるで、言ってる意味が分からないんだが!?」


そんなよく分からない説教を浴びた後、俺達は水族館へと足を進めた。そもそも、なぜ水族館にいるのか。それは労いと好感度上げだ。ほら、前黒髪目隠れ巨乳ロリコン占い師お姉さんに襲われた時、運んで貰ったし。それにまた手伝って貰うからな。だから気持ち良く手伝って貰う為前行きたいって言ってた水族館に来たついでに動画も撮ってる。


「いやー魚がいっぱいいますね〜」


『そりゃあ、水族館だからね』


当たり前の事を言うなと思われてそうな顔だが、じゃあなんて言えば良いんだよ。嘘はやっぱり良くないから素直に言った方が良いと思うんだ。


「今日はこの水族館の良い所をいっぱい紹介して、好感度と売り上げに貢献しようかなと」


『兄貴、お口チャック。係員さん苦笑いだよ』


「あ、あれ、おかしいな。ウケてないんですかね〜」


『ご覧の通りだよ。許可は貰えてるんだよね?』


「当たり前でしょ〜持ち前の人の良さでバッチリだ」


『顔の良さじゃない?』


「ま、そうとも言いますね……うわぁ!綺麗な魚達がいっぱいいますね〜!食べちゃいたいぐらい可愛いですね」


やっぱりやりにくいな、友達早く作ろう。今の所、友達候補がロリコンしかいないのはやばいと思う。妹離れしないと、妹にも悪いしな。いつまでも妹におんぶに抱っこでいるわけにはいかないし。


『……あ、え?うんそうだね』


「何でそんな渋い顔してんの?」


折角水族館に来たのに何故か俺の事をガン見している。俺は魚じゃないぞ。


『え?い、いや?そんな事ないけど』


『ねえ兄貴』


「ん?」


『色々行動には気をつけた方が良いよ』


「何で?」


訳が分からないのでそう尋ねると、スマホを見せられた。


『美少女掲示板が盛り上がってるから。襲われちゃっても知らないよ』


百合の逢い引きとか書かれてるじゃん。ふっ、笑えるわ。何が百合の花園だ、てぇてぇだ?これが隣の庭は青く見えるって事か?実際は命懸けの騙し合いサバイバルだったんだけどなぁ。


「本人だけど、妄想は自分の心だけに留めとけって言ったら燃えるかな」


『アウトだよ辞めときな』


魚は自由に水槽の中を泳いでる。良いなぁ……。


『兄貴ってクラゲみたいだよね』


「何で?」


『ネットの海に流れを任して自由に配信したり、動画投稿したりしてるじゃん。それに毒がある事も言うし』


……。


「クラゲ何処?」


必死に近くの水槽を探したけれど、見つからなかった。


『此処にはいないよ』


「じゃあ何で思い付いたんだ?」


『前から考えてたから。それほど好きなんだよ兄貴が』


「……あ、あー前推しだって言ってたもんな。ありがとう」


『オタクには少なからず推しと結婚したいって言う思想が持つ人間がいるんだ。私もそうだって言ったら信じる?』


すぐには答える事が出来なかった。どうすれば良いんだ?コレ。何なの?

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