TSして美少女になったら無職に堕ちたのでエッッッッな配信をする……予定でした。


目を逸らす。ヤバい現実に……今置かれている状況に。


莉紗さんは背が高く、力もあるらしく。軽く俺を持ち上げ、お姫様抱っこをしながらお持ち帰りされてしまった。


『相手の気持ちを分かるには良く知る事が一番だと思うんです』


抱っこの時から変わらず、彼女の重い目線は俺を舐め回す様に眺めている。寝室のベッドにそっと置かれ、そのまま押し倒される形になった。


「その答えがコレだと?それは過ちじゃないか?」


童貞の戯言だし、今の身体で言われても響かないと思うけれど。だからと言ってそんな簡単に体を許す事が正しいのかと言われると首を傾げる。


『言うじゃないですか。なんでもヤッてみなきゃ分からないって』


そう言って目と目が合い優しく抱きしめられる。


……正直流れに任せても悪くないとは思った。でも、後々言われる訳だ。この生活がどれぐらい続くかは分からないけど、ロリコンと関係を持った女と言われる訳だ。そしてその妹と言われる妹が一番可哀想だ。


やっぱり抵抗しよう。


と言っても力じゃ無理だ。どうにかして、言葉でこの巨大な壁を超えなければ。言葉……。何か、どうにかハッピーエンドで終われそうな。両者が傷付かない物は。


あークッソ!良い匂いするしなんか安心して来て眠くなってきた。クソ、どうすれば……何か何か。そもそも何でこんな事になってんだ?ただ俺はコラボ動画か配信の話をしに来たのに、なんでこんなエッチな感じに……これじゃあ本当にエロ配信者じゃ……。


エロ配信?そうだ、それだ!


カーディガンのポッケに入れっぱなしのスマホを手探りで探す。


あった、ヨシ。後は……。


『そろそろ……良いですかね』


そっと俺のカーディガンを脱がせようとした所で、俺はスマホを前に突き出し。


「はろはろ〜!美少女ちゃんです。どもども〜」


真っ黒の画面に映った不安そうな自分を眺めながら、いつも通り手を振る演技も忘れない。


「いや〜凄い臨場感だったでしょ?まるで本当に襲われた様な感じで」


悪戯気に笑う。莉紗さんは何が起こったか分からないと言う顔をしている。それはこの部屋に来て数分後の俺のリアクションだ、取るな!


《エアコメ》

・まじで焦った

・演技リアルすぎだろ二人とも

・コレが予告ってまじ?

・エグすぎる

・エッッッッッすぎ

・全裸待機の甲斐があった

・まさかのタイトル詐欺じゃない回があったとは


「え?クソ可愛いし、面白いからお気に……登録に高評価してくれるんですか?ありがとうございます〜」


《エアコメ》

・エアコメのエアコメすんな

・そんな余裕無いだろ

・助け呼べよバカ

・ばーかばーか

・遠回しに催促するな


「うるせえなぁ、ったく……。ンンッ!ゴホン。電波が悪くて雑音がアレですね、皆さんも電波が悪くて聞こえてませんよね?」


《エアコメ》

・お、おう

・はいはい

・神の妹ちゃんにでも連絡しろ

・キコエタカナー

・キコエナカッタカナー


そうだ今の内に妹に状況を知らせよう。現在地と後はhelpで良いか。


『と、撮ってるんですか?』


あ、ちょ触らないで。あ……。


hだけ送っちゃった。ま、良いや間違っては無いし。


「当たり前でしょう?……少しお耳を拝借〜」


俺は小声で彼女にこの落とし所を話した。それを受け入れるかは彼女次第だ。


要は。


『いやー聞いていたとは言え、本当に撮ってるとは思えなかったので驚きました。まぁ、皆さんが楽しんでいたのなら何よりです』


「俺も思ったよりリアルで内心本当に襲われちゃうのかとちょっとドキドキしてましたよ。まぁ襲われなくて良かったですけどねw」


動画のネタでしたって言う設定だ。その理由は……。


「と言う事で次回もまたコラボする予定なので見てくださいね〜今度は莉紗さんの方にお邪魔する予定なのでそっちも是非!」


『ぜ、是非お待ちしてます』


次回のコラボ予告の為。それで過激な事をして視聴者の目を集めたんだと存在しない視聴者さん達は理解した。と言うテイだ。


そして、俺が頭を下げて配信を終わらせた。はぁ、配信してないのが莉紗さんにバレなくて良かった。と一安心したい所だが、まだ終わらない。


「さぁ、お話ししましょうか莉紗さん」


『……警察ですか?』


「あ、いや警察の前に聞きたいんですけど初犯ですかね?」


『ええ……まぁ』


成程、なら。


「じゃあ今日は一先ず何も無かったって事にしましょう」


『はぁ?』


何でそっちが驚いてんだか。まぁ、だって手は出されてないし何も無かったって言った方が良い。


「次回のコラボに支障が当たるので、忘れましょう。それともしませんか?コラボ」


『……辞めた方が良いと思いますよ。こんな私ですし、また今回みたいに』


「大丈夫ですよ!次は妹にも来て貰うのでなんかあったらすぐ止めてくれる筈ですし」


お金の為に、こっちは頑張らなければいけないのだからバズるチャンスを逃さない手は無い。


『なら、せめて次のコラボ動画の収益をを受け取って下さい!それから、気の迷いとは言え本当にごめんなさい!』


「まぁ、また後で話しましょう。今日の所はコレで終わりにして下さい。疲れちゃったんで」


そう言って玄関の方に行って、妹を呼んだのを思い出した。危ね。妹置いて帰る所だった。


そして、俺は問題の解決を少し後伸ばしして未来の俺に任せる事にした。今日は疲れたから、すぐに家に帰って休みたかった。


少しすると、インターホンの音がした。


妹が来たんだと思い、安心すると疲れが一気に来た。俺にとって長い一日が漸く終わった。瞼を閉じればそのまま眠れそうだった。







『全く、どっちが妹なんだか……お疲れ様。兄貴』




そんな妹の声が聞こえた様な気がした。

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