コラボ相手を探すだけ
《カタカタカタカタカタカタ》
《ッターン!》
四畳半の小さな部屋に、エンターキーを強く叩いた音が響いた。瞬間、僅かな達成感の後。激しい虚無感に襲われたのは言うまでも無かった。
編集の息抜きに凄腕ハッカーごっこをしているとまたメールの着信をお知らせされた。
「……はぁ、相談してみるかな」
《hr》
「もしもし……」
『はい、何の用?』
妹に電話を掛けたらすぐに用を聞かれた。普通、少しの雑談をして話を聞きやすい状態にしてから聞くんじゃないか?そう思ったから聞いてみた。
『なんか前も言った気がするけど、兄貴は自分が用がある時しか電話掛けないじゃん。この間の実家に来る時も帰る時、私に言わず帰っちゃっうし』
「それに対しては言い訳がしたいんだ。聞いてくれ」
『何?』
「だって、絶対さぁ?俺が帰るって知ったら誕生日パーティーみたいな飾り付けで母さんがお出迎えするだろう?で、それに引いてる親父に板挟みされながらいる俺がそこにいるんだろ?そして、それは帰りも変わらない訳だ」
地獄だと分かっていて、喜んで近づくほど俺はイカれてない。
『成程、それが嫌だから……。でも、私に内緒にする意味は無いじゃん』
あからさまなトゲトゲした声に俺はさながらラブコメの主人公の如く、相手を喜ばせる言葉を探した。
「さ、サプライズだよ。現にビックリしただろ?」
結局雑談をしているじゃん。
「で、そろそろ本題に移りたいんだけど良いか?」
『私には大事な本題だったんだけどなぁ……』
「そこを何とか」
『仕方ないなぁ。ス○バの新作ね』
「うえぇ……ゼ、ゼンゼンイイヨー」
まさかの出費にダメージを受けたが、気にしない。レンタル彼女や友達代に比べたら安い物だ。
「で、本題なんだけどな。最近俺のPCにメールが止まらなくてさ」
『あー、メアドも流出してるんだっけ。まだ変えてなかったんだ』
「そうそう。で、詐欺とHな出会い系に混じってコラボのメールが来ててさ」
『コラボね』
そう。以前から知らない誰かからメールが来るのが多かったが、ネットの有名人っぽい人達から声掛けられる様になった。
『男はオフパコ狙いだから断った方が良いよ。勿論全員が全員そうとは言えないけど』
「そんなこと言われたら誰もいなくなるだろ」
そう答えながらメールを開いてはチャンネル名を言って、調べて貰い却下を受ける作業が始まった。
暫くして。
『お。その人なんか良いんじゃない?』
今日初めて、妹の声色を変えた人物は。
「えーっと、"占い師莉紗ちゃんねる"さんか?」
だった。この人の何が良いんだろ。
『この人占いって言って、顔を隠して胸で釣ってるエロ系動画投稿者だからエロ釣り系の兄貴とは相性が良いんじゃない?』
お互いジャンルが被ってるから潰し合う事にならない?あの胸で潰されたら煎餅になるぞ俺。
何はともあれ。妹のオススメと言う事もあり、取り敢えず後日会ってみようかなと思い連絡をして待った。
少しした後、返信が来た。何故か語尾にハートが付いてるのが、気になった。多分そのままだとそっけない感じになるから顔文字代わりに使ってるんだろ。そう思う事にした。
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