『怒ってる人は怒ってないよ〜って言ってる時にはもうブチ切れてる。私みたいにね』


「今日はありがとう!」


『こっちこそ、昔みたいで楽しかった。ありがとう』


気付けば、夜遅くなってて泊まるか聞いてみると断られた。別に今すぐ帰るわけじゃないから。今日は家に帰り、また会えば良いと言う話になった。なので、今日は一旦解散をしてまた後日と言う流れで別れた。


「じゃあ、またね!連絡してよー?ちゃんと」


『出来るだけ頑張る。ついつい面倒臭くて後でしようと思ってスルーしちゃうんだよね』


玄関で、そんな軽口を言いながら姿が見えなくなるまで。手を振った後扉を閉じた。


さて。


『いるんでしょ?兄貴。ほら怒ってないから出てきて〜』


見ないフリした筈の見慣れた私が昔履いてた靴。今のサイズに合う靴が無いからって言ってたから遊びに行った時に渡した奴だ。そう、兄貴の家にある筈なのに、何故か此処にある。つまりそう言う事だろう。今改めて確認したし、間違い無い。


いや、本当ならいる訳が無い。何故なら、ほら前に私が両親にバレてるよって言った時「実家戻れねえじゃん!」って叫んでたし。どのツラ下げて帰ってんの?って話だよね。まぁ、これだけ呼びかけても反応無いんだからいないよね。


『……えっと。あ、あった』


《prrrr……》


怠くなったから手っ取り早く電話をする事にした。最初からこうすれば良かった。今の世の中、自分の足よりリモートワークの時代なのだから。


「ん?どうした?」


『あ、兄貴。今何処にいる?』


「今か?あー実は実『実家でしょ?』はい……そうで御座います」


『実家の何処?全然姿見えないんだけど』


リビング、トイレ。私の部屋。話してる間にも移動をしても姿は見えない。


「あー、あそこだよ。ほら、子供の時に良く2人で遊んだだろ?屋根裏部屋」


『……何でそこにいるかって言うのも聞きたいんだけど』


何でそんな所にいるんだろ。そもそも、それが分からない。私から逃げる様な態度も不思議だ。


「だってほら、お前俺の事嫌いだろ?だから近くにいない方が良いかなって思って」


『は?』


「いつも俺の事睨んでるし、配信の方色々手伝って貰って申し訳無いのに更に俺の事でまた大変にさせるのは辛いからさ」


『だから屋根裏部屋に隠れたんだ。良く分かった』


どうやら兄貴は、私が思っていた以上に大馬鹿野郎だったらしい。大体私の目つきの悪さは昔から変わってない。思い出補正だか何だか知らないけど、勝手に私をツラの良い女扱いしないで欲しい。自分が美少女になったからって!


『あのね……兄貴。そもそも嫌いな人のアンチをわざわざ間引いたり、配信トラブルに対処したり動画に出たりしないでしょ?』


「いや、それがイヤイヤなんだろうなって」


『イヤイヤじゃないよ。むしろ好きだよ』


「は?」


『勿論推しとしてね』


そう言う事にしておこう今は。


「心臓に悪いからラブコメごっこは辞めなさい」


『てへっ♡』


「それも辞めなさい」


渾身のぶりっ子ををしたらドン引かれた。

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