Third Day memory loss


 気づいたら朝になってた。


 …は?


 いや…え?


 いやいやいやおかしい。昨日のことを思い出そうとしたが朝からの記憶がごっそりない。俺何してたんだろう。


 昨日はたしか、朝起きて用意された朝食を食って美人に会って…思い出せない。

 疲れすぎたかな。いやでもこんなごっそり記憶消えることあるか?


 釈然としないが、いくら考えても一向に思い出せない。なので諦めて着替えてからフロントへ向かった。


 現人と土左衛門は既にフロントにいた。

 今日もまた同じ仕事内容とだけ俺たちに伝えて、現人はどっかへ行った。


「土左衛門さん、昨日一日何してたか覚えてます?」


 そう聞きながら、ちゃんと土左衛門って呼んでる自分が馬鹿みたいだと思った。

 なんで土左衛門なんだよ…。


 土左衛門はきょとんとした顔で俺を見た。多分こいつは昨日のことを覚えてるらしい。


「普通に仕事してたよ。フロント業務。え、被川くんもいたじゃん。あー…あとはあれかな、夜にちょっとした宴会があったんだ。なんか流れで僕達も参加することになっちゃって…えーと、あれ。女装おじさんと男装おばさんたちの合コン」


 合コンなのかよ。てか記憶ないのちょっと悔しいな。見たかったわその光景。


 え、てかまさか俺も女装させられたりしてないよな?


 心配になったので土左衛門に聞いてみた。


「ああ、大丈夫大丈夫。してないよ」


 ……多分こいつはしたんだな。記憶なくてよかった。



 それからは一日目と同様に普通にフロント業務をした。

 時間はいつの間にか流れていって、気づいたら時計の針は十二時を指していた。


「そろそろ昼休憩ですね」


 現人が来て、また俺達をスタッフルームらしきところに案内してくれた。この部屋をなんて呼ぶのか未だにわからない。扉にも何も書いてないし。


 部屋のでっかい机に、昨日の朝と同じように食事が並んでいた。

 それぞれ氏名が書かれた紙が添えられている。


 あれ?遊川さんの分ないな。


 このホテルに似つかわしくない美女、遊川さん用の食事が見当たらなかった。

 もう食べたのかな。気になったので現人に聞いてみると、そんな人はうちの従業員にはいないと言われた。


 …


 ……


 ………



 俺がおかしいのか。やっぱ昨日はなんかおかしかったんだ。




 結局午後も普通に仕事していつの間にか終業時間になっていた。



 スタッフルームで夕食を無言で食いながらふと思い出す。


 あと、四日か。


 俺は正気を保ったまま七日目を迎えられるのだろうか。

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