壊れそうな心
美桜梨ちゃんは、オレにちゃんと部活に行ってほしいと言ってきた。
公園に呼び出されて、いったいなんの話があるんだろうって思っていたら、まさかの部活にちゃんと行ってって…。
美桜梨ちゃんは、相変わらず優しいんだよね。
そして、オレがいつも美桜梨ちゃんを待っていたから、何か話があるのはわかる。だから今、話したいこと伝えて。
と、わざわざオレのことを思って美桜梨ちゃんは、公園にきてくれたらしい。
学校でも話は、できる。
でも美桜梨ちゃんは、学校で極力人と話さないつもりなのだと教えてくれた。
何度も転校して、さまざまな人をみてきて色々辛い思いをしてきたのだそう。
だから、はじめから誰とも関わらなければトラブルも起きないだろうと。
「美桜梨ちゃんは、それで楽しいの?」
オレが美桜梨ちゃんの顔を覗き込むと、美桜梨ちゃんはうつむきながら、
「…うん」
と、少し寂しそうに頷いた。
嘘だ‼︎それでいいわけがないんだ!
「美桜梨ちゃん‼︎オレに任せてよ‼︎」
と、オレはとある作戦をもくろんだ。
「任せるって…あ、ところで浩介くんの話って…」
「あー、オレね…実は昔みたいにまた美桜梨ちゃんと仲良くなりたいって思って、それで色々話したいなって待ってただけなんだ」
と笑ってみせた。
そしたら美桜梨ちゃんは、
「そっか。」
と一言いうと、空を見上げて何かを考えているみたいだった。
…
「美桜梨ちゃん?」
なんだか、美桜梨ちゃんの目がウルウルしてるようにみえるのは…オレだけなのでしょうか?
…
しばらくすると美桜梨ちゃんは、
「ほんとはさ…戻りたい、幼稚園の頃に戻りたい」
と、言ったかと思うとポロリと一粒の涙を流した。
美桜梨ちゃん…
そうだよな…
幼稚園の頃は、あんなに毎日笑顔で楽しそうだったのに…。
なのに今は…友達すらもつくることができないんだもんな…。
辛いだろうな…。
転校生って目立つんだよな…てか、みんなどんな人なのか観察してるっていうか…とにかく注目の的っていうことは、まず間違いない。
美桜梨ちゃんは、とくに美人だから妬まれたりしたのだろう。
「美桜梨ちゃんは、これから学校で普通にしてて」
オレの言葉に美桜梨ちゃんは、
「えっ、でも…そしたらまたわたし…」
と美桜梨ちゃんは、かなしい表情でオレを見つめた。
か、かわいすぎる…。
今すぐにでも抱きしめたい‼︎
大丈夫、オレが守ってやるよって言いたい‼︎
でもさ…そんなことしたらキモいってなるよねー…なんて思っていたんだが、美桜梨ちゃんが肩をふるわせてほんとに心細そうだったのでオレはほんとに美桜梨ちゃんを優しく包み込んで、
「大丈夫だから。今度はちゃんとオレがついてるし、絶対守りきってあげるから。」
と美桜梨ちゃんを勇気づけた。
そしたら美桜梨ちゃんは、
「うん。うん、ありがとう、」
と、オレの腕の中で力なく頷いた。
しばらくオレは美桜梨ちゃんを抱きしめていた。
美桜梨ちゃん、あったかいな。
あんなに強そうにしていたのは、逆だったのだとオレは気づいた。
強そうにみえて、実はとてもモロくて、美桜梨ちゃんの心は、いつ割れてもおかしくなかったのだ。
全然気づかなかった…。
オレは転校してからも、てっきり美桜梨ちゃんは、ずっと笑顔でいつもみんなに囲まれているんだろうと、勝手にそう思い込んでいた。
だからこんなに弱々しい美桜梨ちゃんを、なおさらオレが守ってやる‼︎と決心するのでありました。
続く。
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