年齢=レベルの異世界に転生した40歳のおっさんの話
二時間十秒
年齢=レベルの異世界に転生した40歳のおっさんの話
1
40歳、会社員、独身。
会社ではリストラ候補という訳ではないが、出世コースにも乗れていない。おそらく現状維持でずるずる定年まで残ってるおっさんというポジション。
自分から積極的に動くほど結婚願望があるわけでもない、という状態を維持していたら独身のままであり、おそらくこのままずるずるそれは続きそう。
「先が見えてるよなあ」
人生ずるずる続くだけなのはどうかと思ったことは一応ある。
何か新しいことやったらどうだ? とかな。
でも、ネットやテレビで『○○が流行!』みたいな自分の知らない世界の話を見てもそういうところにおっさんの姿は、ない。
まあ、そりゃそうだよな。
おっさんの俺は世間のメインストリームからはもう外れた存在なんだ、静かにひっそりと過ごしていればいい、ってことだ。
若者が楽しんでるところの空気を乱して邪魔したくないし、場違いだぞっていう視線で見られるのも針のむしろだ。
だから新しいことに挑戦とかそういうのは若者がやって、おっさんは片隅でひっそりしているのがいいんだ。それがお互い一番だってわかってる。
それでも別に問題なく生きていけるしな。
なんてことを会社から帰宅途中の、街灯が明るくてよく先が見える道を歩きながら考えていた。
何もせず歩いてる時っていらんこと考えてしまう。いかんなあ。
ビリ。
ん?
ビリビリビリ。
なんだこの音?
紙が裂かれて破れたみたいな音が何もないところからしてるが。
「なっ、にぃ!?」
目の前の空間がいきなり裂けた。
裂け目は星空みたいに黒くてキラキラしている。
そして、それは猛烈な勢いで俺を。
「吸いっ……込まれる……!」
2
「ここは……?」
気がつくと俺は、緑がいっぱいの草原にいた。
青い空、白い雲、緑の草原。
さらに緑の草原には、黄色いぷよぷよしたものが飛び跳ねている。
どう見てもスライム。
……ってことは異世界か!?
昨今の異世界ブームで俺も異世界に関しては多少は知っている。
そもそもスライムなんて生き物が地球にいないことを知っている。
「まじかよ……俺全然先見通せてなかったわ」
明日何が起きるか完全に予測できるとか思ってたけどすいませんでした、人生一寸先は闇でした。
しかし、どうすっかな。
来る時の次元の裂け目みたいなものはもう見当たらないし……とりあえずは、生きるために衣食住と水をなんとかしなきゃか。戻るにせよそれ以外のことをするにせよ、生きてなきゃ話が始まらない。
って、なんか黄スライムが俺に襲いかかってきてるんですけど!?
「うおっ、やめろ!」
ぷよぷよ跳ねながら突進してきた黄スライムを手で払いのける。
ぱぁんっ!
手が黄スライムに当たると、黄スライムは弾けとんでしまった……。
「あ……。そんな俺は別に殺そうとまでしたわけじゃ……やっぱりスライムって最弱のザコモンスターなんだな、儚い命すぎる。ガガンボ並に儚い……ん?」
弾け飛んだ黄スライムのゼリー状の体が凝縮し硬質化し、何十個もの小さな金色の球に変化した。
「お、ドロップアイテム的なものか? 金の小玉? ポケモン?」
色だけじゃなく本物の金だったらいいねぇ。
さすがにそんなうますぎる話はないだろうけど、まあそれでも二束三文にはなるだろうから持っていこう。
ちょうど……。
俺は顔をあげ、前方遠くに視線を向けた。
「町らしき影が林の奥に見えてる」
異世界最初の町を俺は発見した。
もちろん、向かってみるしかないだろう。
「これが異世界の町っ……!」
その町には中世ヨーロッパ風の建物が建ち並んでいた。
町外れには風車がまわっていて、その付近には小麦畑が穂を風に揺らしていて、物語でしか見たことないような風景で年甲斐もなくワクワクしてくる。
町中を歩いている人の格好も、現代とは全く違う。
中には武器を持ってる人もいるし、本当に異世界なんだなあと実感が湧いてくるね。
おっといかん、あんまりきょろきょろしたり凝視したりしてると、怪しいおっさんだと思われてしまう。
……あれ、なんか周りも俺をみてないか?
「はっ! そうか、そういうことか……っ」
なぜ見られてるのかわかった。
俺が会社帰りの現代日本人的服装をしてるからだ。
そうだよな、ファンタジーっぽい服装の中にワイシャツ着てる男がいたらそりゃ浮く。
この町にいる間ずっとじろじろ見られるのもなんだな。
それに見られるだけならともかく、怪しい奴と思われて職質とか受けたら嫌だし、服屋とかないかな~。
と探しているとすぐ衣料品店を見つけたので、店に入ってとにかく間に合わせで適当に服を選ぶ。
「ええと、遠くから旅して金は持っていないんですが、これはつかえませんか?」
さっきのスライム倒して手に入った金の小玉を資金代わりにつかえないかと思ったがそれよりも速く店員が言った。
「あなたのお召し物をいただけませんか!? そのような服は一度も見たことがないので、是非じっくり見てみたいのです!」
あー、なるほど。たしかに服屋からしたら未知の服なんて喉から手が出るほど欲しいよな。どうせすぐ着替えるつもりだったし、ちょうどいい。
俺は服同士を物々交換することにした。
相当珍しがってたから、二着分と交換できるか?と思ってたずねたら二つ返事でOKしてくれた。これで洗濯してる間も着るものに困らないで済む。やったぜ。
異世界の衣を手に入れた俺は衣料品店をあとにした。
途端に気付いた。
喉が渇いたことと、お腹が減ったことを。
仕事終わりに異世界に来て、そのまま何も飲み食いしてない。
気付いたらもう限界だ。
何か食べられる所は……。
これもすぐ見つかった。
『ブドウ好きのリス亭』という店だ。看板に果物とコップの絵が描いてあるので、軽食くらいなら少なくとも食べられそう。
とにかく早く何かしら飲み食いしたいので、すかさず店の中に入った。
「いらっしゃいま……せ?」
「一人なんですけど、席ありますか?」
「は、はいぃぃ!!! こちらへ!」
?
なんか店員が妙に慌ててた気がするけど、それより早くご飯だ。
俺はメニューを見る。
しかし異世界の料理ってどれがいいとかわからんし、早く何かしら飲み食いしたいしメニューの一番上の『おすすめ』欄にあったものを適当に注文した。
しばらく待っていると、テーブルに運ばれてきたのはレモンティーと、パンケーキだった。パンケーキは二段重ねで、蜂蜜がかかっていてブルーベリーやストロベリーが添えられている。
「………………」
そ、そうきたか~っ!!!
飲食店は飲食店だけど、ここは喫茶店タイプだったか。
しかもふわふわパンケーキを出すような喫茶店。いやカフェって言うんだっけ?!
40歳男性にとってこういう店は入りづらくて全然来たことなかったよな。やっぱり周りから浮いちゃうんじゃないかと危惧するし。
それに空気感が壊れたら悪いしな。俺みたいなおっさんがそういうオシャレな空間にいたら他の客に申し訳ないし……ん?
そんなことを考えていたのだけど、ふと気付いてしまった。
店の中にいる人の視線が俺に向いてることに。
「うっ……」
なぜだ?
服はちゃんと現地のものにしたから変ではないはず。
それ以外に何か俺が注目される理由…………あっ!
そうか、店の中にいるのは……俺以外みんな若者だ。
10代や20代前半の男女ばかりで、さらに料理を運ぶ店員も料理を作っているのもそれくらいの若者だ。
しかもパンケーキを食べたりそういう店で働いてるタイプの若者。おっさんの対義語みたいな存在なんだ!
「見て……! あれってもしかして……!」
「マジかよ……」
視線に気づくと、さらに若者客が話している声にも気づいてしまう。
俺のことを何か言っている……?
「おっさん(笑)?」
「おっさん(笑)(笑)だ、間違いない」
「ここにおっさん(笑)(笑)(笑)がいるなんて初めて見たよ」
めちゃくちゃおっさんおっさん言われてるじゃないか……!
しかも俺には感じる、おっさんのあとに(笑)がついてることを。
若者しかいないこういう店だと、やっぱりめちゃくちゃ浮いてしまっている。
ごめんなさい! おっさんがパンケーキ食べてごめんなさい!
もうそう言うしかないのだ……。
気付いてしまったらもうのんびり味わうどころじゃない、長居するのはいたたまれないとパンケーキを急いで食べきり、会計をする。
あの黄スライムからドロップした金の粒で支払いできたので、数粒渡して這々の体で店をでた。
「ふぅ、おっさんにはキツい空間だった」外に出てなんとか人心地を取り戻した。「まさか異世界にもああいう場所があるとはな、油断してたぜ。……おっさんは若者の邪魔をせず去りゆくのみだ」
とりあえず町の別のどこかに行こう、ここから離れなければ。
俺はおっさんに相応しいもっと人気のない静かなところへと向かって、歩いて行った。
────────────────────────
見沼大輔が店舗を出た後の『ブドウ好きのリス亭』では、堰を切ったようにざわめきが起こっていた。
「さっきの人ってやっぱりそうだよね……」
「おっさん……」
「間違いない、おっさんだ」
「おっさんなんて初めて見た」
20前後の若者の客がしきりに話題にあげているのは、先ほど店から出て行ったおっさんのこと。
その中の一人が、無精髭の店主兼シェフの元へと席を立った。
「ねえ店主さん、なんか話してたよね。なんて? おっさんはなんて言ってたの?」
「別にたいしたことは言ってないぞ。ただ金がないからブツで支払っていいか聞かれただけだ」
「ブツ?」
「……これだ」
店主は見沼から代金として渡された金の小玉を客に見せる。
客はその球を指先で転がしていたが、急に高い声を上げた。
「ねえ店主さん! これって!」
驚いた声をあげた客。
その様子に他の客もカウンターに集まってくる。
それらの人に店長は告げた。
「ああ……俺は店やる前にはハンターをしてたからわかる。こいつはゴールデンスライムジェムだ」
ざわっ……。
「ゴールデンスライムっ!?」
「あの硬さで有名な!?」
一瞬の静寂の後、客がどっと沸いた。
「ああ。とんでもない弾力性をもっていて、最上級の物理耐性をもってる最強にして最レアのスライム族。そいつのボディが変化した黄金だ、間違いない」
「でもあれって確か、絶対耐性を持ってるモンスターじゃ……?」
「そう。レベル25以下の攻撃を完全無効化する特殊能力を持っている。だから出会えても普通じゃまず倒せない。少なくともここにいる者じゃ誰一人としてな」
その場にいたものは、10代や高くても20代前半の若者。
彼らの中にゴールデンスライムの防御を貫けるものはいない。なぜなら……。
「ってことはやっぱりさっきの人って!」
「ああ。間違いなく、本物のおっさんだ。見た目通りに……レベル40ってところか」
「レベル40!?」
「私達なんてほとんどはレベル10代後半、よくてレベル20ちょっとなのよ!?」
「俺達だけじゃないって、このイーディの町にはレベル30いってる人すら誰もいないんだぞ。この町で一番強い人でもアラサーだ。それなのにあのおっさんは……」
なぜなら、この世界では年齢=レベルだからだ。
ごくり、と誰かが、いや、その場の全員がつばを飲む音が聞こえた。
「何者なんだ、あのおっさん」
「わからない……けど、とんでもないおっさんなのは間違いないぞ。店主には、遠くから旅をしてきたって言ってたんだろう? ここの通貨も持ってないほどの旅を」
「修行の旅をし続けて気付けば40になっていた、ってことかしら」
「それ、ありそう」
「はぁー! 話しかければよかった! あんな人見たの初めてだったからさ、気圧されて声かけられなかったけど、この町で……いや、この世界でレベル40までレベル上げておっさんになれる人なんてまず会えないじゃん!」
そうだそうだ、と他の客も声をあげる。
おっさんに色々教えてもらおう。
おっさんの力を見せてもらいたい。
カフェの中はその日一日中、盛り上がりが尽きることはなかった。
────────────────────────
異世界エイジェス。
この世界では年齢=レベルである。。
この世界では存在としての強度がレベルで表され、レベルが上がることで存在は歳をとる。何年生きていようとレベルが上がらない限りは歳はとらない。
子供のころは生きてるだけで自然に手に入る経験でレベルが上がり歳をとるが、十代中頃からはそうはいかなくなり、成長が遅くなって多くの者は二十歳にもなれない。
20代前半に到達できるのは、一部の鍛えあげたものだけだ。
ゆえに他より大人びたものはこの世界では尊敬される。それだけ自らの努力と才能で鍛えた証だからだ。
そこに突然、40歳のおっさんがあらわれた。
つまりはそういうことなのだった。
3
カフェから逃げるように退店した俺は、町の中を彷徨っていた。
とりあえず町にくれば生きていけると思って、たしかに服も飲食もなんとかなったが、しかしそうなるとこの先どうするかの目的がなくなってしまった。
「とりあえず異世界がどんなもんか見るかなあ」
なんて思いながら異世界の町を歩き回る。
ファンタジーによくありそうな雰囲気の町で特別なものは特にない感じだが、自分の身で体験すると十分面白い。
特に目的もないのでずっと歩き続けていたのだが、何か妙な感覚がしてきた。
「なんか……」
なんか、周りの人から注目されている気がする。
別に今はオシャレな店の中にはいないし、服装も変なわけでもないのに。
なんだろうこの違和感?
なんとも奇妙な感覚だが、しかしそれはともかくとして今日の宿を見つけなければ。もう日が暮れかけている。野宿は40歳の体にはキツい。いや、20歳でも野宿はキツいか普通に。
さーて宿はどこかな~。
宿ならさすがにおっさんが泊まっても許されるだろう。
「あの、少しよろしいでしょうか」
そう、おっさんが泊まってもよろしいはずだ。
ん?
今の声はおっさんじゃないぞ。
若い女性の声。
声の方を見ると、
「よろしければ、お話しを聞いて頂きたいのです」
青い瞳の若い女性に、声をかけられていた。
こんな若い20歳くらいの女性が40歳のおっさんにお話があるって、いったいどんな話があるんだ?
想像がつかないな、しかし無碍にもできないし。
「いいですよ、どうかしましたか」
「あの……ルリの工房の一員になってくれませんか!」
「……へ?」
それは予想外すぎた。
完全に思わぬことで、返事に遅れていると、慌てた様子で女性は説明を追加する。
「あの、ええと、ほんの少しでいいんです! あなたみたいな方に図々しいってわかってるんですけど、本当に私達困ってて、どうしても力を貸して欲しくて……工房に来て話を聞いてくれたら……」
工房の一員。
なんか作ったり力仕事とかそんなんをして欲しいってことだろうか?
「でもなんで俺に?」
「あなたが、とても立派な方だからです!」
「え。いや全然そんなことないですよ、それに初対面ですし俺のこと知らないですよね」
「知らなくてもわかります! あなたの姿を見たら! 顔にも体にもこれまでの人生で歩んだすごい経験がにじみ出てますから!」
目をキラキラさせながらルリという女性は熱っぽく俺に語った。
……えー、マジかー。
いやあそこまで言われるとちょっと俺も揺らいじゃうなあ。まあ、たしかに平凡とは言え40年間頑張ってきたわけだし、20歳の若い子から見たら、年季? 貫禄? そういうもの感じちゃうってのはあるかもな~。うん、うん。
しゃーない、一肌脱ぐか!
「わかりました、工房まで案内してください」俺はキリッとした中年の渋みを出してそういった。
「本当ですか!? やったっ、嬉しいですっ! 工房はこっちです!」
ルリは俺の手を引いて走り出した。
よーし、じゃあおじさんルリちゃんのために頑張っちゃうぞ!
ルリちゃんのコバルトブルーの瞳は宝石のようで、群青のストレートヘアが走るたびに揺れて映えている。
こんな子がひたむきになって俺を頼ってくれるんだから、見捨てられるわけがない!
しばらく手を引かれると工房に案内されるがままに到着した。
ルリちゃんを助けるために。
………………ハッ!?
いや、待てよ俺。
何かおかしくないか?
冷静になれ!
冷静に考えろ、40歳のおっさんが20歳の女の子からこんなに好意的にされることがあるだろうか? いや、ない。
それなのにあんなに持ち上げて好意的で無邪気に喜ぶなんておかしい……絶対におかしい。
これはもしや……うわさの……頂き女子!?
そうだ。そうに違いない。
ちょっとお話しでも……ってところも怪しいし。
なんか高額な商品とか売りつけられそうだし。
やっぱりルリは……えっ? 待ってこれって……。
ルリ。
頂き女子。
『頂き女子ルリちゃん』
名前も例の頂くあの人に似てるじゃないか!
確定だこれはもう!
「ふぅ、危ないところだった……」
考えてみたらおっさんが若い女性に話しかけられるわけないんだよな。
さらさらの群青髪で透き通ったコバルトブルーの目で健気な雰囲気のかわいい顔してる子に話しかけられたからって浮かれるとは、まだまだおっさんの自覚が足りてなかった。
だがギリギリ気付けた。
俺は頂かれない。
しかし……。
どうやって乗り切るか。
ここで急に立ち去るのはなんか気まずいし。
とりあえず工房の中で話は聞くだけ聞いて、そこでうまく受け流して帰ろう。
そう心に決めて、俺は外見は普通の店舗という感じの建物に入った。
「おお、すごい数の金物」
「ええ。ここがリリ鍛冶工房です」
そこに並んでいたのは剣、槍、斧、といった武器からノコギリ、包丁といった日用品まで色々な金物があった。
「へえー、すごいなー武器と道具の店なんだ、壮観ですね」
「はい。姉妹でやっているんです」
「姉妹?」
カーン!
尋ねたと同時に家の裏から音が聞こえて来た。
気にする様子を見せると、ルリが俺をそこに案内する。
裏のドアを開けるとそこは。
カーン!
鍛冶場になっていた。
ルリとよく似た女性が、ハンマーで赤く焼けた金属を叩いている。
「ラリお姉ちゃん、噂のおじさんを連れてきたよ!」
ピタリ。
とハンマーが止まった。
そしてオーバーオールのような作業着を着ているルリ似の女性は俺の方を見る。
「……本当におじさん。冗談じゃなかったのね」
「そうだよお姉ちゃん、協力してくれるって! これでうちの鍛冶屋も復活するよ! お姉ちゃんの武器もちゃんと評価されるようになる」
「うん……ええと、おじさん、お願い。私は説明とかあんまり得意じゃないから、妹に細かいことは聞いて。それに必要な武器はちゃんと作るわ」
その子はお辞儀をすると、再びハンマーを振るい始めた。
気持ちのいい音が鍛冶工房に響く。
寡黙な職人って感じの子だ。
この子もまたおじさんを珍しがってるよ……。
だがしかし、鍛冶屋ってのはどうも嘘ではないようだ。
嘘言って金を引きだそうとしているわけではないのか?
警戒しつつ、話を聞き出していこう。
「へー、姉妹で頑張ってて立派ですね。それで、俺にやって欲しいことっていうのは。やっぱり鍛冶に関係あることですか?」
「立派だなんて、ありがとうございます。! やって欲しいことというのはですね……よっと、これ、持って下さい」
そう言ったルリから渡されたものは。
*見沼大輔は銀の剣を装備した!*
「え」
「やっぱり! 想像通りお似合いです!」
これはどういうことだ?
とりあえず剣を試しに振ってみよう。
お、案外軽いな。
すっと気持ちよく振り抜ける。
「剣の振り方もきれいです、これなら絶対大人気ですよ」
「ええと、どういうこと?」
「あ、すいません、興奮しちゃって。ええとですね、おじさんにはこの工房の宣伝をして欲しいんです。うちの剣を、おじさんが使ってたら、皆もうちの剣を使いたくなると思うんですよね」
あー、なるほど。
たしかに年季の入ったおっさんが剣を使ってれば、ベテランも愛用の剣ってことでハクがつきそうだ。長持ちもしそうな雰囲気出るしな。
この剣を持ち歩けばそれでいいなら、全然ありだな。
事業の資金出して欲しい……とかじゃないならどう転んでも俺が損することはないよな? やってもいいかもしれん。
「実際に人前で武器使うつもりはないけど、それでもいい?」(そもそも剣で戦ったことなんてないし、どうやって扱うかわからないし)
と一応俺は確認を取った。
するとルリは二つ返事でこたえ。
「はい! それはもう! おじさんが武器を使うわけないとはわかっています」(おじさんほどのレベルならば、うちの武器なんて必要ないレベルでしょうから)
……そこまで言われるとちょっと傷つくな。
おっさんだって頑張ればまだちょっとくらいやれると思うんだが?
まあ、剣を腰にぶら下げて歩くだけで協力になるというならやろうじゃないか。
全然大変なこともないし。
こうして俺は武器屋の看板おじさんになったのだった。
4
「じゃあ早速やりますか」
というわけで俺は看板おじさんとしての仕事を早速やることにした。
まあ仕事といっても歩くだけなんだが。
ついでに今晩泊まる宿も案内してもらうことに。
安くてきれいな部屋の宿をルリの知り合いが経営してるらしい。
持つべきものは地元の知り合いですな。
「へーー、とても遠くから旅をしてきたんですか」
道すがらルリが俺のことを知りたがったので、うまくごまかしつつ話した。遠くからってのは嘘じゃないしな。
「そうです。遥か彼方から」
「なるほど~、それだけ遠い距離を旅したら、道中で魔物に襲われたり、蛮族に狙われたりもしそうですもんね。そういう荒波に揉まれておじさんになっていったんですね」
「ええ……世間の荒波に揉まれてるうちに気付いたらおじさんになってましたよ」
「気付いたら……なんてすごい。意識せずおじさんになるなんて。日常が私達には想像もできないようなハードさだったんですね」
いやなんというかどういう感想なのそれ。
意識しておじさんになりたがる変態なんておらんやろ。
と思っていたら、町を歩いていた一人の青年が驚いた顔で声をかけてきた。
「噂のおっさんってルリちゃんの知り合いなの?!」
「あ、ビートくん。知り合いというか、お願いを聞いて貰えたんだ。おじさん、この人は自警団のビートくん。私達姉妹の幼馴染で、今は自警団で街を守る仕事をしてるんです」
「ビートです!」
とさらさらの金髪の青年は元気よく挨拶をした。
若いのに町を守るなんて偉いねえ。
「見沼です。よろしくおねがいします」
「そんな、俺の方こそよろしくです! おっさんがいるって噂は聞いてたんだけど、まさかこんなところで不意に会うなんて思って無かったら驚きだよ!」
元気がいい若者だねえ。
と思って見ていたら、ビートは俺に質問をしてきた。
「あの、どうやったら強くなれるか教えてくれませんか! 自警団やってると町に来るモンスターも倒さなきゃいけないけど、そのためにもっと強くなりたいんです俺!」
……え。
いやおっさんに強くなる方法聞いてどうするんだ。こちとらちょっと走るだけで息が切れるおっさんだぞ。
強くなり方なんか聞かれても知るはずがない。
普通に体力ある若者の方が強いに決まってる。
だが、ビートはまっすぐな瞳で俺を見ている。
ルリも期待するような視線を俺に向けている。
く、これは知らないとは言えない雰囲気だ。
それに……そう、俺は武器屋の看板おっさんになったのである。
武器を持ってのプロモーション引き受けた以上、弱いですと言うわけにはいかない。なんとかそれらしいことを言わなければ。武器の宣伝になるように。
………………。
「ゴホン。とにかくたくさん練習をすること。たくさん場数を踏むこと。結局はそれが大事。……そのためには丈夫さが重要だ。自分も、武器も。リリ鍛冶工房にあるような丈夫な武器ならぴったりです。武器も人間も一番大事なのは頑丈さってことですね」
「なるほどぉ! 頑丈な体と道具かぁ!」
ビートがぶんぶんと音がしそうなくらい頭を上下させて俺の言葉に納得している。脳しんとうにならないか心配だ。
「なるほど」
「おっさんが言うならそうなんだろうな」
「たしかに、おっさんになるためには頑丈さは大事そうだ!」
「おっさんの言葉は染みるなあ」
なんか別の人の声も聞こえると思ったら,いつの間にか人だかりがでていた。何重もの人の輪が腕組みしながら俺の8割適当に言った発言を真面目に聞き入っていた。
人だかりはまだまだ静まらない。
「その武器は?」
「うちの、リリ鍛冶工房のやつですよ!」
「おっさんのお眼鏡にかなってるってことか、その武器屋の武器は」
おっ?
なんかいい感じに人だかりが工房の武器に注目している。
さらに買いに行くという言葉も聞こえてくる。
これは……看板おっさん成功したかもしれん。
しばし盛り上がったのち、俺とルリは再び歩き出した。
「ありがとうございます! 早速宣伝大成功です!」
「いや、俺はただ歩いて喋っただけですよ」
「そんなことないですよ、もう皆感心してましたし。剣も買いに行くって言ってくれましたし。これで復活できそうです!」
ルリは嬉しそうに満面の笑顔で俺を宿へと導いている。
「それはよかった。……でも復活って、何かあったんですか?」
何気なく尋ねると、ルリの眉が困った。
「昔はもっと流行ってたんですけど……ペトリ武具店がこのイーディの町に出来てから、寂れてしまって。ペトリ武具店の武器はすごくリーズナブルなんですよね。それに町中にたくさんビラを貼ったり宣伝も力入れてて。うち意外にもいくつか鍛冶屋はあったんですが、客を奪われてどんどん潰れて今はうちだけになってしまいました」
なるほどねえ。
巨大資本の参入で地元の店が潰れるって異世界でも同じなんだな。
「そこで! 私も参考に宣伝を頑張って見ようと思ったんです。品質では決して負けてない自信がありますから、なにせラリお姉ちゃんが作った武器ですし。だから、知ってもらえさえすれば必ず買って貰えるはずです」
「それで俺に宣伝を」
「ええ。頼んでよかったです、ありがとうございます!」
にっこり笑って礼を言うルリ。
いい笑顔だあ、おっさんが働いて若人に笑ってもらえるなら安いもんですよ。
なにはともあれ、ちゃんと仕事ができてよかった。
これなら報酬も気兼ねなくもらえる。
「ここがさっきお話しした宿屋です。宿代は宣伝のお礼に工房が出しますので、好きなだけ泊まって下さいね」
「ああ、ありがとう。また明日も宣伝頑張るよ」
そしてきれいな宿屋へとルリに見送られ、今日の分の報酬ももらい、俺は異世界で初めての夜を快適に過ごすことができたのだった。
5
その翌日も、俺は鍛冶屋の仕事を遂行するためにも町を歩いていた。
相変わらず視線を感じるが、それはつまり宣伝が成功しているということだ。
ちゃんと剣にはどこで作られたかの印がされてるから見ればわかるはずだし。
金の小玉も今日は換金して(質屋っぽい店があったので、そこに持ち込んだら結構な金額になった)異世界の現金を手に入れたので、飲み食いも生活も当分困らない。
異世界グルメを楽しんだりしつつ、夕方頃に宣伝の効果があったかを確かめにリリ鍛冶店へと俺は向かった。
「ルリさん、宣伝の効果ありました?」
「おじさん! ちょうどルリも宿に行こうと思ってたんです。おじさんを見て買いに来たっていうお客さんが今日だけで3人もいましたよ!」
おおー、早速効果が。
これは今後が楽しみだな。
「ありがとうございます」
「いや、全然たいしたことないですよ。それよりも、ルリさんの方がすごいと思いました」
「ルリがですか? なんで?」
「今日、町を歩いてて、昨日話していたペトリ武具店も見てみたんです。大きくて品揃えが多くて、しかも複数店舗展開してる。あれを見たら次々他の店が閉店したっていうのは納得してしまいました。それでも諦めないで店を続けたなんてルリさんはすごいな、と。俺なら無理だと思って諦めちゃうところですよ」
「ルリも……頑張っても意味ないし無理だと思ったこともありました」
ルリは昔を思い出すような、しみじみとした表情を見せる。
「でも諦めちゃだめだと思ってお店を続けてたら……おじさんが来てくれたんです。頑張っても何も変わらないんじゃないかと思ってたけど、変わるチャンスはやって来てくれました。だから、このまま続けても先が見えてるなんて思って、諦めてしまわなくてよかったと思ってます」
ルリは晴れやかな顔で言った。
……眩しいな、俺には。
「そうですか、ラリさんもルリさんも諦めないで頑張ったんですね……。……あれ? そういえばハンマーの音が聞こえないようですが」
「あ、ラリは今日は素材を採取にいってるんです。火力を上げるためのヒバナ草とか、そういう鍛冶に必要なものを北の山に。とはいえでも遅いですね、夜はモンスターが活性化するから危険だからそろそろ戻ってこないと――」
「大変だルリちゃん!」
その時、勢いよくドアが開いた。
入って来たのは自警団の青年ビートだった。
だが、その腕には血のにじんだ裂傷が――。
「ビートくん!? どうしたの腕の怪我!」
「ラリさんが自警団とモンスターの戦いに巻き込まれた!」
イーディの町では物騒なことに、最近モンスターが町の付近に多く出るようになったらしい。
そのため自警団はずっとモンスター狩りをしているらしいのだが、今日はいつになく強力なモンスターがいた。
日常的に投入している戦力ではどうにもならず撤退しようとしたが、その先に運悪く素材を採取しているラリがいて、さらにモンスターが仲間を呼び自警団とラリはともどもモンスターに追い詰められてしまった。
ビートはモンスターに攻撃されながら町に応援を呼ぶために包囲をなんとか脱し、町にいる自警団にまず状況を伝え、その後にルリに伝えに来た。
そういう話だった。
とにかく俺達はビートの案内で連れられて町の北にある山に向かった。
……でも俺がいってどうするんだ?
おっさんが役に立つと思えないが。
山道を走りながらそんなことを考えてしまうが、しかし帰ることもできない。
ああもうとにかく行くだけ行ってそこで考えよう!
けが人を運ぶくらいなら手伝えるかもしれないしな!
そしてついに、モンスターと自警団が争っている場所に到着した。
「皆さん! しっかりしてください!」
交戦場所につくと即、ビートが声を上げた。
そこには武装した若者達が倒れ、黒い二股に分かれた尻尾を持ったオオトカゲが若者達を取り囲みながら舌をチロチロと出している光景があった。
ビートが俺に説明する。
「あれはベルクリザードという非常に手強いモンスターです。こんなところで見たこと今までなかったのに、どうして急に多数あらわれたのか……まったくの予想外で、対応できませんでした。応援の準備にも時間かかってるみたいです」
強力な敵ゆえに、自警団の追加戦力を組織するのもまだ間に合ってないようだ。すぐにはこれないだろう。
また、倒れた自警団の中にまじって、肩を痛そうに押さえているラリの姿があった。
ベルクリザードは今にもラリに襲いかかりそうだ。
見るからにヤバイ状況。
なんとかしないとまずいが……武器を持った20歳くらいの若者が何人もいて、皆やられてるのに、40歳のおっさんに何が出来るんだ?
何も出来ずにやられることは、試すまでもなく見え透いてる。
「ラリお姉ちゃん!」
ルリが叫んで駆け出した。
持ってきた剣を振りかぶり、ベルクリザードに向かって行くが、リザードが二本にわかれた尻尾を振るうと剣ごと吹き飛ばされ、木の幹に激突して苦痛の悲鳴を上げた。
おいおい、やばいって!
皆満身創痍でまともに戦えるのは俺しかいないじゃないかよ!
戦える?
いや、俺がまともに戦えるわけない。
助けなきゃとは思うけど、でも俺がいったところでやられる人数が一人増えるだけだ。
助けられるわけがない。
「おじ……さん」
木の幹にぐったりともたれかかったルリと目があった。
よしてくれ、そんな目で見られても、おっさんがこんな恐竜みたいなモンスターなんかに勝てるわけない。
わかるだろ? おっさんが勝てるわけないって。
先が見えちゃうんだよ、この年になったら。
…………。
「本当にそうか?」
ルリは言っていた。先が見えてると決めつけずに諦めず頑張ってたら、おじさんが来てくれて店の未来に希望が見えた、って。
本当は先がどうなるかなんて、誰にもわからないんじゃないか。
「いや、『わからないんじゃないか?』じゃない。わかるはずがないんだ。俺は神様でもなんでもないんだから。わかった気になって諦める理由を探してるだけだ」
そうさ、おっさんだって100回に1回くらいはまぐれ当たりがあるかもしれない。
だったら、やってやる。
俺は宣伝のためにただ持っていればいいと言われた剣を抜いた。
ベルクリザード達は牙を剥き、俺に狙いを定めてくる。
そしていつ以来かわからない無我夢中になって、モンスターに立ち向かった。
気がつくとそこには、真っ二つになったベルクリザードの群れと、折れた牙があった。
俺、やれたのか?
「……え!? 俺がやったのか!?」
嘘だろおい。
自分でやってやるって言ったけど、本当に恐竜みたいなモンスターを倒せるなんて信じられない。
絶対そんな力のない普通のおっさんのはずなんだが、何が起きたんだ。
落ち着いて一つ一つ思い返してみると、たしかに俺はベルクリザードの尻尾を受け止め、牙をかわし、剣で切りつけ群れを次々に倒していった記憶がある。
どうしてこんな芸当をただのおっさんの俺が…………あ。
そうか!
異世界に転移した者がチートなスキルなんかを身に着けるってよく聞く話じゃないか。
スキルなのかなんなのかわからないけど、俺も何かしらすごいパワーがいつの間にかついていたってことなのかも。
いやそうに違いない、じゃなきゃこんなモンスター倒せるわけないし。
はぁ~まったくもうそれならそうと早く言ってくれよ。
めちゃくちゃビビったり覚悟決めたりしたのにさあ。おっさんの心臓にはキツいっての。
ま、未来ある若人の身は守れたからいいか。
「って、そんなこと考えるのは後の話か! 大丈夫ですか! ルリさん」
駆け寄ってルリを抱き起こす。
するとルリは薄い笑顔を口に浮かべた。
「だいじょう、ぶ、です……おじさんが助けてくれたから。ラリも……無事みたい。ふふっ……おじさんのすごさ、特等席で見られちゃいまし……た……」
ルリは笑いながらゆっくりと目を閉じた。
「ルリさん? ルリさん!? ルリさーん!!!」
6
「おじさんのおかげで商売繁盛ですね! 毎日忙しくて嬉しい悲鳴です」
一週間後、リリ鍛冶工房でラリとルリから俺はプロモーションの成果を聞いていた。
ルリは嬉しそうに成果があることを教えてくれる。
はい、ルリは普通にちょっと気を失っただけでした。
こういうのってだいたいそういうオチなんだよな、知ってた。
あの日モンスターを倒した後、傷ついた人を町に運び、治療をした。
ラリもルリも幸い軽傷で、もう何事もなかったかのようにお店をやっている。
ルリは「『おっさんモデルと同じ剣をくれ!』って駆け込んでくるお客さんまでいたんですよ。ふふっ」と言っている。どんなネーミングのモデルだよ。
そしてラリも、
「本当に助かった。それにおじさんの力が見られて嬉しい」
「いやーなんか張り切っちゃって恥ずかしいけど」
「全然そんなことない。おじさんは格好良かった」
ラリからも褒められるなんて光栄だ。
しかし、あの事件で余計注目を浴びるようになってしまった。宣伝にはいいがそれ以外の時は素性を隠したい気もする。ずっと注目されるの気疲れするし。
だから、ラリに頼んだことがある。
「頼まれたもの、できた」
とラリは俺に仮面を渡してきた。
木で出来た仮面(顔に接するところは布でカバーしてあって柔らかな肌触り)である。
金属以外のものを作るのもお手の物とはさすがだ。
「おお、いい感じ。ありがとうラリ」
「おじさん似合ってますよ、ふふ」
ルリとラリに見送られて、俺は鍛冶工房をあとにした。
工房を出た後、俺は町を歩いていた。
今日は特に用事はないが仮面の効力を確かめようと思って。
……うん、ばれてないな。
異世界に来てからやたらチラチラ見られていたのが今日はいくら歩いてもそれがない。
仮面の効果てきめんだ。
「ふー、視線がないってだけでだいぶリラックスできるなあ。オッサンを見た人達がざわざわするってこともないし。やはり注目されない方がいいね」
仮面のメリットを実感しながら俺はイージェの町を歩いていたのだが。
「おい、あれって!」
「あの人は!」
急にざわざわが始まった。
仮面がずれたか!?とたしかめるがそんなことはない。
それによく見ると、ざわめきの震源地は俺じゃなく誰か別の人だ。
何があるんだと俺も野次馬よろしくそこにいってみると、一人の30歳くらいの男の周りに人だかりができていた。
30歳?
珍しい、この町で30歳なんて見たことないぞ。
俺から見れば全然若くて羨ましいけど、20前後の人ばかりの町ではかなりの年長者だ。
赤い長髪のその男は、周りの人の歓声に応えるように手をあげている。ちょっとしたスターみたいな雰囲気すらある。
周りの人の反応も。
「さすがアラサーは風格あるな!」
「アラサーになるとはさすがね」
「アラサーだぁ……」
どんだけアラサー言うねん。
もはやちょっとバカにしてるだろ。
と思ったが、表情を見るとバカにしてる様子はないし、むしろうっとりしてるまである。
「なにやら最近モンスターが多発しているというが」
例のアラサーが口を開いた。
「この私がいればなんの心配もない。この私、サーティワンがいるし、私が用心棒をしているペトリ武具店の武器もあるからな」
この人はサーティワンという名前らしい。
サーティワン懐かしいなあ。ガキのころは親と出かけた時たまに食べさせて貰えるとはしゃいだな。
なんか最近店見たらバスキンロビンスって名前もくっついてて買収でもされたのかなあと時の流れを感じたね。
実際は元からそのアイス会社だったらしいけど。
「サーティワン様は28歳になったらしい。アラサーから本当のサーにまた一歩近づいたとか」
「さすがイーディ最強の戦士だ」
などと周りの人が言っていて、そのサーティワンはうんうん、と気分良さそうに頭を動かしている。
だが。
「最近噂のおっさんとどっちが強いんだろう?」
「そりゃおっさんだろ、サーティワン様は30歳弱だけどおっさんは40歳くらいらしいし」
と群衆の誰かの声が聞こえた瞬間空気が変わった。
「おい……誰だ今おっさんの話をしたのは!」
サーティワンの怒号が響き空気が一瞬で死ぬ。
「おっさんだかなんだか知らんがただのまやかしだ! 私がこの町で一番年上だ! つまり一番上なのだ!」
めっちゃ年功序列な発言だな。
「見ろこの顔を。お前らの中に俺よりふけてる奴がいるか!? いないだろう!?」
それは自慢することなのか?
若い方がいいと思うけど。
やはり年功序列だ。
「……ん? お前は何を仮面なんかつけてるんだ? ああ? 仮面を外して俺より若い顔を見せろ!」
サーティワンは俺の方へずかずかとよってきた。
げ。
と思う間もなく仮面を外してきて――。
「な……」
驚いた表情を浮かべ――。
「おっさん……だと?」
そう言った。
そんなテンションでいう台詞じゃないだろそれ!
「おっさんだ」「あのおっさんはアラサーより上じゃないか?」「アラフォーに見える」「どっちが強いんだ?」「どう見てもアラフォーの方がアラサーよりおっさんだろ」
などと周囲の人がガヤガヤとする。
サーティワンはイラついた様子になり。
「黙れ! こんなものはまやかしだ! 俺よりおっさんがいるわけない。メイクか何かで誤魔化しているだけ。そうやって騙そうって魂胆だ」
「いやおっさんにメイクしても意味ないと思うが……普通逆でしょ」
と俺が反論しても聞く耳持ってくれない。
「はっきりさせてやる。おっさんは偽物で、アラサーの私が最強だということに」
いや頭痛くなってくるぞ。
なんでアラサーとアラフォーで最強決定戦なんてやらなきゃいけないんだ?
「はあ、いや別にそんなことで争わなくてもいいと思うんだけど」
「問答無用! 最近おまえの話が耳に入ってきて耳障りだったんだ。幻想を砕いてやる!」
サーティワンは剣を抜いて襲いかかってきた。
俺は反射的に攻撃を受け流そうとする。
次の瞬間、サーティワンの体は宙を舞っていた。
俺自身反射的な行動だったのではっきりとはわかっていないが、回避しながら相手の体を投げ飛ばしたらしい。
街角の建物に激突し置かれていた箱などを吹き飛ばすサーティワン。
痛みとそれ以上の驚愕が彼の顔に浮かんでいた。
「うおおやっぱりおっさんの方がつええ!」
「まあアラフォーとアラサーだし、勝負にならないわよね」
などと群衆が叫んでいる。
「バカな……こいつ……本物のおっさんなのか? あの、幻のおっさんだというのか?」
などとサーティワンが呟いている。
幻のおっさんってなんだよ。
ドラクエのサブタイトルかよ。
それに28歳なのにサーティワンってどういことだよ。詐欺ネームかよ。
いきなり襲われたことに悪態をつきつつ、俺は仮面を付け直す。
もうさっさと立ち去ろうと思っていたのだが、集まっている人達が話している声が聞こえてきた。
「しかしペトリ武具店の用心棒が負けるとはなあ。大丈夫かねあの店」
「あんまり困んないんじゃないか? 今ってモンスターが増えてるからペトリ武具店の売れ行きはうなぎ登りらしいし。ただあの用心棒はこれを機会にクビにされるかもな」
「運がいいよな~あの店。店が増えたと思ったらちょうどモンスターも増えてガンガン売上増えるし。うちの野菜もなんかうまいこと売上が増えるイベントおこらんかねえ」
「野菜じゃ難しいな、ハハッ。モンスターをペットにして餌で野菜あげるか?」
どうやらモンスターはもう自警団じゃなくともわかるくらい増えてるらしい。それにともなってペトリ武具店は拡大してきたと。
なかなか物騒だな異世界も。
でも今はなんとかやっていけるかなあ、なんて自信もついてきている。なんでかは知らないけど、異世界に来てチートな強さが身についているみたいだし。
何があっても最悪野生動物を食べたりして生きていけるってことだからな。
そんなことを考えながら、騒ぎの現場から俺は立ち去ろうとした。
しかしアラサーも珍しがられてるとはねえ。おっさんなんてレアじゃないと思うんだがなあ……ん?
あれ?
いや、いたか?
この異世界に来てから俺と同じようなおじさん、一人も見てなくない?
町中ですれ違った人達を思い返してみる。
「あっ」
間違いない、ここ若い人しかいないんだ。
日本じゃ俺ぐらいの年の人間が山のようにいるというか若者より多かったけど、この町では若者しかいない。10代20代の若者ばかりだ、あとは子供。
そう、アラサーですら一人しか見てないほど若者しかいないんだ。
高齢者もいなけりゃ中年もいない。
全員が若者。
そんなことあるのか?
もしかして何年か前に戦争があって大人達は全員しんでしまったとか。
いやそもそも異世界人は寿命が短い種族で二十数年とか?
どっちだとしても、結構過酷な運命を背負ってるなあ異世界人。
俺はルリとラリの姉妹をあらためて思い出した。
そんな過酷な状況なのに店を頑張ってやってるなんて泣かせるじゃないか。
いや、他の自警団の子たちもだ。皆俺の半分くらいの年齢で頑張っている。
これは40年生きてる年長者として、困ってる異世界人がいたら助けてあげなきゃいけないな。
いくらちょっと強いおっさんになれたとはいえどこまで出来るかはわからないけど、若い子達が頑張ってるのにおっさんが逃げるわけにもいかんでしょう。
なぜかモンスターも増えてるらしいし、次おっさんの力が必要なら、また力を貸そう。
そう決意して、俺はその場を立ち去るのだった。
──────────────────
イーディの町から南方に数十キロのところにある平地。
いくつもテントが並んでいる中でも一際大きなテントの中で、会話をしている者がいた。
「モンスターの融通まことにありがとうございます。おかげさまで、我が武具店は大幅に利益をあげることができました」
「ふん、我が軍の飼い慣らしたモンスターを無駄にすることなど許されん。利益をあげたのは当然のことだ」
会話をしているのは30歳ほどの宝石を多数身に着けた男と、20歳ほどの商売人。
蛮族国家バリアントの王ゴラスと、商売人ペトリが密談の最中だった。
「ほほ、お厳しい。イーディの町は南の防御が一番薄いです、ゴラス王様。そこから攻めるのがよろしいかと……」
「ふむ、検討しよう。しっかり戦力は削いだな?」
「はい。いただいたモンスターを町の周囲に放ったおかげで、自警団には怪我人が続出し、警備も北の山に集中しています」
「そのおかげでお前の店も潤っていると」
「おかげさまで、本当にありがたい話で。イーディを征服した後はうちの店が独占的に経営できて、バリアント国内にも支点をもたせてくれるとの話有り難い限りでございます」
揉み手で媚びへつらった笑みを見せるペトリだが、ゴラスはあざ笑うように鼻を鳴らした。
「くく……そんな都合の良い話があると思ったか?」
「え?」
ペトリの揉み手が止まった。
「貴様のような裏切り者はどうせ我が国に入っても裏切るだろう? わかりきったこと。そもそも征服した土地の利益をお前に吸わせて我らになんのうまみがある」
「そんな! それでは約束が違う!」
「貴様のような卑怯な手を使って商売するものがそんな言葉を吐くとはな。くっくっく。まあこれまでの礼として事前に逃げることの邪魔はせん。さっさと消えうせろ」
「ふざけるなっ……この蛮族どもめえええええ!!! ぐああぁっ!」
ゴラス王につかみかかろうとしたペトリを、近衛兵が槍で一突きにした。
鮮血を吸ったテントの中で、ゴラス王は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「ふん、生意気な奴め。おとなしく逃げてればよかったものを。……だが仕事はしっかりしていたようだ。明朝、攻め入るぞ!」
「はっ! ……だがゴラス王様、一つ斥候から気になる情報が」
近衛兵が王に進言する。
「なんだ?」
「イーディの町におっさんがいた、との情報が」
「おっさん。だと?」
王の眉尻がピクリと持ち上がった。
「はっ! イーディには40歳ほどのおっさんがいるとのことです。それが事実ならば迂闊に攻め込むのは危険ではないかと!」
「まさかお前はそんな妄言を信じているのか? 40歳のおっさんなど、そんなふざけた存在がいるはずなかろう」
王は不機嫌そうに眉根を寄せ、傍らの剣の塚を握りしめた。
「見間違いか流言飛語の類いだ、馬鹿馬鹿しい。俺ですら30歳だというのに、その上をいくものがいるはずがないし、仮にいてもなんの野心ももたずにこれまで潜んでいるわけがなかろう」
「それはその通りですが、こちらの戦力は王の30歳が最年長です。5歳も違えば次元が違うと言われているほどですから、万が一おっさんがいたら……むぐ」
喋る近衛兵の口をゴラス王が手で塞いだ。
「怖じ気づいたのか? 俺の近衛兵ともあろうものが。そんな者は……」
「いえ! 滅相もありません! 命を捨てて戦う準備はできています!」
口を潰すように頬を握られたまま、必死に敬礼する近衛兵。
ゴラス王は満足げに頷いた。
「それでいい。おっさんなどただの世迷い言だ。この世の歴史上一人しか確認されていないようなものが、今この時、この場所に、ちょうどいる。などとそんな都合のいい話あるはずなかろう。くだらぬ噂にすぎぬ。……北にモンスターをさらに放ち、そちらに自警団が集中したところで南から攻めて落とすぞ!」
ゴラス王は、兵隊達に最後の準備に取りかからせる。
───────────────────────
7
事態が風雲急を告げたのは、サーティワンとビートがなぜか二人で俺の宿泊してる宿に来た時だった。
「え、あなたはアラサーの?」
俺が泊まっている宿に、なんとびっくりアラサーの最強の戦士ことサーティワンがやってきたのだ。
「おっさんに話があってやってきた」
「重要な話だそうです」
一緒にいたのはこの前の怪我で腕に包帯を巻いているビート。
謎すぎる組み合わせだけど、いったい何がどうなってるんだ???
「……は? ペトリ武具店って、あのリリ鍛冶工房のライバルの場所ですよね? それが、モンスターを町の近くに放してた?」
サーティワンが語ったのは衝撃の事実だった。
「私がおっさんに負けたという話を耳にしたペトリは、私を用心棒の仕事からクビにすると告げ、さらに罵詈雑言まで投げかけてきた。これまでボディガードも行えば危険な地域への行商でも守ってやったというのに! おっさんがいようとこれまでの貢献はなにも変わらないだろうが!」
うわー酷いオーナーだなペトリ。
なんかちょっと俺も責任感じちゃうけど……にしても酷い話だ。ブラックはどこにでもあるんだな、異世界にすら。
「しかし私はそこで素直に泣き寝入りなどしない。復讐のために奴に痛い腹がないか探ったのだ。奴が何かこそこそやってたのは気付いていた。商売人の世界は色々あるのだろうと見逃していたが、それを全部白日の下にさらしてやろうと思ったのだ。そしたら……私が想像していたよりずっととんでもないネタがでてきたんだ」
「それが、モンスターを放っていたという話ですか」
サーティワンは頷き、だがそれだけではないと付け加える。
ビートがその『付け加え』を話した。
「アラサーさんからのタレコミを受けて、自警団も一体となってさらに身辺調査をしたんです。すると、そのモンスターの出所が明らかになりました」
「たしかに、どこから調達したのかって疑問は残ってましたね」
「そして浮かび上がったのが、蛮族国家バリアントの存在です」
「蛮族国家バリアント……?」
「近隣の地域に武力でもって侵略・略奪を行う危険な国です。イーディのような独立都市がいくつもすでに狙われ滅ぼされています。彼らは兵力を持っているだけでなく、モンスターを使役する方法を知っているのが特徴なのですが、そこと取引をしたようなのです」
うわ~物騒な話だ。
そんな危険な国と取引してモンスターを増やすとか、どういうつもりなんだ?
……あ、気づいちゃったかも。
モンスターが増えて危険になれば武器の需要が高まる、そこで売り上げを増やそうってことか。まさに死の商人といったとこだな。
「しかし、そんな国家と取引なんてして大丈夫なんでしょうか?」
「もちろん、大丈夫じゃあない」と答えたのは再びサーティワン。「ペトリの計画をしってた側近を締め上げて吐かせたが、ペトリはバリアントの協力を得た見返りに、町の情報を流して、さらにモンスターを使って戦力を削いで、バリアントがここを侵略しやすくしたんだ」
「はい!? この町が侵略!?」
おいおい冗談だろ、戦争に巻き込まれるっていうのか。
しかし二人の顔はまったく冗談ではないと物語っている。
「ペトリの協力をえたバリアントは軍を動かしている」
「なんだって? じゃあここが戦場になると?」
「ああ」
「……いつ頃そいつらはやってくる感……じ?」
「私と自警団の調査結果によると……明日だ」
「あすぅ!?」
おいおいいくらなんでも近すぎだろ、もう目と鼻の先まで来てるじゃないか。
「明日の未明には町になだれ込んでくる。つまり今日の夜までには迎え撃たなきゃいけないってことだ」
「ガチのマジの戦争だなんて……」
さすがにそこまでは想定してなかったと思考停止中の俺にビートが頭を下げた。
「おじさんにも力を貸して欲しいんです! とんでもない強敵で、自警団はじめ戦えるものは皆行きますけど、それでも多分足りないから」
「ってことだ。もちろん私もいくが、バリアントの指揮官は私と同レベルの年長者だとも聞く。私一人で全てを抑えるのは無理だ」
……まじ?
いやたしかに異世界で強くなったってのはわかってるけど、でも一国の軍勢相手はさすがにキツくないか?
ぶっちゃけ来る日時がわかってるなら、それにあわせて逃げる方が確実に安全じゃないかって思うのが正直なところ。
だが……。
ルリとラリはようやく店が復活の兆しが出てきた。
それなのに逃げればいい、なんて気軽に考えられないだろう。
他の人だって同じだ。俺と違って簡単に逃げられないはず、俺と違って。
いや、俺だって。
そう簡単に諦めない方がいいって、知ったばかりじゃないか。
20歳やそこらの若い奴らが必死で生きてるのに、二倍生きてる俺が二倍必死にならなくてどうすんだ!
俺はリリ工房の剣を腰に携えた。
「案内して下さい、戦場に」
8
イーディの町南に広がる荒野。
月明かりの下で、武器がぶつかり合う音と怒号が轟いていた。
一方は蛮族国家バリアントの兵士達と使役するモンスター達。
一方はイーディを守る自警団と志願兵達。
大勢の若者達が入り乱れて戦っていた。
剣で切り、盾で防ぎ、弓で射る。
倒れる者もいれば、それを踏みつける者もいる。
そんな激しい戦闘は一進一退のようだったが、徐々に片方に戦況は傾いていた。
戦場の奥、近衛兵に囲まれ本陣にどっかと座っているバリアントの王は、部下からの報告を受け満足げに頷いた。
「問題なく我が軍が勝利しそうだな。モンスターの対処に追われたのもしっかり効いている。このまますり潰せ、この町は我らがもらう!」
バリアントの王が受けた報告の通り、イーディの防衛網は瓦解しつつあった。自警団をはじめとした兵士達は持ちこたえられなくなり、徐々に押し込まれていき――。
バリアントの王と近衛兵達は勝利を確信した。
だが、その時。
「うわあああああ!」
「なんだこいつは!」
「まずい! 崩れるぞ!」
戦場から悲鳴があがってきた。
それも、イーディの民ではなく、バリアントの兵達の悲鳴が。
バリアント軍の本陣が騒然とする。
いったい何が起きている?
王が戦場の様子を自ら見に出ると、そこにあったのは砂塵の巻き上がるがごとくに蹴散らされるバリアントの兵士達の姿。戦列が、戦陣が、みるみるうちに瓦解していく光景。
「どうした! これはいったい何事だ!?」
焦りを滲ませ怒鳴る王。
まさに同時に、前線の様子を目に焼き付けた兵士が幾人も叫びながら逃げ帰ってきた。
「「「「「「「おっさんだ!!!! おっさんが来たぞおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」
そしてバリアントの王は見た。
一人のおっさんが、戦場を駆ける姿を。
そして知った。
この世におっさんは実在するのだ、と――。
10
こんにちは、ルリです。
蛮族国家バリアントは追い返されました。
はい!
おじさんが攻めてきたバリアントの兵士もモンスターも蹴散らしてくれたんです。
裏で繋がっていたペトリ武具店の悪事も全て明るみになり、罰を受けて営業停止中です。
これからどうなるかはまだ未定ですけど、町が良くなる方に動いて欲しいです。
イーディ広場では人が大勢集まって、町が無事だったお祝いの真っ最中!
皆食べたり歌ったり飲んだり踊ったりして大騒ぎです。
私もさっきまで楽しみすぎて少し疲れたので、今は休憩中。
……もちろん、おじさんは逃がしてもらえてませんけどね♪
今も輪の中で色々な人からもみくちゃにされて話しかけられ続けてます。
おじさんは困った顔をしてるけど、しかたないですよね。
今回の出来事のヒーローですし、ふふっ。
私達の工房を救ってくれた次は、私達の町まで救ってくれるなんて、おじさんには本当にびっくりです。
これから先、まだまだ町にも私にもいろんなことが起きるだろうけど、私にはわかります。絶対大丈夫だって。
だってここにはおじさんがいるのだから!
完
年齢=レベルの異世界に転生した40歳のおっさんの話 二時間十秒 @hiyoribiyori
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