第19話 我慢できなくて♡

 寝ているボクを部屋の外から覗いてきた陽葵さん。彼女の行動が気になるので、寝たフリを続ける事にした。


…小さい足音が部屋の中から聞こえるようになってきた。本当に何をする気だ?


あれ? 足音が2種類ある? もう1人いるの?


「お姉ちゃん、何でコソコソしてるの?」


その正体は陽菜さんか。どうやら空気を読んで合わせてるようだ。


「決まってるじゃん。朝日君のを見るためだよ♡」


「えっ!?」


「バカ、声が大きい」


だからボクを起こさないようにしてるのか。これからどうしよう…?


「そんな事したら、朝日さん怒るんじゃない?」


「平気だって。朝立ちは寝てる時にもなるらしいし」


「もし途中で起きたらどうするの?」


「その時は普通に『起こしに来た』って言うだけだよ」


ネタバレされなければ、気付かないかも…。


「お姉ちゃん、やっぱり止めたほうが良いよ…」


「何で? バレる心配はないし、チャンスは今しかないって」


今しかない? どういう事だ?


「朝日君がこれからもウチに泊まるかはわからないんだよ? これが最初で最後のかもしれないじゃん」


という事は、この家に泊まる度にこうなるの?


「アンタは気にならない訳? 朝日君の朝立ち」


「そりゃ、少しは…」


「でしょ? なら一緒に見ようよ。ね?」


異性の体が気になるのは、ボクも同様だからお互い様だ。責める資格はない。


……徐々に、体にかけている布団がめくられていく。ボクは寝たフリを続けながら今後の事を考える。


「何か悪い事してるみたいでドキドキするね、陽菜」


「本当に悪い事してるんだけど…」


真面目な陽菜さんであろうと、好奇心には逆らえないか。


そして、布団はボクの太もも付近でめくり終える。


「う~ん、あんまり大きくなってないような…」


起きて時間が経ってるし、2人が何をするかわからない緊張感があるから大きくなる余裕はない。


「もしかして、朝日さんは朝立ちしないタイプなのかな?」


「そんなタイプいるの!?」


陽葵さん、驚き過ぎでしょ…。


「小さい頃にお父さんを起こしに行った時、大きくなってなかったと思うから…」


「アタシより早い時期から興味津々だったんだね。男の人のに♡」


「うるさい!」


陽菜さんの意外? な過去を知ったな。


「寝顔は普通だから、嫌な夢を見てる感じじゃなさそう。だったら…」


陽葵さんは何をするつもりなんだ?


、すごく気持ち良い~♡」


耳元から色っぽい声が聴こえる。彼女はこんな声を出せるのか…。


「お姉ちゃん、何してるの?」


「今見てる夢からエロい夢に変わってくれれば、朝立ちすると思って」


「そんなすぐ変わるのかな?」


「さぁ? でもやらないよりマシじゃない? “睡眠学習”みたいなものだよ」


睡眠学習は何度も聞かせるはず。という事は…。


「あぁん♡」


思った通り、色っぽい声が再開された。頑張って聞き流さないと…。



 「見て陽菜。“睡眠学習”がうまくいったみたい♡」


ボクは陽葵さんの思惑通り、を大きくしてしまった。どう考えても抗える訳がない。


「凄いね…♡」


2人の視線は、間違いなくに注がれている。とても恥ずかしいな…。


でもこれで良いかもしれない。昨日は陽子さんを含めた3人の下着をじっくり見たからだ。その際、3人は恥ずかしい気持ちを抱いたはず。


これがそのお返しになるなら、気が済むまで見れば良いんじゃないかな?


「触り心地はどうなんだろう?」


「お姉ちゃん、いくら何でも触るのは…」


「良いじゃん。ちょっとだけだよ♡」


さすがに止めるべきか? そう思っていたら…。


「あんた達。いい加減、朝日くんを起こしなさい!」


部屋の外から陽子さんが声をかけてきた。内容に違和感を抱いたものの、考えるのは後にしよう。今が起きるベストタイミングだ!


「ふわぁ~。よく寝た(棒)」

上半身だけ起こす。


「あっ、おはよう。朝日君」


「朝日さん、おはようございます」


パジャマ姿の2人は何事もなかったかのように挨拶してくる。ボクもそうしよう。


「おはよう、陽葵さん・陽菜さん」


「それじゃ後でね」


罪悪感があるのか、2人は逃げるように部屋を後にした。


「朝日くん、ちょっと良いかしら?」


「はい、良いですよ」


陽子さんが部屋に入ってきた。どうしたんだろう?


「私の勘違いかもしれないけど、途中から起きてたでしょ?」


バレてるなら隠す必要はないな。


「はい」


「やっぱりね。陽葵が朝日くんの耳元で何かしてる時、妙にソワソワしてるから起きてると思ったの」


なるべく自然にしてたつもりだったのに、陽子さんには無意味だったか。


「あの子達も年頃だからね。異性の朝日くんの事が気になるみたい」


それはボクも一緒だ。


「だからやり過ぎだと思ったら、遠慮なくあの子達に言うのよ」


「わかりました」

起きてる時に、そこまでしないと思うけど…。


「もし朝日くんもになったら…、あの子達をお願いね♪」


「えっ!? 今のはどういう…?」


「朝食はできてるから、すぐ来てちょうだい」

そう言って、陽子さんは部屋を出て行った。


今のは『Hして良い』って意味だよな? これ、陽葵さんと陽菜さんは知ってるのか?


…今はじっくり考える時間はない。ボクは部屋を出て、リビングに向かう。



 陽葵さんと陽菜さんは、特におかしな様子を見せずに朝食を食べている。本当にボクは寝ていたと思ってるんだな。


「陽菜。今日のバイトは“マコール”に現地集合で良いよね?」


ボクと陽葵さんは、しばらく陽菜さんに指導してもらう事になっている。


「朝日さんが場所を覚えたならね」


「大丈夫、覚えたよ」


「ならそうしてくれると助かります」


今朝の件で、2人が予想外の行動をする可能性がある事を知った。“マコール”にいる間は平和であると良いんだけど…。そう思うボクであった。

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