第17話 ドキドキの下着鑑賞会

 ボクに下着の免疫? を付けるため、陽子さん・陽葵さん・陽菜さんの3人は自分の部屋の下着を取りに行った。


リビングでうたた寝してたボクだけど、彼女達の足音で目が覚めた。


「朝日君。起こしてごめんね」


「やっぱり今日は泊まったほうが良いわよ、朝日くん」


疲れと眠さが、断る気持ちを削っていく…。早めにOKしよう。


「では、お言葉に甘えますね」


「寝る部屋は、さっき言ったようにお父さんの部屋でお願いするわ」


「わかりました」

個室ならぐっすり寝られそうだ。


「2人共、明日の大学は3限からなのは聞いてるわ。でも朝食があるから、早めに起きてもらえると助かるんだけど、大丈夫かしら?」


「もちろん大丈夫ですよ」

起きられる自信はないものの、何とかするしかない。


「朝日君はアタシが起こすからね。安心して」


「お姉ちゃんが? 朝日さんの寝顔を見てニヤニヤするか、布団に入り込むんじゃない? わたしが起こすよ」


「陽菜は朝の準備で忙しいんだから、そんな事してる余裕ないじゃん」


高校生は朝から登校するし、確かに時間の余裕はないかも。


「いつも余裕をもって起きてるから気にしないで」


陽葵さん・陽菜さん姉妹が言い争いをしている。陽子さん止めないの?


「あら。私を見るって事は、私に起こして欲しいの?」


「そうじゃなくて…」


「悪いわね、明日もパートがあるの。ある日は朝の準備で忙しいから難しいわ」


「朝日君を起こすのは、にしようか。どっちになっても恨みっこなしだよ?」


「わかった。それで良いよ、お姉ちゃん」


どうやら話が勝手にまとまったようだ。いよいよだな…。



 「それでさ~、下着を見せる順番はどうする?」

陽葵さんが話を切り出す。


「陽菜からにしましょうか。私達の中で一番朝が早いから」


納得の理由だ。さすが陽子さん。


「朝日さん、念のため言っておきます…」


何を言う気なんだろう?


「これから見せる下着は、脱ぎたてじゃないですから! 洗濯済みの下着ですからね!」


「わかってるよ…」

ボク、どんな風に思われるの?


陽菜さんはボクの向かいの席に座る。陽葵さんは隣で、陽子さんは斜め向かいだ。


「…これがわたしの下着です」

そう言って、彼女はテーブルの上にピンクの下着を出した。


陽菜さんに合う、可愛らしい下着だな。


「それ初めて見たな~」

陽葵さんがつぶやく。


「この間、“マコール”ので買ったの。まだ1回しか着てないから、お姉ちゃんが覚えてないのは当然だよ」


そういえば、相沢さんがそんな事言ってたような…。男のボクには関係ないから忘れかけていた。


「アンタが“マコール”で働き出したきっかけって何だっけ? 下着の社割目当て?」


「ううん、それはクラスメートの子だよ。『1人は嫌だ』なんて言うから一緒に応募して働き出したのに、すぐ辞めちゃって…」


「何でその子はすぐ辞めちゃったの?」


「社割が適用されるのは、初勤務から半年後になるの。その子はそれに我慢できなかったみたい。まぁ、他にもいろいろ言ってたけど…」


働き続けるのは、大変な事なんだな…。


「そんな事より朝日君。陽菜の下着を手に取って、隅々までチェックしてみて」


「いや、手に取る気はないよ…」


「さっき陽菜が言ってたじゃん、会計や品出しの時に触るって。だから触れるようにならないとダメだよ」


「でも…」

本人の目の前なのが、緊張の原因なんだよ。


「別にニオイを嗅ぐとか、それを着るとかじゃないんだからさ~。もっと気楽にやらなきゃ」


「朝日さん、私の事は気にせず見て下さい。気になったら止めますので」


「わかった…」

ボクは恐る恐る、陽菜さんのブラに手を伸ばして掴む。


その後…、いろんな角度からチェックする。やっぱり罪悪感は消えない…。


「朝日君。カップの部分をツンツンしてみて」


陽葵さんに言われたようにツンツンする。…適度な弾力があるな。


「見るだけじゃわからない事もあるでしょ?」


「そうだね…」


一通りチェックしたので、次はショーツだ。


「朝日さん、は絶対見ないで下さい。わかりましたね?」


「はい…」


陽菜さんの迫力が半端ないから、こっちはさっさと済ませよう。手に取って一通りチェックした後、すぐ終えるのだった。



 「陽菜さん、見せてくれてありがとう。色々わかったよ」


「そうですか。男の人の朝日さんが下着屋で働く恥ずかしさは理解してるつもりですが、お客様に迷惑をかけないようにして下さいね」


「うん」

陽菜さんの真摯な姿勢は見習いたい。


「では、わたしはお風呂に入ってきます」

そう言って彼女は下着を回収してから、リビングを出て行った。


「次はアタシだね」


陽葵さんがテーブルの上に出したのは…、黒の下着だ。


「黒は大人の色って感じだし、汚れが目立ちにくくて好きなんだよね~」


「そうなんだ。ボクも黒好きだよ」

色で迷ったら黒で良いと思っている。


「朝日君に分かってもらえて嬉しいな♪」


彼女はご機嫌になってくれた。言葉のチョイスは間違ってなかったようだ。


「この下着は結構お気に入りだから、何度も着てるよ。さっきの新品同然の陽菜の下着とは、違うエロさがあるでしょ?」


「別に…」

極端な事を言えば、下着というだけでエロい…。


「ふ~ん。とにかく、さっきみたいにじっくり見てよ」



 陽葵さんの下着も、陽菜さん同様にチェックする。女性の下着って、デザインが凝ってるな~。男の下着とは全然違う…。


「陽葵さん、見せてくれてありがとう」

下着をテーブルの上に戻す。


「もう良いの? ショーツの内側もじっくり見て良いのに♡」


「それは遠慮するよ…」

いくら何でもデリカシーに欠ける。


「最後は私ね」

陽子さんがテーブルの上に水色の下着を出す。


「私は青系が好きなの。黒の次に無難な色だし、重くないから好きだわ」


「確かにそうですね」

使いやすい色なのは間違いない。


「では、チェックします…」

念のため一言言ってから、陽子さんのブラに手を伸ばす。


……彼女のブラは、今まで見たブラで一番大きい。常連客の吉井さんと柏木さんをも凌ぐ。あの時のバスタオル姿(3話参照)で大きい事はわかっていたものの、実際に見ると圧巻だ。


「やっぱり私のブラ大きい?」


ボクの態度が気になったのか、陽子さんが訊いてきた。


「大きいよ~。常連の人達よりもね」

陽葵さんが口を出してきた。


「そうなの…。あんたには前言ったかもしれないけど、大きいのも大変なのよ?」


「それでも気になるって。大変なのも、なってみないとわからないしさ~」


「“隣の芝は青く見える”ってやつね…」


どちらの意見が正しいのかは、ボクにはわからない…。



 陽子さんの下着も一通りチェックし終えた。これで全員見た事になる。


「朝日君。アタシ達の下着を見た感想は?」


「そうだね…、やっぱりデザインがすごいよ。細かいし、こだわりが伝わってくる」


だからこそ、下着屋があるんだろうな。


「別に普通じゃない? ねぇ母さん?」


「そんな事ないわよ? お父さんの下着はシンプルだもの。私からすれば、ちょっとつまらないわね…」


女性の下着と比較されたら、男の下着はどれも地味だよ…。


「他には何かある? 朝日君?」


「一応あるよ」

些細な事だけどね。


「そうなんだ。言ってみてよ」


早速話してみよう。陽子さんと陽葵さんはどんな反応するかな?

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