第4話 全員集結!

 古川さんの家にお邪魔したボクはリビングに案内された。…ソファーはないから、テーブルの椅子に座るべきなんだろうけど…。


「座る場所は決まってないから、適当に座って」


「そうなんだ。それじゃ…」

お言葉に甘えて座る。


「アタシはどっちにしようかな~?」


古川さんの視線は、ボクの向かいの椅子と真横の椅子に向けられている。この2択で悩んでるみたい。


「やっぱ隣だよね♪」


座った彼女は嬉しそうなので、口を挟まないでおこう…。



 「ねぇ今川君。さっきの母さんのオッパイ、どう思った?」

古川さんがボクの肩を叩いてからそう言った。


「えっ!? 急にどうしたの?」

言われたら思い出しちゃうじゃないか!


「母さん、親戚の中でナンバーワンなのよ。一時期、アタシもあんな風になるんだと思ったのにさ~」


既に諦めてる様子だ。まだわからないよね?


「父さんの方のおばあちゃんとか伯母さんは、母さんに比べたら小さめなの。大学生から大きくなる事は期待できそうにないし…」


確かに遺伝が理由なら厳しいかも。


「今より大きくなるには、今川君に揉んでもらうしかないか…」


ブツブツ言ってて聞き取れなかったし独り言っぽいから、スルーしよう。



 「お待たせ」

リビングに来た古川さんのお母さんは、ボクの向かいの席に座る。


話すとはいえ、ボクが話題を振るのは厳しいから、彼女の出方を待とう。…そう思っていたのに、見つめられるだけで話を振ってこないぞ。


陽葵ひまり、あんたが“ズキューン”となるのもわかる。良い出会いがあって良かったわ」


「でしょ? アタシの勘も母さん並って事ね」


2人で盛り上がってるところ悪いけど、今すぐ訊きたい。


「あの、ズキューンって何ですか?」


「アタシの“ビビッと”と同じだよ。母さんはハートを射抜かれた感じがするらしいからそう言うの。アタシは電気が走るような感じがしたから“ビビッと”って訳」


「そうなんだ…」

母娘でも結構違うんだな。


「後は陽菜ひなだけね。あの子はどう感じるかな?」


「さぁね。こればっかりは、母親の私にもわからないわ」


他にもわからない事あるでしょ? そう心の中でツッコんだ時…。


「ただいま~!」


玄関から声が聞こえてきた。


「陽菜が帰ってきたわ」


そう言って席を立った古川さんのお母さんは、リビングを出て行った。きっと迎えに行ったんだな。


「いつか陽菜にも会ってもらおうと思ったけど、こんなに早くなるなんて思わなかったよ~。やっぱり運命だね♡」


相手が違うとはいえ、また見つめられるボク。恥ずかしくて顔から火が出そうだ…。



 古川さんのお母さんに続いて、妹さんもリビングにやって来た。彼女を一目見た瞬間、意外な事実を知る。


「その制服…」

思わず指差してしまった。


「今川君、なの? 女子校の制服残ってるから着ようか?」


「今川くんも男の子だものね。お父さんも昔好きだったっけ…」


2人がとんでもない誤解をしているぞ。


「そうじゃなくて、その制服はボクの高校の…」

まさかこんな繋がりがあるなんて、予想もしてなかった。


「って事は、今川君と陽菜って同じ高校なのか~」

驚いた様子を見せる古川さん。


「そうみたい…」

ボクは卒業生で、彼女は在校生になる。


てっきり、古川さんと同じ女子校だとばかり…。


「陽菜のフラグをこんなに早く立てるなんて、さすが今川君」


話が一区切りしたので、古川さんのお母さんと妹さんがテーブルの席に着く。お母さんは向かいで、妹さんは斜め向かいだ。


「ご挨拶が遅れました。わたしが次女の陽菜です」

自己紹介の後、彼女は頭をペコリと下げる。


外見・雰囲気共に落ち着いた印象で、ボクよりしっかりしてそうだ。


「今川 朝日です…」


「今川さんの事はお母さんから少し聞きました。お姉ちゃんのハートを射止めたらしいですね?」


「えーと…」

ボクは何もしてないから返答に困る。


「アタシはズキューンじゃなくて、ビビッと来たの!」


「ビビッとって何…?」


妹さんも初めてその言葉を聴いたボクと同じ反応をしてる。ちょっと親近感が湧く。


「えーと、電気が走るって言うの? あの時は衝撃的だったな~」


「訳が分からない事が増えた…」


姉妹でもノリが違うようだ。一人っ子のボクには新鮮だよ。


「陽菜。今川君を見て何か感じない?」


「う~ん…」


妹さんがボクをジッと見る。それに合わせ、古川さんとお母さんも見つめてきた。


穴があったら今すぐ入りたい…。恥ずかしすぎる。


「特には…。少しドキドキするけど…」


「今川君。頑張って陽菜を攻略して! この子に、ズキューンとかビビッとの感覚を知ってもらいたいから!」


「無茶言わないでくれ!」

そんな事できる訳がない。


「諦めるのは早いわ、今川くん」


ここでお母さんが口を出すとは…。


「陽菜をちょっとでもドキドキさせられたなら、可能性はあるはずよ。時間をかけてゆっくり攻略すると良いわ」


それ、母親が言う事なの?


「まずは私達を名前で呼ぶ事からスタートね。今川くん、ここに来て私の名前どころか、陽葵の事すら1回も呼んでないでしょ?」


そんな細かい事に気付くなんて凄いな…。


「念のため、もう1度言っておきましょうか。私は陽子ようこよ」


…隣の席の古川さんが、ボクに熱い視線を注いでくる。最低でも1回は名前で呼ばないと帰れないかも?


仕方ない、勇気を出すか!


「ひ…陽葵さん」


「やっぱ名前で呼んでもらうのは良いね♪」


「よ…陽子さん」


「はい、よくできました♪」


ふぅ、今日は恥ずかしい展開の連続だ。しばらくこんな思いはしたくない。


「……あの、わたしは呼んでくれないんですか?」


「あ…」

陽葵さん・陽子さんを呼び終えてボンヤリしてしまった。


「朝日君。フラグを立てた陽菜を忘れちゃダメでしょ~?」


「朝日くん。早く挽回しないと」


ボクが名前で呼んだのをきっかけに、陽葵さん・陽子さんも名前で呼び始めた。


「ごめん、陽菜さん。ぼっーとしてて…」


「別に良いですよ。これからよろしくお願いします、朝日さん」


これで、本当に恥ずかしい時間は終わったな。



 「実は、朝日さんに相談があるんですけど…」

陽菜さんが遠慮がちに声をかけてきた。


「ボクで良いの? 陽子さんか陽葵さんのほうが良いんじゃ…?」


「この悩みは、男の人の朝日さんが適任なんです」


「そうなんだ…」

どんな内容なんだろう?


「その悩み気になるな~。アタシも聞いていいよね?」


「もちろん良いよ」


「私も聞かせてもらうわ」


2人も聞いてくれるなら、ボクよりちゃんとしたアドバイスをしてくれるはずだ。心の負担がだいぶ楽になる。


「それで、相談って何かな? 陽菜さん?」


「はい。……今から、わたしのスカートをめくってくれませんか?」


「えっ!?×3(朝日・陽葵・陽子)」


一体どういう事なんだ? すぐ確認しないと!

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