三途の川管理人助手 お盆のお仕事1
私は今、お盆でお忙しい黄泉総務部のみなさまからのご要望で、助っ人をしております。そのお仕事をいくつかご紹介しましょう。このクソ忙しい様子を皆さまに知っていただきたく。
いやぁ、お盆は大騒ぎでございます。この機にとご実家(現世)に帰られる方、満足して黄泉に戻られる方、たまたまこの時期にお亡くなりになった方々がごった返して、てんやわんやでございます。
私にあてがわれた仕事は主にふたつ。今回はその一つ目をご紹介します。
それは、コールセンターの仲介でございます。初盆のみなさまは特に、初めての黄泉からのご帰省ですから、不安なことも多い様子。質問の電話がかかるはかかる。生きていた頃の、例の廃病院の都市伝説が流行った時のことを思いだしますね。あの時はクソでした。それは置いといて。
「精霊馬ってどこに止まってるんですかね?」「駐車場が見当たらないんですけど...。」
「三途の川以外の通り道ってないんですか!?」
三途の川は普通にこの時期にお亡くなりになった方々も通られますので、特にごった返してございます。この時のために、渡り船は五千を超える程に用意しておりました。また、別のトンネルなどから現世に道を繋いで、ご案内しているはずですが気づいてないのか見ていないのか無視しているのか...。
ともかくも、延々と来る質問の電話。それを、それぞれの管轄をしていらっしゃる専門の部署に繋げる、仲介役をするのが私の役目です。これでも元電話交換手ですからね。利用者様のご要望を直ぐに察知し、数多ある相手に的確に繋ぐ。得意分野だと自負しております。
「いやぁ、相変わらず丁寧だよね。評判良いよ助手さん。」
私は三途の川管理人さんのお手伝いをしておりますから、みなさまからは「助手さん」という愛称で呼んでいただいてます。
「クレームが来て泣いてた新人の子も感謝してたよ、さすが肝が据わってるね。黄泉を大混乱させただけある。」
この方、まだいじってきます。
しかし、生前から多くの方のお相手ををしていたため、必然的に色んな方々とお話する機会もそれなりにありました。セクハラ、今で言うカスハラ、クレーム。びびっていたらきりがございませんからね。あまりに酷い時は、「そんなことを仰られると、電話を繋ごうなんて思えなくなってきますね。二度と。」と丁寧に申し上げると、相手はしおらしくなりますので、それを黄泉でも応用して対応しております。
言っておきますが、私も現世で怨んで怨んで黄泉に来た人間です。誰にだって怨みます。酷いことを言ってくる黄泉の住人にだって怨む。そんな時に、殺人なんて犯して仕事を増やしてくる方なんて特に怨めしい。何かしでかそうとしていらっしゃる方、黄泉のいち役人にも怨まれるかもしれないことに留意されるとよろしいかと。死んでから大変な目に会うかもしれませぬよ。だって、早く黄泉に来た被害者、こんな時期に仕事増やされた役人、まあいろいろとみんなで待っておりますからね。
時期にはくれぐれもご注意を。
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