#6
「もうすぐ夏休みか」
「なに?」
「……は?夏休み中にバイトしたい?」
「なんで?」
「なんか欲しいものでもあんの?」
「それーー私と一緒に居る時間を削ってでも欲しいもんなの?」
「バイトなんてしなくていいから」
「最近はずっと私ん家に来てんだからお金使ってないでしょ」
「他に何が必要なの?ねえ?」
「はぁーー…………そういうこと……」
「私、そんなに外出歩くの好きじゃないから。ダルいし」
「別に欲しいもんとかも無いから。物欲無いし。必要なモノは揃ってるし」
「私はアンタが居ればそれでいいの。他のモノは必要じゃ無いから」
「アンタはそうじゃないの?どうなの?」
「ーーだったら、私以外で無駄な時間使わないで」
「アンタはホントそういうところだから」
「私の為に、って気持ちは悪くないけど、そう思ってるなら何を優先すべきなのか、ちゃんと考えてから行動して」
「んで?まだ、なんかバイトする理由あんの?無いよね?」
「ふんっ……」
「貸しひとつ」
「ダメ」
「貸しひとつだから」
「夏休み中はずっと私ん家。毎日」
「毎日だから」
「いいね?」
「返事は?」
「よろしい」
◇
「んッーーー…………」
「明日から夏休みか」
「今日は寄るとこあるから」
「ほら行くよ」
…………。
「はい。アンタにこれあげる」
「私ん家の合鍵」
「なんでって……必要でしょ」
「アンタが来る度に出迎えるの面倒臭いから。勝手に入ってきていいよ」
「親のことは別にいいわよ。アイツら殆ど帰ってこないから」
「んじゃ、よろしく」
◇
ピンポーン……。
ピコンッ!
蓮花:付いたなら入ってきて
蓮花:部屋に居るから
ガチャ。バタンッ。
スタ、スタ、スタ。
トントン。
「開いてる」
ガチャ。
「いらっしゃい」
「別にノックとかしないで勝手に入ってきていいよ」
「ほら椅子くん。こっち来て座って」
「よいしょ」
「んで、夏休みの宿題持ってきた?」
「そっ。じゃ、よろしく」
「んー……?一緒にやらないのか、って?」
「いや、私はやらないけど?」
「いいの。私はアンタがやったヤツそのまま写すから」
「監視」
「アンタがちゃんとやらないと、それを写す私まで被害を被ることになるでしょ?だから、アンタがちゃんとやってるかどうか、ここで監視するから」
「こういうのは自分でやらなくちゃ意味が無いって?」
「ふーん」
「アンタさァ」
「期末テストの点数が高かったのは……アンタと、私の、どっちだっけ?」
「そうだよね。私の方が高かったよね」
「だいたい、いつも私の分までノートとって真面目に授業聞いてるアンタより、授業もろくに聴いてない私の方がテストの点数は上だったよね」
「私はやらなくても大丈夫だから」
「私はね。真面目なのに私よりもテストの点数が低いアンタの為を思って言ってるの。自分のやる。そのあとに私のもやる。そうしたら、どう?効率2倍でお得じゃない?」
「ん?そう?まあ、そこら辺はどうでもいいでしょ」
「はぁ……。素直にやってくれたらご褒美あったんだけどな」
「そう。ご褒美」
「何がいい?」
「私にして欲しいこと」
「アンタがしたいこと」
「私にして欲しいこと」
「アンタが私にしたいこと」
「ない?」
「あるでしょ?」
「あるよね?」
「ある」
「それをご褒美として」
「してあげようかなー、って」
「思ってたんだけど?」
「必要ない?」
「必要だよね」
「必要」
「うん」
「なに?」
「………………………………は?」
「アンタん家……夏休み中に家族旅行とか行くの……?」
「それに着いて来て欲しいって?」
「うわっ……ダルっ……」
「シンドい」
「面倒臭」
「アンタ、それ本気で言ってる?アンタの家族の輪の中に部外者の私が入れって?気まず過ぎるでしょ。ダルすぎ」
「……本気なのね」
「家族に紹介……」
「はぁーー……。まぁ……そうね。いずれは避けて通れない道、か……」
「……なんでもない」
「先に言っとくけど。私、アンタの家族の前だからって取り繕ったりしないから」
「それでも、いいなら……いいよ」
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