#5






キーンコーンカーンコーン。






「ほら、行くよ」



「何処に、って……ファミレス?」



「他に行きたいところでもあんの?」



「違う?じゃあ、なに?」



「うんうん」



「あー、そういうこと。ドリンクバーだけとはいえ毎日ファミレス通いは金銭的にキツいーーって話ね」



「私は小遣いと食費込み込みで結構貰ってるから。まあ、文句が出ないお金だけ出して放置されてるだけだけど」



「うーん……。お金かかん無くて時間が潰せるとこか……」



「図書館、わ……早めに閉まるか」



「なんかある?」



「商業施設のフードコート?」



「んー……。あそこ、わりと周りが鬱陶しいんだよね」



「つーか、アレか」



「アンタが居るなら私ん家でいいか」











「いらっしゃい」



「私の部屋行ってて」



「飲み物持ってくる」



「なんかリクエストある?」



「私と同じヤツね。はいはい」




…………。





「着替えるから目つぶってて」



「見たい?」



「残念。アンタと違って私は露出狂じゃないから」



「イイって言うまで目開けないでね」




スル、スル、スル……。




「ふぅーー…………」




ビクッ!?




「ダメじゃん。耳に息吹きかけられたぐらいで目を開けちゃ。私、まだイイって言ってないけど?」



「約束破ったアンタにはペナルティ」



「よいしょ」



「はい。アンタはこれからずっと私の椅子ね」



「なんか文句ある?」



「んっ、よろしい」



「んじゃ椅子くん。ずり落ち無いようにシートベルト」



「…………んっ」



「椅子くん。コーヒー飲ませて」



「こぼさないでね」



「…………んっ、ごくっ」



「……ちょっと甘すぎたかも」



「まあ、いいや」



「次はそれ開けて。チョコパイ。食べさせて」



「あむっ……」



「甘っ」



「指にちょっとチョコ付いてる」



「はむっ」



「んっ、ちゅぱっ……ちゅるっ……」



「ぷはっ……」



「ティッシュ取って」



「はい。これでよし」



「……ん?口の周りにチョコ付いてるの?」



「拭いて」



「……んッ」



「……綺麗になった?」



「そっ」



「ゴミ箱そこ」



「あっ、こら。椅子が動くな」



「投げたら?」




ポイッ……!ぽとっ……。




「外れ。下手くそ」



「後で片付けてね」




…………。




「……ん?あー、これ?漫画アプリ」



「1日1話の無料分読んでるだけでかなり時間潰せる」



「読んでるジャンルはだいたい終末モノ。ゾンビとかエイリアンとか謎の化け物とか。あとデスゲーム系にホラー系」



「ラブコメ?恋愛?人の色恋沙汰とか見ても、あんま楽しいと思わないかな」



「バトルモノ……ファンタジーとか異世界系とかは……現実味無さすぎてちょっと」



「あんまり読まないね。でも面白ければ普通に読むし。まあ、ちょっとピンキリだからね。小学生が書いたラクガキみたいなのも多いし」



「だいたい、そんな感じ」



「んー……」



「……そこからなら画面見えるよね?」



「なら文字読み上げて」



「自分で読むより音声で聞いた方が楽でしょ」



「それじゃよろしく。文字読み上げ機能付きの椅子くん」






…………。






「ーー演技の才能無いね、アンタ」



「棒読み。下手くそ」



「……いい時間だしそろそろ帰る?」



「そっ」



「…………」



「…………なに?」



「なんで?」



「立ち上がるの面倒臭い」



「あー、なんかちょっと眠くなってきたかも……」



「ベッドまで運んで」




ガサゴソ……。




「……んっ」



「このまま帰る?」



「それとも」



「もうちょっと居る?」



「………………………………そっ」



「私はちょっと寝るから」



「家着いたら連絡して」



「それじゃ。また後で」




ガチャ……。バタン……。




「…………ヘタレ」



「………………………………」



「いやいやいや」



「何考えてんの、私……」



「はぁ……。自分の部屋だと気が緩む」



「いや……。アイツだから、か……」



「まあ……」



「もう……」



「時間の問題……かな……」



「あー……。だるっ」



「ちゃんと責任とってよ」



「そうじゃなきゃ」



「許さないから」








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