#5
キーンコーンカーンコーン。
「ほら、行くよ」
「何処に、って……ファミレス?」
「他に行きたいところでもあんの?」
「違う?じゃあ、なに?」
「うんうん」
「あー、そういうこと。ドリンクバーだけとはいえ毎日ファミレス通いは金銭的にキツいーーって話ね」
「私は小遣いと食費込み込みで結構貰ってるから。まあ、文句が出ないお金だけ出して放置されてるだけだけど」
「うーん……。お金かかん無くて時間が潰せるとこか……」
「図書館、わ……早めに閉まるか」
「なんかある?」
「商業施設のフードコート?」
「んー……。あそこ、わりと周りが鬱陶しいんだよね」
「つーか、アレか」
「アンタが居るなら私ん家でいいか」
◇
「いらっしゃい」
「私の部屋行ってて」
「飲み物持ってくる」
「なんかリクエストある?」
「私と同じヤツね。はいはい」
…………。
「着替えるから目つぶってて」
「見たい?」
「残念。アンタと違って私は露出狂じゃないから」
「イイって言うまで目開けないでね」
スル、スル、スル……。
「ふぅーー…………」
ビクッ!?
「ダメじゃん。耳に息吹きかけられたぐらいで目を開けちゃ。私、まだイイって言ってないけど?」
「約束破ったアンタにはペナルティ」
「よいしょ」
「はい。アンタはこれからずっと私の椅子ね」
「なんか文句ある?」
「んっ、よろしい」
「んじゃ椅子くん。ずり落ち無いようにシートベルト」
「…………んっ」
「椅子くん。コーヒー飲ませて」
「こぼさないでね」
「…………んっ、ごくっ」
「……ちょっと甘すぎたかも」
「まあ、いいや」
「次はそれ開けて。チョコパイ。食べさせて」
「あむっ……」
「甘っ」
「指にちょっとチョコ付いてる」
「はむっ」
「んっ、ちゅぱっ……ちゅるっ……」
「ぷはっ……」
「ティッシュ取って」
「はい。これでよし」
「……ん?口の周りにチョコ付いてるの?」
「拭いて」
「……んッ」
「……綺麗になった?」
「そっ」
「ゴミ箱そこ」
「あっ、こら。椅子が動くな」
「投げたら?」
ポイッ……!ぽとっ……。
「外れ。下手くそ」
「後で片付けてね」
…………。
「……ん?あー、これ?漫画アプリ」
「1日1話の無料分読んでるだけでかなり時間潰せる」
「読んでるジャンルはだいたい終末モノ。ゾンビとかエイリアンとか謎の化け物とか。あとデスゲーム系にホラー系」
「ラブコメ?恋愛?人の色恋沙汰とか見ても、あんま楽しいと思わないかな」
「バトルモノ……ファンタジーとか異世界系とかは……現実味無さすぎてちょっと」
「あんまり読まないね。でも面白ければ普通に読むし。まあ、ちょっとピンキリだからね。小学生が書いたラクガキみたいなのも多いし」
「だいたい、そんな感じ」
「んー……」
「……そこからなら画面見えるよね?」
「なら文字読み上げて」
「自分で読むより音声で聞いた方が楽でしょ」
「それじゃよろしく。文字読み上げ機能付きの椅子くん」
…………。
「ーー演技の才能無いね、アンタ」
「棒読み。下手くそ」
「……いい時間だしそろそろ帰る?」
「そっ」
「…………」
「…………なに?」
「なんで?」
「立ち上がるの面倒臭い」
「あー、なんかちょっと眠くなってきたかも……」
「ベッドまで運んで」
ガサゴソ……。
「……んっ」
「このまま帰る?」
「それとも」
「もうちょっと居る?」
「………………………………そっ」
「私はちょっと寝るから」
「家着いたら連絡して」
「それじゃ。また後で」
ガチャ……。バタン……。
「…………ヘタレ」
「………………………………」
「いやいやいや」
「何考えてんの、私……」
「はぁ……。自分の部屋だと気が緩む」
「いや……。アイツだから、か……」
「まあ……」
「もう……」
「時間の問題……かな……」
「あー……。だるっ」
「ちゃんと責任とってよ」
「そうじゃなきゃ」
「許さないから」
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