#4
ザーザー……ザーザー……。
「雨多いね。最近」
「ジメジメする」
「だっる」
「まあ、梅雨だし」
「傘、持ってきた?」
「ふーん」
「忘れたんだァ」
「へぇー……」
…………。
…………。
「帰るよ」
「なに?」
「そうだね。まだ雨降ってるね」
「で?」
「……は?」
「走って帰るっ、て? 」
「なんで?」
「いや、だから」
「なんで?」
「なんでそうなんの?」
「雨の中、走って帰んのダルいんだけだ」
「違うでしょ?」
「違うよね?」
「それで?」
「どうすんの?」
「はい」
「うん」
「ふーん」
「私の傘に入れて欲しい、と?」
「ふふっ」
「貸しひとつね」
…………。
…………。
「傘、持って」
「もっと寄って」
「それじゃ濡れるって」
「もっと寄って」
「狭っ」
「あー……」
「今日は真っ直ぐ帰る」
「どっか着くまでに濡れるでしょ」
「濡れたまんま居たくないし」
「私ん家まで」
「直帰で」
…………。
…………。
「到着」
「……ん?」
「傘貸して?」
「ヤッだけど?」
「傘は貸さない」
「家ん中、上がって」
「なに?」
「大丈夫。どうせ両親は帰ってこないから」
「……濡れるから早くしてくれる?」
ガチャ。
バタンッ。
「はぁ……靴、中までびちゃびちゃ」
「だっる」
「アンタはサッサと服脱いで」
「シャワー貸してあげるから」
「その間に服は乾かしとく」
「いいよ。アンタが先で」
「アンタの方が濡れてるでしょ」
「私はそんな濡れてないから」
「アンタが気を利かせた事ぐらい分かるから」
「浴室はそっち」
「ほら行って」
「…………着替え?」
「………………………………」
「私の服は……流石に無理か……」
「服乾くまでタオルでも巻いといて」
「私は気にしないから」
「それでいいね?」
「ね?」
「ほらシャワー行け」
…………。
シャーーーー…………。
「ここタオル置いとくから」
「…………」
「アイツが着てた制服……」
「……………………」
「……………………(くんくん)」
「私の……好きな匂い……」
「それにちょっとアイツの匂いが混じって……」
「…………」
「いや……きっしょ……」
「はぁ……なにやってんの、私」
ハラリッ……。
「あっ……」
「アイツの……下着……」
「へ、へぇー……」
「男物って、こんななんだ……」
「……………………」
「……いやいやいやいや」
「汚いから……」
ガチャ!
「………………………………いや」
「アンタさぁ……」
「シャワー浴びんの早すぎない?」
「……待たせたら悪いから、って?」
「ちゃんと身体洗った?」
「もう1回。ちゃんと洗ってきて」
「いいから」
「回れ右」
ガチャン。
「あああっーーー………………」
「バッチリ見ちゃったじゃん……」
「男の人の初めて見た……」
「あんななんだ……」
「うわぁ……」
「夢に出そう……」
◇
「ふぅ……。サッパリした」
「…………ぷっ」
「くくくっ……」
「すっごい変な顔してるね」
「どう?クラスメイトの家でタオル一枚だけで放置された気分は?」
「残念だけど服はまだ乾いてないから」
「……下着?ああー……アレは洗濯しちゃったから。多分1番乾くの時間かかる」
「心細い?くっ……!でしょうね……!」
「諦めて我慢しなよ」
「それとも……私の、履く?」
「…………うわっ」
「それはちょっと引く」
「変態」
「まあ。いいや」
「私の部屋行くよ」
「リビングに居るよりはいいでしょ」
「別に私は気にしないから」
「ほら。立って」
ハラリッ……。
「あッ…………」
「………………………………」
「アンタさぁ…………」
「……見せつける趣味でもあんの?」
「露出狂」
「さっさと隠して」
「やっぱり私の履いとく?」
…………。
「これ。タオルケット。これに包まれとけば全身隠せるでしょ」
「……ん?シャワー浴びたばっかりなんだから汚く無いでしょ?」
「それともなに?ちゃんと身体洗ってないの?」
「じゃあ。いいよ」
「なんで床?こっち来てソファーに座って」
「はい。ドライヤー」
「まだ髪、乾いてないから。乾かして」
「自分でやんの面倒くさい」
「やって」
ブォォォォーーー…………。
「んーー…………」
「人にやってもらうの案外悪くないかも」
「楽でいい」
「乾いたら梳かして」
「よろしく」
…………。
「あー……。そうね。物はあんま無いね」
「スマホがアレば何でも出来るし」
「前までは物が捨てられなくて溜め込んで。部屋の中もゴチャゴチャしてた」
「でも。結局、使わないなってのに気がついてから、余計な物は捨てるようにした」
「そうしたらスッキリした」
「それからは余計な物は買わないし、持たないし、残しておかないようにしてる」
「余計な物はあるだけで身動きが制限される」
「ダルいし、シンドい」
「だからもう、この部屋にあるのは本当に必要な物だけ」
「必要ないモノはこの部屋に居れないから」
「もういいよ」
「サンキュー」
「悪くなかったよ」
「まだ服乾いてないから。大人しく待ってなって」
「急ぐことなんて無いでしょ」
「ここで、ゆっくりしていきなよ」
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