第19話「応援うちわで戦う男」

第2回戦が始まり観戦を続けてる。

本当に参考になる試合が多い。

剣聖は相変わらず手刀のみで戦っている。


「あいつの戦い方はつまらんな」


「まあ、手の内は明かさない方がいいからね。リリスは次の試合魔法使うの?」


「私は1回戦も魔法を使おうと思っていたのだ。貴様がくだらんうちわを振るから─」


「ごめん……でもたくましかったよ?」


「おい」


「すんません」





リリスの2回戦目がきた。

相手は女剣士だ。


「第2回戦11試合目──開始!!」


──スッ


僕はうちわを取り出して──


「リーリース!!リーリース!!」


応援する。例え怒られても!!ここで振らないのは!!パーティーメンバーじゃない!!

他のみんなは既に応援を始めていた。


リリスは動揺して魔法を発動できていない。


「やぁー!!」


女剣士がリリスに斬りかかる!!


──フッ


リリスは剣を避け女剣士の懐に入り──



「ふんっ!!」


バコーーーーン


女剣士を吹き飛ばした。


「勝者リリス!!」


「きゃーーーー!!リリス!!かっこいいーーー!!」


叫んでいるのはもちろん僕だ。


───ふぁ!?


凄まじい殺気を感じた。

リリスがとてつもなく睨んでる。


──シュン


転移魔法でリリスが目の前に──


グググググ


すっごい右手に力込めてる。さすがにこれは死──



──ガギーーーーーン


「な、貴様、これは──」


僕はうちわでガードした。


「さすがに死にたくないからね」


「なんの素材だこれ」


「僕が能力で作ったものだけど分かんない。見た目も重さも振っても普通のうちわだけど耐久性は並の盾よりあるよ。」


「面白い。今回は許す。次はない。」


良かった。許してくれた。ありがとううちわ。まぁ原因もうちわなんだけど。



その後も試合観戦を続け、ついに僕の出番がきた。


闘技場に踏み出す。すると──


「うおぉぉぉぉぉぉ!!」


「レイシーーーーー!!!」


「待ってたぜえぇぇぇ!!」


あ、世紀末の格好の人たちが叫んでる。他にも会場にいる人がなんだなんだと僕に注目を集めている。


「レイシ、お前人気者なんだな!」


「なんか一部の人達からね…」


相手はムジだ。


「こんなに早く再戦できるとはな!」


「そうだね。全力でいくよ。」


「第3回戦1試合目──開始!!」


僕は能力で両手に武器を作る。


「な、なんだあれ」


「レイシの兄貴、最高だぜ」


会場が騒がしくなる。


「お前、ふざけてんのか」


ムジがキレ気味で言ってくる。

僕が使ったのはそう──


──うちわだ。もちろんリリス応援用のやつ。


「ふざけてない。来い!」


「うおぉぉぉ!!」


ムジが走って向かってくる。振りかぶって殴ってきた。


──パタッ


僕はうちわで拳をいなす。

そして空中に舞い──


「ぶざけんな!!」


ムジが拳を連打してくる。


──パタパタパタパタ


僕は全ていなす。


「お、おいあれって…」


「ああ。」


「舞ってるっっっ!!」


会場が盛り上がる。

カタナ村の祭りで着物を着た女性が扇子を持ち舞うように僕はうちわで攻撃をいなしながら舞っていた。


「あはは!レイシ面白い!!」


アマテラスもご機嫌だ。


「くそっ、当たんねぇ」


「忘れてない?これ能力で作ったものだよ?」


僕は舞いながらムジを煽る。


「お前っ、」


──ガシッ


ムジが片方のうちわを掴み──


「ああぁぁぁぁ」


能力を発動しうちわを消そうとする。

僕はそれを維持しようとする。


───なっ!?


リリスの文字が消えかけた……


「なにやってんのーーー!!」


バチコーーーーン


もう片方のうちわでムジの顔面を叩きそのまま吹き飛ばした。



「しょ、勝者レイシ!!」


「り、理不尽だあぁぁぁぁ!!」


「レイシの兄貴美しかったぜ」


会場は俄然盛り上がって僕の試合は幕を閉じた。


「第3回戦6試合目──開始!!」


リリスの試合だ。僕はもちろんうちわで応援している。


「何回やったら気が済むんだーーー!!」


ドゴーーーーン


リリスの拳で相手の選手が吹き飛ばされリリスが勝った。



──シュン


リリスが目の前に転移し──


──パタッ


まじかこの人!!ノールックでパンチしてきた!!

僕はうちわで拳をいなしていた。



──パタパタパタ


僕はなんとかいたしている。けどこれ1発でも当たったら──



「くっ、拘束魔法発動」


捕まった。僕は両手を広げた状態で動けなくなった。

リリスが拳を握る。

あ、終わ──



──ドゥーーーーン


「ゲホッ、」


人から鳴っちゃいけない音がしたって今。


「最期に言い残すことは?」


え?俺死ぬの?


「リー、リー、ス……」


「貴様!!」


───ドゥン!ドゥン!ドゥン!ドゥン!



僕はめちゃくちゃ殴られた。



「第3回戦12試合目──開始!!」


パトロンの試合が始まった。

相手は騎士団の人だ。バフの能力で自身を強化して戦っていた。普通に強い。服装は鎧ではなく動きやすそうな茶色の冒険者っぽい服で腰に剣を携えている。。

パトロンは武器なしだ。


「パトロンさん、あなたが国王様の友人であることは知ってます。そして国王様の代わりに汚れ仕事を請け負ったことも知ってます。私では実力不足ですがお相手させてもらいます!!」


騎士が剣を構える。


「てめぇごときが、んな事知らなくていいんだよ。実力不足だぁ?ウォーミングアップにちょうどいいじゃねぇか!ぶっ殺す!!」


パトロンはバチバチだ。


───なんだあれ!?


パトロンも影が形を変えて無数の刃のようになり、足元の影から生えるようにパトロンの周りに存在している。

影が立体的になるなんて──



──キンッキンッキンッ


影が騎士に襲い掛かり騎士が剣でパリィする。


「影を操る能力?」


「あれだけではSランクにはなれんだろう」


リリスは冷静だ。


「こんなんで負けてもらっちゃ困るからなぁ!」


パトロンは掌の上に石を作り出した。

能力複数持ち!!


「おらよ!」


パトロンが石を投げる。投げた石はどんどん大きくなり岩となり騎士に襲い掛かる。



「はあぁぁぁぁぁ!!」


───キーーーン!


騎士は岩と影を切断した。


──ブシッ


パトロンの体から血が吹き出すがすぐに再生して治った。さすが吸血鬼だ。すごい再生力。

影にダメージが入ると本体にもダメージが入るのか。



「はぁ、はぁ、」


騎士は疲れている。


「休ませてやんねぇよ」


今度はパトロンの足元に大きな水溜まりができ──



──グォォォォォォ!!


そこから巨大な魚が飛び出し口を開けて騎士に襲い掛かる。


「なっ!?はあぁぁぁぁぁ!!」


──ザンッ


騎士は魚の口から真っ二つに斬った。


「んじゃあ、今度は何に──」


「はあぁぁぁ!!」


騎士がパトロンに斬りかかる。


「これはどうだ?」


パトロンは掌を騎士に向け──



──ピカーーン


眩い光が会場を照らす。


「ぐっ」


騎士は手で顔を覆う。


そして目を開いた騎士は驚く。


「なっ!」


巨大なゴーレムが騎士の目の前にいたのだ。

パトロンはゴーレムの左肩に座っている。


──ドカーーン、ドカーーン


ゴーレムが騎士に向かって拳を振り下げている。

騎士はそれを躱し攻撃するが──


──キーーン


全く通用していない。

これがSランクとそれ以下の差。


「おいおいそこまでか?…なら─」


パトロンがゴーレムにバフを掛けた。


──ドンッドンッドンッ


おそらく攻撃速度上昇、攻撃力上昇、防御力上昇だな。騎士はすんでのとこで躱すが─


──グチャ


「勝者パトロヌス!!」


「お、おい…まじで殺しやがった…」


「きゃーーー!!」


会場が今までとは異なる騒がしさになった。


「あーあ。僕の騎士団に何してくれてるんだよ〜。」


クロノスくんが2階席から飛び降りて闘技場の騎士だったものの血溜まりに触れた。


──チッチッチッチッ


「は!?私は──そういうことですね。」


生き返った騎士が言う。


「もう大丈夫だよ〜。まったくパトロンはさぁ、もうちょっと手加減を知った方がいいよ〜?」


「死ぬほうが悪ぃんだよ」


そんな感じでパトロンと騎士の試合は終わった。


「リリス大丈夫?」


「なにがだ?」


「パトロンと戦うの。死ぬかもしれないよ?」


「むしろ殺すつもりでいく」


リリスは問題なさそうだ。


この後も僕はうちわでリリスは拳で剣聖は手刀で勝ち進み一日目を終えた。

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