第17話「クロノス王国最強武闘大会」

王都内の宿屋にて




「貴様、王都でやるべきことは全て終わったんじゃないか?」




「ああ、そうだね。そろそろ他の国に──」






ゴーン、ゴーン




なんだ。鐘の音が王都中に鳴り響いてる。




──明日、年に一度のクロノス王国最強武闘大会を執り行います。エントリーされる方は今日中に王都の冒険者ギルドで行ってください。




王都中に、いや国中にだろう。武闘大会のアナウンスがされる。






「おい、予定変更だ。エントリーしに行くぞ」




リリスがノリノリだ。




「僕も強い人と戦いから出るけどリリスも出るの?」




「当たり前だ。最近まともに戦えずに欲求不満だったからな」




「う〜どうしたの?」




アマテラスが目を擦りながら言う。




「ごめんアマテラス。起こしちゃった?」




「アマテラスは観戦だな。危険な目に遭わせるわけにはいかないだろう。」




「んー?観戦?」




「明日武闘大会があるんだって。それで僕たちは出ようと思うんだけど─」




「僕戦い見るの好き!!」




アマテラスは観戦してもらおう。




僕らは身支度を済ませて冒険者ギルドに向かった。


ギルドの周りにはたくさんの人達がエントリーしに集まっている。




「すごい人の数だね。」




「そうだな。アマテラス、私の手を握ってろ。」




リリスが親みたいになってる……






「あー!!レイシくん!!」




この声は─




「クロノスくん!!」




「久しぶり〜。あれ?女の子が増えてる…もしかしてレイシくん、リリスちゃんと─」




「違います」




「だよね〜。ねぇねぇ君なんて言うの〜?」




クロノスくんがアマテラスに視線の高さを合わせて話しかけている。兄妹みたいだ。




「僕はアマテラス!!よろしくね!」




「うん!僕はクロノスだよ〜よろしく〜。」




なんか2人とも似てるな。


ん?クロノスくんが耳元で




「ねぇ、この子ボクっ子なんだけど……」




いや君もでしょ!!




「アマテラスは僕の村の土地神様だよ」




「えー!神様だったの〜!?」




「よろしくね〜かみさま〜。」




「アマテラスでいいよ!」




「アマテラスちゃんよろしく〜」




「うん!」




「アマテラスさん、私はソロネと申します。よろしくお願いします。」




「うん!ソロネさんもよろしく!」




「遅れましたがレイシさん、お久しぶりでございます。」




ソロネさんはお辞儀をする。




「久しぶりだね」




「リリスちゃんも久しぶり〜」




「リリスさん、久しぶりでございます。」




「ああ、久しぶりだな」




またクロノスくんが耳元で




「え、なんかリリスちゃん丸くなってない?」




「え?太ってないよ」




「あはは、そうじゃなくて態度が柔らかくなってない?」




「そうだね。お酒を飲むようになって素直になってきた気がする。」




「なるほどね〜。たしかに酔ったリリスちゃんは素直だったもんね〜。足の間に座らせてたもんね〜。」




「そ、そうだね」




あの時の話を掘り返さないでくれ。恥ずかしくなる。




「君たちも武闘大会に出てくれるの〜?」




「うん。僕とリリスが出るよ。」




「ん〜じゃあアマテラスちゃんは僕たちと一緒の観客席にするかい?特等席だよ〜?」




たしかにクロノスくんたちと一緒にいるのが安心安全だけど……特等席って闘技場の他の観客席とは違う、高い位置に作られた国王専用の席だよね?


そんなとこにアマテラスが行ったら迷惑かける気しかしない!!


それなら──




「ギルドの受付のエルフのお姉さんの隣とかにできない?」




「ん〜?全然いいよ〜あの人面倒見良さそうだもんね〜」




「ありがとうクロノスくん!」




「あと、レイシくんはシードにしてもらうけど大丈夫そ〜?リリスちゃんはたくさん戦いたいだろうから普通のエントリーにするね〜」




「ふん。助かる。」




いやリリスさんそれどういう感情?




「え?なんで僕がシード?」




「君は注目の的なんだよ〜?そっちの方が盛り上がるし〜」




「し?」




「僕の友達だから!」




私情かい!




「あ、もう1人の僕の友達もシードにするから大丈夫だよ〜。その人は僕と同じゆ──」




「おい、あれって…」




「元勇者パーティーの」




「貴族殺しの」




「吸血鬼の」




「Sランク冒険者の」




「パトロヌス様だあぁぁぁぁ!!」




周りがさらに一層騒がしくなる。




「あ!あれが僕の友達だよ!!」




クロノスくんが指を指す。まあ周りの人達が分かりやすく端的に叫んでたからだいたいは把握出来たけど。


見ると高身長で黒い髪で無造作ヘア。2つの牙が生えて瞳が赤い吸血鬼がいた。




「ああ?クロノスか。相変わらずちっちぇえな。」




ガラ悪っ。




「君は敢えて止めてるの〜。君も相変わらず器が小さそうだね〜。」




「ああ!?」




こわいって。




「ていうかこいつとんでもねぇ魔力量だな。」




うわっ僕の方向いて来た。




「ははは、どうもレイシです。」




「その子僕の友達だよ〜」




「お前が友達作るなんて珍しいな……俺はパトロヌスだ。クロノスが世話になってるな。タメ語でいい。」




「パトロンと呼んであげて〜」




「ああ!?てめえは何勝手に言ってんだ。まあいいけどよ。」




「よろしくねパトロン。」




「ああ。よろしくな。」




「この2人の嬢ちゃんはレイシのパーティーメンバー…だよな?」




てっきり「女ぁ!」とかって言うのかと思ったら嬢ちゃん呼びなんだ。




「そうだよ」




「私はリリスだ。」




「僕はアマテラス!よろしくね!!」




「お、おう…よろしくな。」




ん?なんか─




「相変わらず女の子慣れしてないんだね〜」




「るせぇ!てめぇこそはやく結婚したらどうなんだ?ああん?」




「僕には!心に決めた人がッ」




「たく、てめぇは冗談ばっかだな。」




「いや〜ここ220年だっけ?結婚しなくても上手くいってるし〜僕実質不老不死だし〜?」




「あれ?220年って─」




「そうだ、こいつが英雄歴を作った張本人だ。」




やっぱりそうなんだ。




「まあね〜。あ、あとパトロンはシードね?今年はSランクが君しかいないんだよね〜。まぁ魔王軍がまた動き出したからみんな忙しいんだろうね〜。」




「そうか。って、てめぇも働け!!」




「僕はもちろん昨日隣の国までパトロールして安全確保したからね〜。」




「そうかよ」




「あの、パトロンって吸血鬼なんだよね?なんで日光が出てるのに大丈夫なの?」




「ああ、それは日光を克服してるからだ。」




「え?じゃあ無敵じゃん」




「さすがに頭潰れたら死ぬよね〜?」




「てめぇが言うとムカつくな!まあ実際そうだが。」




「元々吸血鬼なの?」




「いや、後天的にな─」




「僕を1人にさせたくなくて長生きするために吸血鬼になったんだよね〜?」




「ち、ちげぇわ!好きになった女が吸血鬼でそれで永く暮らすためにゴニョゴニョ」




「あはは!やっぱりパトロンは面白いね〜」




「るせぇ!俺が今年も優勝して今年こそてめぇを倒してやんよ!」




「いやぁそもそも君は優勝できるかな〜?今年はSランクこそいないけどとんでも人達が集まってるよ〜」




「関係ねぇよ」




「ほら、レイシくんなんて初めて冒険者試験受けた次の日にはAランクになってるんだよ〜?しかもBランク試験ではタナカくんを倒してAランク試験ではファルコンを倒してるからね〜?」






「まじか、2日で…しかもファルコンを……というか試験の割にとんでもないマッチングさせてんな!」




よくぞ言ってくれた!




「えへへ〜ファルコンで思い出したけど北斗七星二番星の剣聖アストライオスも来るらしいよ〜」




「アストライオス・スターライトだろ?聞いたことあるぜ?星を司る能力と剣術を組み合わせた技で魅せる男ってな!ぶっ倒してやるぜ!」




「うーん、僕としては負けてくれたら面白いな〜」




「おいてめぇ最悪だな!」




「冗談だよ〜。あ、リリスちゃんはトーナメントのどっち側に入りたい?この2人がシードだからどっちかと戦うことになると思うけど……」




「パトロンの方で頼む。なるべく強い奴と戦いたいのでな。」




遠回しに僕が弱いって言うのやめてくれ。




「パトロン大丈夫〜?女の子殴れないんじゃないの〜?」




「勝負になれば話は別だ。敬意を持って戦う。それが男だ。」




「ふん、全力できてもらわねば困る」




「それじゃあレイシくんはアストライオスと戦うことになりそうだね〜まあファルコンを倒したレイシくんならきっと大丈夫だよね〜」




「全力で頑張ります。」




「それじゃあ今日はこれで〜。──ってソロネ!?」




「美味しいですか?」




「うん!おいしい!!」




ソロネさんはティーセットを出してアマテラスに構ってくれていた。




「あ、すみませんうちのアマテラスが…」




「いえ、構いません。これも執事の役目です。」




「いや〜それは違うよ〜」




珍しくクロノスくんがツッコんだ!!








その後エントリーして楽しい1日を過ごした。





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