第2話 魔導闘法

「なんにしても、自分たちの研究活動は徹底的に締め付けられた。

 当然学院生だった俺もやることが一気に減ってしまい、授業以外は開店休業だ。

 そこで好機とばかり、一つ以前からやろうと思っていたことに手を出そうと決意したんだ。」


「やりたかったことって?」


 レオンハルトにミナトが疑問を投げかけた。

 彼はミナトへ微笑んで答える。


「体術の習得さ。

 前々から鍛錬の必要性は感じていた。

 ベースとなる肉体が強力なものであれば、自身に魔法を使った時の効果はより大きくなるのは道理だろう?

 それに魔法が封じられた時でも戦う術があれば安心もできる。」


 そんなレオンハルトの言葉にギルベルトが同調してきた。


「成程、同じことを考えるとはさすがに親子だ。

 私も君と同様、体術の稽古をさせてもらっていたからね。」


「そう。同様に……だ。」


 ギルベルトの一言にレオンハルトが意味深い言葉を返す。

 そんな言葉に、ギルベルトとミナトは不思議そうに顔を見合わせている。


「父さん。俺の師匠はゴウ・ヤマトだ。

 言っている意味は解ってくれると思うが?」


 その名を聞いた瞬間、ギルベルトの瞳から灯りが消えた。


「やはりヤマト先生か……。」


「どういうこと?」


 ミナトは相変わらず不思議そうな表情のまま二人の顔を返す返す見つめている。

 困惑する彼女に、レオンハルトは静かに答えた。


「父さんと俺の師匠は同じ人なんだよ。

 そしてまた、俺が師匠に付いた時も、リーマン先生と同じように尋ねられた。

 なにせ同じような年恰好の少年が、同じように魔法を修めて門を叩いてきたんだからね。

 その頃には、そういった問いにはある程度落ち着いてはぐらかすことができるようになったんだが、なにせ父さんの影はついて回る。

 その影を追い払うように、俺は修行に没頭するようになった。」


 ミナトは、ギルベルトの顔を見ながらレオンハルトの言葉に聞き入る。

 レオンハルトはそのまま言葉を続けた。


「気が付けば、俺は体術の面でもそこそこの技能を持つに至った。

 そこで師匠は俺の魔法の技術を知り、より高みへ上る術を教えてくれたんだ。」


「魔導闘法、だね。」


 ミナトが静かに答える。

 レオンハルトは小さく頷いて、再び口を開いた。


「師匠は魔法使いとしてはまずまずの技前を持っている。

 だから様々な魔法と体術を組み合わせるコツは教えてもらえた。

 後はとにかく応用だ。

 俺が使える様々な魔法と、体術を組み合わせてより強力な技を繰り出す。

 その面白さに、俺はのめり込んでいった。

 そしてそんな修行の日々に、あいつに出会ったんだよ……。」

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