第16話 ランク

「今回のランク昇進は辞退させて頂きます」

「…理由をお聞かせ頂いても?」


確かに俺はランクを昇格させておきたい。

でももし────


ランク昇格した上でクエストを失敗したら?


変に焦って分不相応のクエストを受けて死んでしまったら?


様々な問題点や不安が残っている。


「正直優等者として扱われ、ランク昇格させて頂くのはありがたいと思ってます。ですが私は狩猟そのものに慣れてません。最近では、よく行っている薬草採取の最中でも少人数で行動しているゴブリン達と遭遇した時だけ狩猟する練習をしています。そんな中で昇格し、仮に狩猟出来ずクエストに失敗したとなると今まで築き上げてきたギルドからの信頼を損なう結果になりかねません。その為、今回は辞退させて頂きたいと思いました」


勿論これは本音だ。

俺自身狩猟に慣れてる訳じゃない。

それゆえにせっかく信頼を置いて昇格させてもらうにしても失敗が連続となると再び降格の恐れもある。

ならば自分の狩猟技術に自信が持てるまで待ってもらおうと考えたのだ。


「…」


ギルド長補佐、アーリアさんはフゥ…と息を付きながら目を閉じ、再び開ける。


「正直私自身も今昇格すべきでは無いと判断しておりました」

「…え?」

「私としましてはアイアンランクにあるゴブリンやその他モンスターの討伐依頼をある程度こなせなければ貴方の言う通り、例え昇格したとしてもその先で失敗が立て続けに起こるとなればギルド側の信頼は落ち、降格にも繋がります。昇格したいと言うのであればさせましたが私と貴方の意見はどうやら一致していたようです」


安心したようにアーリアさんは微笑んでいる。

恐らくこの昇格の件は本人の意思がどうかを確かめるのもあったのだろう。


「では最終確認とさせて頂きます。この度のジェイルさんのランク昇格はお見送り…で宜しいのですね?」

「はい、もう暫くはアイアンランクで依頼をこなしつつ、狩猟の練習もさせて頂きたいと思います」


俺の言葉にアーリアさんは分かりました。と一礼する。

これで強制的にランク昇格とかなったらマジで洒落にならなかったけどどうやらもう少しアイアンランクで色々と修行じみた事は出来るようだ。

俺は立ち上がり、失礼します。と一礼して待合室を出た。



◆◇◆◇◆◇



ギルドから出た俺は一目散に部屋を借りている宿に行き、自室のベッドに横になる。


「…これで良かったんだよな…」


正直悩んでいた。

今の所薬草集めしかやってない中、突然ランク昇格を言い渡されたんだ。

昇格出来るという喜びよりも、今の俺を?という不安や疑問が真っ先に浮かんだ。

それ程俺も昇格した先での行動に自信が無かったからだ。


「いや、これでよかったんだ。仮にランク昇格したとしても狩れないんじゃ意味が無い。ならもう少しアイアンランクで修行を積んでこれで心配は無くなった。と言い切れる所まで下積みをしてみよう」


そう決意した俺は食事をしに行った。

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