第14話 初戦闘!

さて、教会で神と名乗る存在に会った俺はその後にギルドに来ていた。

武器も防具も揃った。

という事で…


「試しに討伐でもしてみるか」


と、アイアンランクの紙を眺める。

だがそのほとんどが街中で出来るものばかりだ。


(まー、そりゃそうよな。ランクは言うなれば自分の実力と経験を示す指標。それらが無い冒険者が難易度の高い、言うなれば討伐系の依頼を受けるなんざ自殺行為にも等しい)


一応アイアンランクでもゴブリン多頭討伐はあるが恐らくそういうのも野良でパーティーを組んで討伐って感じのを推奨してるんだろう。


(…ん?待てよ?)


俺はふと思った。


(別に武器を扱ってモンスターを倒す練習をする程度ならわざわざ正式に依頼を受けなくてもいいんじゃないか?)


つまり、いつものように薬草採取を受けながらもその途中で遭遇したモンスター(弱いやつ)を探してそいつらで試せばいいのでは?という事だ。

まぁここら辺は依頼を受けた他の冒険者の邪魔になるかもしれないから遭遇したら自己防衛としての範囲内になるけど。


(仮にランク昇格した後にモンスターを討伐する依頼を受けてその時に狩れませんでしたじゃ意味が無い。なら報酬は置いといて薬草採取で金を稼ぎ、その上で居合わせてしまったらそのモンスターの倒す練習…やってみる価値はあるか?)


そうなれば…といつも通りに薬草採取を選び、ギルドを出た。



◇◆◇◆◇◆



薬草採取に慣れた俺は30分かそこらで追加報酬が望める程の薬草を集めていた。


「よし、一応ノルマは達成か。って事で…」


少し森の中に行って戦闘の練習でもしますか。

…というか少しドキドキしてる。

狩猟なんてやった事が無い。

やってるとしてもそれは画面の中だけだ。

特別なスキルも超人的な身体能力だってありはしない。

にも関わらず少し俺の足取りは軽かった。



◇◆◇◆◇◆



(…いた)


草むらに隠れながら森の中をゆっくり歩いていると3体のゴブリンが食事をしてる最中だった。

どこか近くに川でもあるのだろうか、その3体のゴブリンは全員生魚を持って齧り付いていた。

何か話してるのか「ギャアギャア」という声を発している。

俺はその様子を見ながら小石を拾い、自分とは真反対にその小石を投げる。

突如ガサガサッと草むらが鳴る音に生魚を捨て、お手製の棍棒を握る3体。

リーダーと思われる1体が何か指示をしたのか、残りの2体がゆっくり草むらの中に入っていく。

これはチャンスだ。

音を立てないようにロングソードを引き抜き、構える。


そして───


ザザッ!!!!


一気に飛び出して背後から背中の真ん中を目掛けて突き刺す。


「ギッ!?」


不意を突かれた1体のゴブリンは必死に刺さった剣を抜き取ろうとするも少しづつ抵抗が弱まり、やがてピクリとも動かなくなった。


「っはあっ!はあっ…!」


1体倒しただけでドッと疲労感が現れる。

だが休んでる暇は無い。

異変に気付いた残りの2体が走って戻ってきた。

その中の1体がなりふり構わず棍棒を振り上げる。

その動きを見て俺は剣が棍棒と擦れ合うように振り上げる。


剣道で使われる応じ技の1つ【擦り上げ技】だ。


その技で棍棒の軌道がずらされ、俺に当たらずゴブリンの棍棒は地面を叩く。

そして俺の擦り上げた剣は既にゴブリンに対して真上にある。

そのまま振り下げ、頭────では無く肩を斬っていた。


「っ!?」


確実に頭は狙ったはずだ────


なぜずれた────?


肩の痛みを手で抑えながら片膝を着くゴブリン。

そのゴブリンをよそに残りの1体が俺に近付き、横に棍棒を振ってくる。

俺はすぐに後ろに下がるとその棍棒は空を撃ち、ゴブリン自体もよろける。

そこに俺は再び剣を縦に振るうがその剣は首を斬らずに腕を斬っていた。

1体は心臓を貫かれ、1体は肩を斬り、もう1体は腕を斬った。

まだ息のあったその2体はお互いに何かを叫び、俺の元から消えていった。

それを中段に構えたまま見送る俺。

完全に姿が見えなくなると緊張の糸が切れたのか剣を地面に突き刺し、片膝を着く。


「っハァ…ハァ…」


変な汗が吹き出す。


なんで…なんで……───


「なんで殺せなかった…?」


自分でも分からなかった。

いや…分からなかったのでは無い────自分が何をしようとしてたのか自覚してて出来なかったのだ。

恐らく…いや、間違い無く…



俺は殺す事に躊躇した。



「はぁ~…」


長いため息を付き、最初に倒したゴブリンを見る。

そのゴブリンの周りは既に血の海になっていた。

そこで俺は気付く。


「…血の匂いで強いモンスターが来るかもしれないから離れないと…」


俺はまだふらつく足に無理矢理喝を入れて足早にその場を去っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る