第13話 邂逅
その光は確かにこの世界で名乗った俺の名前を呼んでいた。
「…貴方は?というかここは…?」
『私は…そうだな…君達が崇める"神"とでも名乗っておこう。そしてここは神域と呼ばれる場所で、君が祈りを捧げていたから精神のみをここに呼んだんだ。この神域は元の世界の時間の進みより数百倍にもさせられるから横にいたシスターには変に思われないから安心してくれ』
"神"───確かにその光はそう名乗り、ここを神域と言っていた。
「…その姿が神の本当の姿…という事ですか?」
『そうだね…よく年老いた男性や麗しい美女の姿を想像する者も多いがそれは単に人間の想像でしか無い。この姿こそ神本来の姿だ』
色々聞きたい事もあるがまず聞きたい事は1つだ。
「私は…元の世界の私はどうなってますか?」
『元の…地球と呼ばれる星での君か。まぁ上司のような人物が君の家を尋ねてきたがそこには誰もいなく、社長にも連絡して君のご両親にも連絡したみたいだ。まぁ当然ながらそっちにもいないから行方不明として捜索願いが出されてるよ』
「ですよねええぇぇぇえええ!!!!!!!!」
やっぱりそうなったよ!!!!
俺が予測した通りの結果だよ!!!!
分かってたけどやっぱりそうなっちゃったのかよ!!!!!!!!
ガクッと項垂れる。
『えっと…大丈夫かい?』
「…なんとか…」
気を取り直して立ち上がり、話を続ける。
「色々と聞いてもいいんですよね?」
『まぁ、そういう反応になっても当然だね』
別に構わないよ。と言われ、様々な質問をし始めた。
「あの世界は異世界…でいいんですよね?」
『その解釈で合ってるよ』
「あの世界で貴方は私に何を望んでいるのですか?」
『何も』
「他にもたくさん有能な人はいたはずです。なのになぜ私をあの世界に送ったのですか?」
『…』
ふむ…と光の形をした神は考え込む。
そしてようやく答えた。
『君の言う通り、君以外にも有能な人は居ただろう。だがただ有能であれば送られるという訳では無い。"適正"と言うべきかな』
「…適正?」
『そう、言い換えれば適応力、フィルターとも言えるだろう。君はその有能な者達よりもあの世界に適応出来たから呼んだ。それだけの事さ』
適応…つまり俺の身体はこの世界に適していた。という事になる。
正直そんな気は無かったが。
そして神は、あっ。と何かを思い出したかのような声を上げたかと思うと光が分裂し、片方の光が俺の中に入り込んだ。
「うえっ!?何を!?」
『落ち着いて、今のは単なる贈り物だ。君自身を勝手にあの世界に送り込んだからね。ちょっとした餞別…と思っておいてくれ』
「…特典…みたいな?」
『まぁ、分かりやすく言えばそうかな。けどすまない。適応出来たとはいえ身体は人間、それほど強い恩恵を与えると身体が崩壊するからね。今君に与えたのは"理の解除"さ』
「理の解除?」
『そう。既に知っているようにあの世界には魔法、魔術が存在する。だがそれでも使える力は条件や制限があって限られている。火は水の中では消えるだろう?だがそれも君が魔法を使えば水や氷の中でも火は灯り、魔法や魔術を使えば呼吸も出来る。今君に与えたのはその条件の解除だ。言うなれば君はイメージするだけで魔法や魔術を使えるという訳だ』
これは自分にとっては余りにも大きい恩恵に思えた。
つまり、あの世界の人々は自然の摂理に基づいた魔法しか使えないが俺はそれを関係無く使う事が出来る。
自動防御とか全ての魔法を使えるとか魔力が他人の数千倍あるとかそういうのは個人的にいらないと思っていた。
幼い頃から空想が好きで趣味で小説を書いていた俺にとっては例え自身の魔力量が少なくてもこの恩恵はありがたい内容だった。
「ありがとうございます」
『喜んでくれたようでなによりだよ。では私はそろそろ失礼するよ。君の未来に幸あれ』
神と名乗る光はそう告げて消えていき、俺自身も目を開けると元の教会に戻っていた。
「これで祈りは終わりです」
「はい、ありがとうございます」
俺は浮き足立ってギルドへ報酬を貰いに歩いた。
あ、読み書きの事教えてもらうの忘れてた。
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