第10話 装備を揃えよう 2
「まさかさっきの店の後ろにあったとは…」
剣と小手を買った後、俺は杖を売っている店の前に来ていた。
さっそく入ってみよう。
ドアに手を掛け、引くとチリーンとベルが鳴る…のだがカウンターにいる長くウェーブが掛かった女性と思われる人物は寝ているようだった。
女性と思われるとなったのはその人物が顔に本を乗せていたからだ。
「…あのー…?」
「……んぅ…?ん?」
本を退けて俺を見た。
「あ~。お客さんね~。いらっしゃ~い?何をお求めで~?」
眠そうな目をして、ゆったりとした話し方をしていた。
…というかこの人どこかで…いや普通に初対面だよな…?
「杖を見に来たんですが」
「いいですよ~。ワンド型とスタッフ型、どちらを使います~?」
ゆっくり見て行っていいですよ~とヒラヒラと手を振り、本を読み始める。
俺は分かりました。と店内に展示されている杖を見始めた。
店内には所狭しと様々な杖が展示されていて同じ物は1つと無さそうだ。
そして心配な事が1つ。
俺、魔法使えるのか?
買った所で魔法が使えなきゃ俺にとってはこれらはただの棒となってしまう為、試しに聞いてみた。
「あの、俺魔法を使った事が無いんですけど適性を測るのとかってあります?」
「ん~と、使った事が無い?あ~まぁ剣士の人は確かに魔力はあっても使わないってのが普通だからね~。そうだなぁ、ちょっと試し撃ちしてみる~?」
どうやら杖の性能を試す方法はあるようだ。
俺はお願いします。と言ってその女性に着いて店の奥に案内された。
◇◆◇◆◇◆
「は~い、とうちゃ~く」
「…ここが試射場…?」
そこはまるで弓道場のような所だった。
木で足場が出来ており、その端は赤く塗られている。
そしてその先に的があり、ここからその的を撃つようだ。
「使った事が無いみたいだから今回はシンプルなワンドを使ってもらうわね~。じゃあまずは…」
と、ワンドの先を的に向け、軽く先を上に傾ける。
「【ショット】」
その言葉と同時に透き通る水色の球体がワンドの先から飛び出し、的に直撃した。
「今見せたのは初級魔法【ショット】と言って単に魔力を飛ばす為の魔法よ~。ほぼ全員の魔法使いがこの魔法からどんどん独自に発展させてくわ~」
こういった感じにね~。と火、水、風と属性を変えて魔力の球体を飛ばす。
「やり方は簡単よ~。このワンドの持ち手、金属部分に自身の魔力を送って振れば魔法は飛んでいくわ~」
と、ワンドを渡される。
いや、その魔力の送り方すらも分からないんですが?
…そういえば…と俺はとある平成を代表する刀アニメのイメージの仕方を思い出した。
(…やってみるか)
物は試し、とそのイメージをする。
頭の中で自身が入れる程の黒い円を描く。
その中に自身を飛び込ませる。
そんなイメージ──────
そして俺はそのイメージをしながら杖を軽く振った。
すると手のひらサイズの透き通る水色の球体が物凄い速さで的を直撃した。
「おおっ!!!!」
初めて魔法を使えたからか思わず声が出てしまった。
「あら~初めてにしては中々の【ショット】を使ったわね~」
これが…これが魔法…!
俺は内心、自身にも魔法使いの適性はあったんだと喜びを感じていた。
◇◆◇◆◇◆
「うん、君にも魔法使いの適性があったね~。まぁ君は剣士みたいだから必要は無いんだけども…」
じゃあ、改めて欲しいの選んでね~。と言われ、俺は再度店内の品々を見て回った。
しばらくしてとある物を見付ける。
「ん?これって…」
それは店内の奥にあった。
刀置台に飾られていた1本の杖。
…いや杖と言うにはそれは余りにも大きく、先端が鋭利に尖っていた。
そして何よりも持ち手以外のほぼ全体が透明な素材で作られ、埃を被っていた。
試しに持ってみる。
(丁度いい…)
それは刀身が透明な1本の"剣"だった。
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