第7話 一日の終わり
串焼きを食べ終えた俺はベッドの絵が描かれている店を見付けた。
多分だけどここが宿なのだろう。
試しにドアを開ける。
カランカランとドアに付いていたベルが鳴り、奥から左腕に衣服を購入した店にいた店員と同じ腕章を着け、赤いバンダナを頭に巻いた若い男性の店員が出てきた。
「いらっしゃい。ここは食事無しで良ければ1泊銀貨4枚、ありだと銀貨6枚だけどどうする?」
「いつまで受付をしてるかによりますね。あと、近くに食事処があればそちらで摂るので食事無しで結構です」
「受付は3人で交代してやってるからいつでも大丈夫だよ。けど食事処となるとあと少しで店じまいするから急ぎな。でどうする?」
食事処はもう少しで閉まるのか…
なら受付だけして先に食事でも取るかと思い、先に受付だけしておいた。
「あいよ。きっかり銀貨4枚。部屋は2階の1番手前だ。食事処ならここの向かいが早いし一番遅くまでやってるから腹減ってるならそこに行きな」
「分かりました。ありがとうございます」
俺は部屋番号とその札だけ受け取って急いで食事を摂る事にした。
◇◆◇◆◇◆
「確か向かいだったよな」
今目の前にはまだ灯りが付いた店がある。
外では樽をテーブルにして木のジョッキを傾けている筋肉隆々の男性達が笑いあっていた。
…変なのに絡まれませんように…
俺はその人達をよそに、扉を開ける。
「あ、いらっしゃいませー、空いてる席へどうぞ!」
もう閉店近いのか席はかなり空いていた。
一応何かあってもいいように入口近くのテーブルに座る。
すると水を持ってきたウエイトレスの女性が注文を聞きに来た。
メニューはあるにはあるんだが…如何せん、文字が読めない…
その為、肉料理っぽそうなので安いのを頼んでみた。
しばらくして料理が届く。
確か料理の名前は
【ミロク豚の甘辛焼き】とか何とか言ってたな。
街の名前の一部であるミロクが使われてる辺りこの街で育てられたか、或いは…
いや変な詮索は止めとこう…
するなら討伐の時だ。
というかこれ…
(まんま生姜焼きじゃん…米無いけど…)
運ばれてきたのは生姜焼き的なやつと切られたフランスパン、野菜の盛り合わせにジャガイモのスープだった。
いや、絶対美味いやつだこれ。
ナイフとフォークを使って一口サイズに切り、口に運ぶ。
(ウッッッマ…)
いや、マージでうめぇわコレ。
ここに米とチューハイがあれば尚更強い…んだけどまぁ、異世界だから贅沢言ってらんないよね。
その後も普通にモグモグと食べ進む。
ジャガイモのスープもちゃんと塩味が効いててこれまた美味い。
てかこのスープ、パンを浸せば美味いのでは?と試しにパンをスープに浸けて一口。
はい、やっぱり美味い。
アカン、これリピーターになりそう…
すぐに食べ終えて代金を払う。
ちなみに代金は銅貨9枚と鉄貨2枚だった。
食事を終えて宿に戻る。
すると受付の男性が痩せ型のメガネをした男性に変わって新聞のような物を読んでいた。
「ん?泊まりか?」
「あぁ、いえ、もう受付は済んでます」
俺は渡された札を見せる。
男性はその札を見て、あいよ。とだけ言ってまた視線を新聞に戻した。
俺は2階に上がり、札の部屋に入る。
中は3畳程の部屋でハンガー2つとデスク、ベッドだけが置かれている簡素な部屋だった。
「さて、ようやく落ち着けるから色々とこれからの事を考えよう」
ポケットから硬貨が入った袋、鍵、スマホ、免許証を置いて1人デスクで考える。
今現在持ってる総資産は
・金貨19枚
・銀貨15枚
・銅貨9枚
・鉄貨7枚
鉄貨は最低硬貨である事は確定とし、子どもさえ買えるあの串焼きを駄菓子の10円と換算すると
・金貨=1万円
・銀貨=1000円
・銅貨=100円
・鉄貨=10円
の換算となる。現時点では
となると今手持ちは合計して
・金貨19枚=19万円
・銀貨15枚=1万5000円
・銅貨9枚=900円
・鉄貨7枚=70円
合計すると20万5970円という結果になった。
あの服中古で数年は使ってるのにそんなにするんか…
まぁ高い分にはいいか…
それと宿代は1日4000円。
今思うと宿と言うよりは食事が無い辺りある種のネットカフェのような感じか。
一応宿はしばらくは大丈夫として個人的にはこの大金は預けたい。
そして今必要な物を浮かべると
・金策
・宿代
・武器、防具
・生活の安定
これらは最低限安定させたい。
となると実質必要になるのは武器と防具だ。
武器は剣道をやってたから剣で多分事足りるが防具は剣道をやってた身からすると小手が一番いい。
宿代はしばらくは大丈夫だし、金策の延長線上にあると思う。
あと考えるべきは生活の安定だ。
それにはやはり…
「ランク上げと武器、防具…か」
自身のレベルに見合った上で報酬のいいクエストが必要になる。
そして身を守る為の武器と防具。
これらがまず第一に考えるべき事柄だ。
「よし、やるべき事と順序は決まったな」
俺は一安心してベッドで寝る事にした。
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