第2話 都市 【アイルミロク】

こっちで掲載するの忘れてた…


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乗る前に先程の女性が矢を受けた馬に杖を向けている。


「【生命の神よ、この馬の傷を癒し給え】」


何やら呪文の様なものを唱えた。

すると大きい杖の先に付いていた透明な水晶玉が緑色に輝き出し、馬の傷口を照らす。

その照らされた傷は瞬く間に傷口が閉じた。

恐らく…いや、間違い無く治療系統の魔法だ。

その証拠に絶え絶えだった馬の呼吸音が無くなり規則正しい呼吸になって元気に立ち上がっている。

感謝しているのだろうか、治療魔法を使ってくれた女性にスリスリと自身の顔を擦り寄せている。


「あ、君、えーっと…」

「あ、名前はジェイルです」

「私はアンナねー。ジェイル君、さすがに後方の馬車に空きは無いからこっちの荷馬車に乗ってくれるー?」

「ええ、構いませんよ?」


正直街まで連れて行ってくれるだけありがたいんだ。

それ以上の要求は必要無い。

俺は荷物が積まれている馬車に乗り込む。

荷車の中は所狭しと木箱が積まれていた。

交易か何かかな?

中には見慣れた果物っぽい物もある。

ま、色んな情報収集は街に着いてからでいいだろう。


「そろそろいいかい?」


手綱を持つ男性に声を掛けられ、俺が頷くとすぐに馬車が動き出した。



◇◆◇◆◇◆



街の近くまで着いた…が…


(壁高…)


想像以上に街を守る壁が高かった。

多分、某巨人の漫画に出てく壁の50mまではいかないだろうけど20mか30m位はあった。

今は街に入る手続きをしているみたいで10人程の行列が出来ている。


(なんで窓口が1つしか無いんだよ…)


日本の窓口といった何人もの受付している人がいるのではなく、3人の守衛のような人達が一人一人何かしらを確認しているみたいだ。


(これ、かなり時間掛かるな…)


そして俺の予想は当たった。

自分達の番が30分後になってようやく回ってきたからだ。

先程の冒険者達の中にいる1人が紙のようなものを守衛に渡すと同時に守衛が俺を指差した。

するとその冒険者が俺に近付いてきた。


「なぁ、ジェイル。お前、身分証とかあるか?」

「あ…」


完全に失念していた。

身分証はあるっちゃあるが…


・運転免許証

・保険証

・マイナンバーカード


しかない。

当然これを見せても無理だろう。


「すみません、あるにはあるんですけど多分こっちは使えないかと…」

「そうか、なら街に入るのに銀貨一枚が必要なんだけどその様子だと…」

「そっちも多分無理ですね…」


だよな…とハァ…とため息を付かれる。

まぁそりゃそういう反応にもなるわな。

今の俺は単に金が掛かるだけのお荷物同然なのだから。


「ま、銀貨位いいか」


男性は苦笑し、守衛に銀貨を一枚渡した。

恐らく入る為の費用なのだろう。

守衛は頷いて道を空け、ようやく俺と冒険者達はこの街に入る事が出来た。

この街は【アイルミロク】と呼ばれる街で田舎と都会の真ん中レベルの街らしい。

その為か、レンガで舗装されてる道と砂利道が入り乱れている。

メインストリートはほぼレンガだが脇道に入ると殆どが砂利道だった。

そして気付いた事がある。

この街の店なんだが看板には絵と文字が一緒になっていた。

多分だけど読み書きが出来ない人向けにこのようなスタイルになってるんだろう。

前世、日本でいう案内板に絵の表記が書かれているようなものだ。

とある建物の前で馬車が止まった。


「お兄さん、到着だよ」

「すみません。ありがとうございました」


俺は礼を言って馬車を降りる。

目の前の建物は周りの建物と比べて大きく、豪華だ。

その上塔があり、そこには大きい鐘が吊り下げられている。


「あの、ここは?」


手綱を握っていた男性に聞くとここはギルドと呼ばれる所で冒険者に対してクエストの紹介や報酬の受け渡し、クエストに受ける上での回復薬の販売を行う他、荷馬車で運ばれた荷物は一旦その街のギルドに卸され、そこから各店舗に流されるらしい。


「お疲れ様ー」


アンナさんに声を掛けられる。


「すみません、費用まで持って頂いて…」

「まー持ってるけど使えないんなら仕方無いってー。とりあえず街には入れたから私達と貴方はここでお別れかなー?」

「そうですね。あとはこちらで色々と試したりしてみます」


うん、分かった元気でねー。と手を振って別れを告げられた。

さて、街には入れたんだ。

ここからは自力でどうにかしよう。

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