作者の異世界旅行譚
JAIL
第1話 始まり
気が付けばそこにいた。
…というより行かされていた。
数分前の事だ。
まぁよくあるテンプレートな異世界転移をさせられていた訳なんだが…
よくあるとは言いつつも何か特典があるのかと思うが今の所分からない。
正直誰かに会った記憶はあるが覚えてない。
思い出せないと言うよりその記憶に"蓋"をされている感覚だ。
転移された時に確認したのは所持品のチェックだった。
急いでポケットの中と横にあった軽い外出用のショルダーバッグの中を漁り、地面に並べる。
ポケットの中にあったのは
・スマホ
・家の鍵
・腕時計
ショルダーバッグの中にあったのは
・病院の予約票
・長財布
・ポケットティッシュ
・カイロ(5枚)
・4色ボールペン
・メモ帳
・少し中身の入ったペットボトル
だけだった。
うんマジで意味無い。
スマホはモバイルバッテリーさえ無いし、現金は100%使えない、家の鍵なんて尚更だ。
ただ財布は入れる方は使えるかな?
さて、ここからどうしようか…それを考えるしか無かった。
遙か遠くには街を守ってるらしき高い外壁が見える。
後ろは森が続いている。
けど俺は一文無し(日本円が使えるのなら別だけど)
すると遠くから何か声が聞こえた。
話していると言うよりこれは言い争いに近い。
その証拠にその声は荒かった。
多分だけど何処かの商人とその雇われた人が盗賊と殺り合ってるとかそこらだ。
少しでもいい、注意を引いて反撃のチャンスを与えた後、事情を説明してなんとか街に一緒に入れるようにしないとと思い、怖さ半分、好奇心半分で様子を伺う事にした。
◇◆◇◆◇◆
結果としては当たっていた。
二台ある馬車は荷車の方は両方無事だが、荷車を引く馬の方に問題があった。
二頭いた馬は、一頭は無事だったがもう一頭の方は矢を胴体に受けていた。
そして商人の方は囲まれている。
幸い冒険者(用心棒?)をしている方は軽い切り傷等をしていたが恐らくジリ貧だろう。
もしも剣を持って装備もしていたら出るかどうかの判断をしていたが生憎こちらは丸腰。
やれるとしたら何か投げて注意を引く事くらいだ。
私は手頃な石ころを二個程手に取って木の枝に一つをぶつけて注意を引く事にした。
バキバキッ!と音が鳴り、盗賊達がそちらを見る。
その隙を見て冒険者と思われる人達が持っていた武器を使って盗賊を倒していた。
すると向かい(馬車の奥)の方で火が上がった。
恐らく魔法だろうけど…初めての魔法を見れなかった。
それはさておき盗賊達が倒れてるのを確認して俺は外に出た。
「:$’、=)!’,)、?」
その時気付いた。
よくある日本語変換では無かった。
間違い無くここは異世界。
これはどうすれば…と考えていたがそこにもう一人、とんがり帽を被り、魔法の杖…スタッフと言ったか?それを持つ紫色のショートヘアをした目が半開きの女性が歩いてきた。
見た感じ魔法使いなのだろう。
て事はさっきの魔法はこの女性が撃ったのか?
女性は男性から何やら聞いていてコクコクと頷き、私に微笑みながら手を出してきた。
…もしかしてと思い、手を握る。
「☆`・,/`}=」
何かを唱えると俺の喉が光出し、やがて消えた。
「…えっと今のは?」
「あー、言葉分かるー?」
やはり翻訳系の魔法だったようだ。
「もしかして今のは翻訳の魔法?」
「んー、翻訳とは少し違うかなー?厳密に言うと君自身の身体に私達の言語が出せるように仕込んだのー。というかよく魔法って分かったねー?もしかして同業者…って成りには見えないけど…」
まぁ確かに同業者では無いかな。
剣は習ってたけど…
その間にもその女性は珍しそうに私の服装を見ていた。
何も珍しくもないただの安い服だろと思ったがそういやそうか、この世界は前世の世界よりかなり文明が遅れている。
長距離の移動手段が馬車って時点でそれは分かった。
てなると今私が着ているこの服は売れば刺繍も含めるとかなりの価値になるに違いなかったからだ。
「実は私の教師が転移魔法の実験をしてまして、私はその実験に付き添ってました。それでいざ実践として私が協力したのですが、どうやら座標を間違えたようで違う所に転移してしまったみたいです」
「へー、え?転移の魔法!?それってかなり高度な魔法じゃない」
…一応即席で考えた設定は信じてもらえたようだ。
そしてやはり転移は高難易度魔法である事も分かった。
「もしかしなくてもあの遠くにある街に行く予定ですか?」
「ええ、そうだけどー…」
「…こちらとしてはご同行させてもらえませんか?正直な所実験をしてた手前、完全に一文無しでここに放り出されたのである程度安全な場所に行きたいのですが…」
魔法使いの女性はうーん…と唸っている。
「俺は構わねぇぞ。こっちとしては隙を作ってくれたヤツだし、恩には恩で返さねぇとな」
切り傷を付けた男性の剣士が治療を終えたのか、包帯を巻いた状態でこちらに寄ってきた。
「…まー確かに、助けられたってのは事実だから…そうねー。分かったわ。色々と事情もあるみたいだし、恩人を見捨てるってのも気が引けるしねー。乗って?街まで連れてくわー」
こうして俺は偶然鉢合わせた人達によって近くの街まで連れて行ってもらえる事になった。
…この先どうなる事やら…
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