さみしさと切なさと哀切の気持ち
数時間後戻って来る愛謝。
「ただいまあ」
「おかえりなさい」
「うわあただいまあ!」
「なんですか!暑苦しいので抱きつかないでください!」
「だってえ、家に戻ってもひとりぼっちなんだもん」
「それは一人暮らしなんだからそうですよね」
「いや、だからさあ。自分の家に帰っても「ただいまあ」って言ってもし〜んとしてるわけよ。なんか寂しかない?」
「そうですか?うちは以前から父が帰ってきて「ただいま」と言っても誰も何も言いませんよ」
「いやそのし〜んは切ないわ!」
「なれちゃうとさみしいとも、切ないとも思わなくなるものじゃないですか?」
「う〜ん、そういう場合もあるけどねえ。どれはどうしてそうなったか聞いていい?」
間々あって話し出すゆずり。
「母は以前、父と同じ会社で働いていたんですが、以前母から仕事の業績も企画も全部奪ったグループがいたんです。父は私が小さいころ突然そのグループの下っ端を家の夕飯に招いたんです」
「うわ〜、」
「帰った後、母は泣いてました。悔しかったんだと思います。でも父はその後も何かとその下っ端の話を夕食中にしました。誰よりも期待してるって」
「なんで、弱い立場の人間に無理くり納得させるんだろうね」
「母が弱い立場だったかはわかりませんよ」
「でも会社辞めて専業主婦だったんじゃないの?」
「そうですね。養われている立場ですか」
「ゆずちゃんのお父さん悪く言いたくないけど、部下を連れてくるってことは結構上の立場なんでしょ?」
「はい重役です」
「上の立場の人間がゴリ押しすれば、下は辛くてもしんどくても飲み込むしかないってわかってて正義感ぶる人間は結構いるよ」
「もう家の両親はそこからはプッツリでしたね」
「そっかあ」
「それなのに父は毎日帰ってくるんです」
「私ならゆずちゃんみたいな可愛い娘がいたら、毎日帰りたいと思うけどね」
「…だから愛謝さんみてるとびっくりするんです。いっつも怒られそうなことペラペラ話して、その場を盛り上げちゃうし、なのに…花は他に譲るし」
「あれ~?そういう大層なことはしてないよお。その時その時喋りたいように喋ってるだけ。勿論故意に傷つけようとは思ってないけどね。私寂しがりやだから人に絡むのライフワークだし!」
「先輩って寂しがりやなのに、どうしてずっと一人暮らしなんですか?」
「ぐっぐふ、痛いところを。だって仕事が忙しいんだもん」
「けっこんとか考えないんですか?」
「そのうちするつもりだけど」
「8割の未婚の人がそう思ってるらしいですね」
「それに寂しいから結婚するのはなんか違う気がするし」
「私は先輩は良いお母さんになると思いますけど」
「どぅふふ、そうかなあ。私も子ども好きだけどね。この前現場に立ち会った時、アフレコ現場に来てた児童劇団の子がめちゃめちゃ可愛くってさ、トイレで2人きりになった時さらってしまおうかと思ったよ」
「私そうなって、先輩が捕まっても絶対かばいませんよ?「◯月☓日午後△△時未明。音質一期声優事務所所属の小堂 愛謝さんが、児童誘拐により逮捕されました」「いっつも突拍子も無いこと言う人だったんですよねえ」「あの人はいつかやると思ってました!」」
ニュース中継風の語りの後、目元に両手を横にして被せ、指をパタパタさせ、モザイクを表現するゆずる。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
お腹を抱えて爆笑する愛謝。
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