Yさんの夢、ひとつめ

 今日見た夢の話とか、してもいいですか?

 いや、興味ないとは思うんですけど、怖かったので、人に話さないとやってられなくて。

 こういうのって、怖さは本人にしかわからなかったりするけれど、それでも聞いてもらうだけで恐怖は和らぐので。


 あ、ありがとうございます。

 今度なんか、甘いものとか奢るので、はい。


 やるべきことがある気がして、祖母の家に帰ったんですよ、あ、夢の中で。

 間取りとかにもおかしいところはなくって。

 それでも、なんとも言えない不気味さというか、違和感があって……それで、あー、ここは祖母の家じゃないな、って。

 何故か、嫌でもわかってしまうんですよ。


 それで、家の中を歩いていくんですけど。

 縁側とくっついている部屋、古い日本家屋にはあるじゃないですか、そこが妙に気になって。

 襖は開いてたので、入ってみたんですよ。


 そういう部屋って、変なスペースあるじゃないですか、掛け軸とか高価な壺とか置くところ。

 床の間って言うんでしたっけ。

 あそこに、大きな写真か何かが飾ってあって。

 何かわからないというか、どうやっても思い出せないんですけど、それが怖くって。

 耐えられなくなって目を逸らしたら、そこに祖母がいました。


 祖母はニタニタ笑いながら、何かを喋って。

 直感的に、あ、これはまずい、って思いました。

 それで、なりふり構わず、無我夢中で祖母を殴ったんです。

 それでも祖母は倒れずに、ニタニタ笑い続けていた、そんな夢です。


 私と祖母は普通に仲が良くて、殴り倒すなんて思考は出るはずがなくて。

 そんな私がとっさに殴ってしまうほどに不気味だった祖母よりも、隣にかけてあった写真のほうが、ずっとずっと、怖く感じたんですよ。


 作り話だとすれば、無駄が多かったり色々あるでしょうけど。

 夢にしては、物語として完成されすぎていて。

 頭に残って離れないんですよ。


 ああ、思い出しました。

 写真に何が写っていたか、なんであなたに話したくなったのか。

 あなたですよ。

 あはは。



 あなたの遺影だったんです、あれ。

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