練習問題7 視点(POV):問1-①

 星読みは大瓶を手にし、食卓のあちこちの杯に手前勝手に酒を注いでいた。傭兵は星読みへ杯を突き出したまま、あたりを見回す。


 魔女の庵というものだから、おどろおどろしい場所を想像していた。しかしその実、調度こそ奇妙であっても整頓された場所である。農婦と学僧の同棲する家があるならこんな具合だろう。そうした有り得ぬ男女の合一をごた混ぜに継ぎ合わせれば、泥地の魔女のような者となるのだろうか。


 とはいえ我らが一行もなかなかの混ぜ物だから、他人をとやかく言えた立場でもない。傭兵はそう思い直すと甘ったるい葡萄酒を煽った。


 隣席では聖騎士が鼻歌混じりにパンをむしって食べている。真面目くさった所作が気に食わず、傭兵は肩を組むようにして酒杯を押し付ける。そうして聖騎士にヤジを飛ばし、着席した星読みが痛飲する様を煽っていると、中座していた魔女が戻ってきた。


 彼女はこの度の遺跡探索の依頼者でもあり、探索に同行して一行を大いに助けてくれていた。今は冒険のさなかにまとっていた外套を脱ぎ、ゆったりとしたガウンの一枚きりを纏って食卓へと歩み寄っていった。捧げ持つ大皿には、串に刺したままの肉が盛られて山をなしている。


 パイの皿や酢漬け入りの壺がひしめき合う卓上に、半ば強引に皿がねじ込まれる。途端、一行は歓声をあげて串焼き肉に手を伸ばした。聖堂騎士が結構なお味で、と声を上げ、星読み学者がさも感心した様子で何の肉か訪ねていた。両者の言葉を魔女は笑顔でいなしている。


―確かに連中の言う通り、この蛙肉は上等な料理に化けている。


 香辛料の利いた蛙の腿肉を噛み千切りながら、傭兵は含み笑いした。

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