　彼女は足音高く床を踏みしめる。宙に身を躍らせ、再び地を蹴る。それを合図に劇場は戦場と化す。ここは彼女のための舞台だ。相対するはかつて男だったもの。宇宙を喰らった真なる怪物だ。水死体のごとき腕が振るわれる。追従して稲妻が走る。彼女は細く息を吐いた。板間が無残に裂ける。腐肉と焦げの混じる臭気が漂う。稲妻を掻い潜り彼女は疾駆する。しかし、左肩に灼熱感を覚える。彼女は一瞬だけ顔をしかめた。眼前に黒い稲妻が迫る。彼女は懐の短刀を抜いた。灰銀の刃が投げ放たれる。悲鳴と共に怪物の右腕がはじける。彼女は抜剣した。怪物を剣の間合いに捕らえた。白刃がひらめく。怪物の胴に刃が食い込む。袈裟斬りにされた怪物が吠えた。

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