第2話 姿を消した幼馴染

 俺の余計な一言で幼馴染のユキはそれから卒業まで教室に顔を出すことはなかった。

 当時は何が起きたのか俺にはさっぱり分からなかった。

 爪が赤くなっているなんて、血豆ができたときか、女子ならばちょっとした好奇心でマニキュアを塗った程度のことだと思っていた。

 血豆ならば教師に申し出ればお咎めどころか心配されるだろうし、マニキュアならば女子の誰かに声をかければ除光液を借りて服装検査までに対処できるはずだった。


 なのに、俺の幼馴染はそのまま教室から姿を消した。


 真面目過ぎる俺の幼馴染が病気以外で学校を休むことはいままで一も度なかったのに。

 メールを送っても、彼女の家に行っても返事はなかった。


 あんなに真面目で、成績優秀な彼女が俺のたった一つの指摘で学校に来なくなるなんて誰が想像しただろう。

 それもただマニキュアを落とし忘れただけで。


 幼馴染のユキが学校に来なくなってからから俺は自分の気持ちに気づいた。

 それまで、ユキのことはいつもそばにいて当たり前の存在だと思っていた。

 だけれど、ユキの声が聞こえない。

 ユキの笑顔を見ることができない。

 それだけで、俺の日常は色褪せていった。


 幼馴染のユキが学校に来なくなって初めて気づいた。

 俺はユキのことが好きだったんだと。


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