第五話 マリーアントワネットの首飾り(中編)
「死ぬって」
「誰にでも起きる現象だ、それを覆すのは奇跡か魔法でもない限り絶対に不可能だ」
「分かっているならなんで彼女に教えてあげないんですか!?そうすれば彼女は少しでもましな未来に」
「少年、君はそれを言ってどうする。知らない人物が目の前に出てきて『あなたこのままだと死にますよ』って言われて信じるかい?」
「それは」
「現に君は僕の話したことを半分以上否定的に捉えている。それが何よりの証拠だろう」
「ッ…でも、それでも伝えなきゃ!!」
「……君がそうしたいなら好きにするといい」
館長から離れたらきっと俺は殺される、でも目の前で死んでしまう人をほっとけるわけがない。
「あのっマリーアントワネット王妃様!!お伝えしたいことがあります!!」
「何者だ!!衛兵!!」
「少しでいいんです!お話をお聞きください!!」
「下々の分際で王妃に無礼な!!捕えろ!!」
「このままだと貴方は市民から反感を買って殺されてしまう!!」
「無礼者め!!この者の口を閉ざせ!!」
「んんんんん!?」
俺は衛兵に捕らえられた。
王妃は俺を一瞥し
「其処の者、私を何者と心得ている。そのようなことはあり得ない。連れていけ」
「はっ!!」
こうして俺は牢屋に連れていかれ、光の無い部屋へ幽閉された。
「だから言ったのに……」
しばらく暗い部屋の中で色々と考えた
やはり館長の言うとおりになった、あの時どうしても自分を制御できなかった。
人が死ぬとわかっていて黙っていられるほど冷静になれる人間ではなかった。
「いったいどれくらい時間がたったんだ」
光もない部屋に閉じ込められて時間の感覚が失われてきたとき、扉の外から声が聞こえた。
「だから言っただろう、信じてもらえないと」
「館長!?」
「見張りの兵を騙して外の警備を無くした。早く出るんだ、鍵ならもう開けた」
「本当だ……あの、館長」
「謝罪なら帰ったら聞く、今はあの首飾りを追うよ」
「場所分かるんですか?」
「目印をつけたんだ、今はラモット夫人の所にある。君にはやってほしい事があるからね」
「やってほしい事?」
「後で説明するから今は急ぐよ、そろそろ兵士が帰ってくる」
「は、はい」
「担いでいったほうが早いかい?」
「エンリョシテオキマス」
こうして館長と脱出した俺はラモット夫人の住む館へと潜入した。
「さあ、ここからは簡単といえば簡単だ」
「簡単?城と比べたら劣るけどなかなかの警備では……?」
「僕が警備を引き付けて倒すから、君はこの首飾りをすり替えてきてほしい」
「館長、案外力技ですよね」
「そうかな?まあいい、いくよ」
「え、あぁ、はい!!」
そうして俺は茂みに隠れながら、途中で館長が兵士を空中に放り投げているのを横目に館に忍び込んだ。
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