第三話 博物館の秘密
「あの子たちって……それにここはどこなんだよ!?俺たちは確か飛び降りて……」
「とりあえず深呼吸だ。落ち着いて聞いてくれるなら全部話す」
「意味わかんねぇよ!?落ち着けるわけ」
「静かに、誰か来たみたいだ」
「んんんんん!?」
パニックになった俺は館長の手で口をふさがれた。
「ーーーーーーーーーー?」
「ーーーーーーー」
俺たちの目線の先には教科書で見るようなヨーロッパの騎士のような人物が、あたりを見回して何か話しているようだった。
言葉がわからないが、館長が俺を落ち着かせるためか手を握ってくれていたので周りを見る余裕が生まれた。
騎士たちの格好を見るにここは日本ではない。建物の造りはまるで教科書で見た宮殿のような場所だ。
「やっといったか。少しは落ち着けたみたいだね」
「はい……あの、ここはどこなんですか」
「全部話す約束だからね、まずここは1725年フランスのヴェルサイユ宮殿の中だ」
「は……?」
「僕の目的は」
「待ってくれ、うまく状況が整理できない。なんで過去のフランスにいるんだよ!?」
「ふむ、説明不足だったか。博物館の天球儀を覚えているかい?」
「え、あぁ…たしか天球儀が青く光って館長がそれに向かって飛び降りたら急に消えて……」
「あの天球儀は時代や場所を超える代物なんだよ。君たちでいう魔法の力でね、もっとも僕らは神秘の力と呼んでいるけれど」
「じゃあ俺たちはタイムマシンみたいにこの時代に来たってわけか?何のために?」
信じられないことの連続でむしろ冷静さが勝ってきた俺は、館長に質問する。
信じられないことだがこの状況で館長から見放されたら、俺はすぐ死んでしまうだろう。
「思ったより冷静だな君は。普段ならやけになって、すぐその時代の人間に捕えられて死んでしまうんだがな」
俺の選択は正しかったようだ。
「そうだ、この時代に来た目的だね。一言で言うならあるものを回収するためだ」
「あるもの?」
「君も聞いたことがあると思うんだが、マリーアントワネットの首飾りだよ」
「マリーアントワネットの首飾り!?」
確か1725年に起きた有名な詐欺事件の引き金になった代物だ。
「君の考えているものだよ。世界史で少しは聞いたことがあるかな?簡単に言えばロアン枢機卿がマリーアントワネットに気に入られるために首飾りを購入して、友人を騙ったラモット夫人に騙され首飾りは売られてしまった詐欺事件だ」
「たしかそのせいで王室は市民の反感を買ったとか…」
「うん、あっているね」
「なんでそんな物の回収を?博物館に飾るためですか?」
「回収の目的はその首飾りに魔法が宿ってしまったからだ」
「魔法が?」
「人に悪意を植え付ける魔法だ。魔法の力に人は抗えない、だから時空をこえて僕が回収しているんだ」
「でもそんな物回収したら館長だって危ないんじゃ」
「僕は人じゃない、君たちでいうところの化け物…人狼なんだよ」
「は?」
「だから人の手に余る魔法、神秘の力が宿ったものを回収している。博物館運営は表向き、本業はこちらだ。」
「博物館【レーツェルミュージアム】は神秘の代物を回収、収容する施設なんだよ」
なんだそれ…ますます意味が分からない。こいつ本気で言ってるのか?
「本当のことだが今のところ誰も信じてはくれてないから、君も気にしなくていいよ」
「今から帰り方を説明するから、聞き逃しの無いようにね」
淡々と話す館長を見ていると、ふと館長と話した時のことが頭をよぎる。
『おとぎ話みたいだろう?本当のことだが今のところ誰も信じてはくれてないから、君も気にしなくていいよ』
気が付いたとき俺は俺自身でも驚くことを口走っていた。
「俺も一緒に連れて行ってくれ!!」
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