回想・最悪の夏休み
その日、俺は校舎裏でタバコを吸っていた。夏休み目前、ギラギラと太陽が容赦なく照りつける中、煙を吐き出した瞬間、後ろから声がかかった。汗でべたついた制服の襟を軽く引っ張り、少しでも涼しくなろうとしてた時のことだ。
「おい、真中!」
振り返ると、そこには体育教師ゴリ沢こと、渋沢が立ってた。がっしりした体つきに短髪、いつもジャージ姿の彼は、元ボクサーの雰囲気を醸し出してた。その鋭い目つきに、俺は思わず舌打ちした。タバコを地面に投げ捨てながら、俺は挑発的な目つきでゴリ沢を見上げる。
「チッ…また来やがった」
「このままじゃ退学処分になるぞ。そもそも未成年の喫煙は……」
はじまった。この教師はいつもこうだ。給料が上がるワケでもないのに、俺のような問題児を更生させることに執念を燃やしている。奇特なことだ。と、俺がいつものように聞き流していると――。
「よし決めた!せめて心を入れ替える為に、夏休み中、毎日学校に来て校舎の掃除と草むしりをしろ。俺が監督する」
ゴリ沢の言葉に、俺の頭の中で警報が鳴り響いた。夏休みの予定が頭をよぎる。バイト、ツレとの約束、何もしない自由な時間。それらが目の前で崩れ落ちていくのを感じた。
(冗談じゃねぇ!何の権利があってそんなことを――)
俺が反論しようとした矢先、ゴリ沢は容赦なく言い放った。その声には、今まで多くの問題児を更生させてきた自信が滲んでいた。
「真剣な話、普段のお前の素行だと退学もあり得る。俺だって庇いきれん」
庇ってくれなんて頼んだ覚えはないが、さすがに退学は避けたかった。ゴリ沢の言葉に逃げ道はない。俺は歯を食いしばった。口の中に唾液が溜まり、苦みが広がる。
「クソッ…横暴教師が。わかったよ」
「親御さんには俺から連絡しておく。サボるなよ?サボったら退学だぞ!」
ゴリ沢の最後の警告が、夏の空気を切り裂いた。俺は拳を握りしめ、爪が手のひらに食い込むのを感じた。
こうして俺の夏休みは、最悪の形で幕を切った。
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