関係者インタビュー:「針供養」

 …本当に、面白いことを考える子たち。


 ――針供養はりくようってご存知?


 使い古したり、折れた針を供養する儀式でね。

 コンニャクとか豆腐とかに刺したりするのよ。


 お坊さんが読経どきょうしている前でね。


 …でも、その後に針がどうなるのか。


 それをドキュメンタリーとして撮りたいとね。

 あの子たちが言ってきて。


 ――まあ、普通に考えれば廃棄よね。


 豆腐は生ものだし。

 針は危険物だし。


 …でもね、供養が終わった後にね。


 お坊さんの目を盗んで仕込んだんですって。


 廃棄用はいきようの針の袋に。

 暗視タイプの小型カメラをね。


 凄いと思わない?

 あんな小さなカメラがあるんですもの。


 しかも、それを使って配信するだなんて。


 …電話で知らされて驚きましたよ。

 もちろん、集まった仲間とも見ることにして。


 ――そうしたら、驚いたのなんの。


 普通なら収集車で運ばれて。

 つぶされて、真っ暗で終わりだと思っていたのに。


 …違ったの。


 急に、まとめられてた針が流れ始めてね。

 カメラがすり鉢状ばちじょうの場所を滑り始めて。


 一面銀色をしていて。

 よく見れば、ガラス片や針金が混じっていて。


 とがりものの海と言えば良いのかしら?

 

 上には、ボロボロの吊り橋もかかっていて。


 …人なのかしら?

 時折、誰かが落ちていく様子も見えたわ。


 そのたびに悲鳴や叫び声が周りに響いてね。


 …それを見て。

 私たち、誰ともなく手を合わせたの。


 だって、恐ろしいじゃない。

 あんな場所に、いつか行くことになったらって。


 …それにあの子たち。

 未だに行方がわからなくて。


 あの映像の後から、何の連絡も無くて。


 橋の上で聞こえた声も。

 あの子たちの一人に似ていた気がして。


 …そうね。

 今は、何事もないことを祈るしか無いわ。

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