関係者インタビュー:「飼育」

 …ここ、滅多めったに人を入れないんだよね。


 保護施設という名目だけどね。

 地域の動物は、大体ここに集められるし。


 古い場所ところだよ。

 下手すりゃ戦前という噂もあるほどだ。


 当初は私営で。

 動物園にする予定だったらしい。


 まあ、資金繰りに困って。

 処分場になっていた時期もあるけど。


 ここをドキュメンタリーにしようだなんて。

 酔狂すいきょう以外の何ものでもないね。

 

 ましてや、映像を公開するだなんて――


 …うん、アレね。


 長いこと施設で飼われてて。

 建物と同い年じゃないかとまで言われてる。


 まあ、珍しい品種ものじゃないね。


 それを学生さんが変わってると撮って。

 つい先月に動画で流したそうで。


 …本来は、そのへんにいるのと同じ。

 普通の顔なんだよ。


 でも、前の同僚もそのまた前の同僚も。

 アレの顔が変だと言ってから、すぐ亡くなって。


 事故に病気。

 まあ、ありふれたことなんだけど。


 ただ、学生さんが公開した後からだよね。

 こっちに連絡が来るようになって。


 あの生き物は何だの。

 変わった顔をしているだの。


 その後は、パッタリ電話が来なくなる。

 ――それの繰り返し。


 このあいだも、テレビ局から連絡が来てね。

 撮影したいからと言ってそれきり。


 翌日に局の人間が変死したと報道があったけど。

 正直、どうだかねえ。


 動画も更新が止まっているようだし。

 こっちも中身は見ていないから。


 ん、アンタは見たのかい?

 顔はどうだった?


 …そうか。


 それは、ご愁傷しゅうしょうさまとしか言いようがないね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る