関係者インタビュー:「不一致」

 …撮影したものが、ここまで違うとは。


 いや、長年カメラマンしてきたけれど。

 あんなことは二度と無いだろうから。


 学生さんがね。

 ドキュメンタリーで私を撮りたいと。


 まあ、こちらもプロだから。

 制作過程を見ていくという形で了承りょうしょうして。


 ――モノは、いい出来できになったと思うよ。

 自分のことだから照れくさい部分もあるけど。


 …それが、あんな事になるとはね。


 今も流れているけど。

 あまり、良い気はしないね。


 お願いして消してもらっても、すぐに上がるし。


 …キッカケは、あの写真だろうね。


 学生さんに教えるというていで。

 自前こっちのカメラで風景を撮らせたんだ。


 最初に高原の花畑を見本として撮って。

 次にカメラを学生さんに渡して。


 隣で撮影用のカメラも回ってて。


 うららかな昼下がりでね。

 気候も場所も良かった。


 で、学生さんが撮って。

 一緒に画像を覗き込んで。


 …その翌日だよね。


 彼らから連絡が途絶えて。

 動画だけが上がって。


 …何が、写っていたかって?


 あの場じゃあ、あり得ない光景だよ。


 赤い夕焼けの港。

 子どもが犬を連れて散歩している。


 ――尋常じんじょうじゃない数の子どもと犬。

 その全員の顔がこちらを向いていたんだから。

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