関係者インタビュー:「先回り」
…こんな女、居ないんだよ。
学生さんが訪ねて来て。
そちらの不動産で扱っている数戸のアパート。
共通の女性を住まわせていませんかって。
…そんなわけないんだよ。
この数年間の契約でも。
同じ人への複数の貸し出しは無いから。
でもさ、学生さん動画を見せてきて。
――うん、いま見れるよ。
彼らが投稿しているドキュメンタリーもさ。
社会問題を扱った真面目なものらしくて。
そこに共通して。
女性が見下ろしている姿があると。
単なる映り込みにしては
物件を調べたら、ウチにたどり着いたそうで。
まあ、見たら確かにいるわけで。
…正直、困るんだよね。
思い当たる節なんて一つもないし。
で、見てて気づいたんだけど。
ちょうどその女がいる場所って、空き室なの。
アパートも、マンションも。
狙いすましたかのように空いている場所にいる。
…そしたら、次はさ。
学生さんが外に貼った
ここに行ってみたいと。
次の撮影場所に近いし。
先回りをして、調べたいと。
…まあ、こちらも不法侵入の可能性があるし。
念のため行ったほうが良いと思ってね。
同行して、次の彼らの撮影地に近い場所。
郊外のアパートへと向かったんだ。
…そこも、ちょうど空き室でね。
他の部屋も埋まっていたから。
そこしか無いということで。
先にこっちで鍵を開けて。
…ま、内心は半信半疑。
自分でも、何をしているんだとは思っていたよ。
――で、開けたら誰もいない。
そりゃあ、そうだろうと。
点検する必要も無いと思ったんだが。
学生さんが中に入りたいと言ってきてね。
汚さない条件ならと全員に入ってもらって。
ついて行ったら…いなくて。
そう、いなくなっていたんだよ。
カメラを回していた子も。
ディレクターをしていた子も。
五人の人間が一度に目の前で消えて。
…信じられないでしょ?
こっちだって、そうなんだから。
だから、室内に入って探したの。
そしたら部屋の中央に一台のスマホが落ちてて。
見たら、外からこのアパートを写した映像が。
部屋の窓から女性が。
下を見ている映像が流れてて。
…気味が悪かったんだけど。
放っても置けなくて。
で、結局そのスマホをここに持ってきたわけで。
警察に持って行っても。
今のところ、何一つ進展がなくて。
…しかも、念のため他の部屋も行ったら同様で。
だからこそ、こうして見せられるんだ。
――女性が未だに映っている。
この箱いっぱいのスマホをさ。
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