関係者インタビュー:「海路」

 …ヒラメ一貫いっかんね。

 今、から取り出すから。


 ――うん?

 ああ、学生さんね。


 困ったもんだよね。


 最近、ここも観光で有名になったけどさ。

 まさか撮影中に行方不明とは…


 でも、まあ。

 映像は今も垂れ流しだろ?


 俺も、時々見ているし。


 …そうそう。

 最後はこの水槽を撮ってたんだよ。


 島の一日ってテーマだったらしくて。


 でもな、俺がちょろっとした昔話にさ。

 なんで合わせるかのように居なくなるかな?


 …気になる?その話。


 いや、今はこうして島で寿司屋してるけどさ。

 生まれは内地ないちの山側なの。


 で、婆様ばさまから子どもの頃に面白い話を聞いてさ。


 ――タヌキがさ、ずっと穴掘ってるの。

 生まれの山側からこの島まで。


 開通したかは、今もわからないけどね。

 あと、この島でもタヌキの話があってね。


 有名なの、知らない?

 調べりゃ出てくるから。


 うん、そこのタヌキと共同で掘って。

 山と海で繋げようとしていた、と。


 ――マジだって。

 隣町の人間でも知ってる話なんだから。


 …ああ、話がれた。


 うん、学生さんの行方ね。

 警察も来たけど、分かんないってことで。


 だって、現に動画で流れているし。

 所在不明でも生きていることは確かだろうから。


 まあ、見る限り。

 ずいぶん離れた場所にいるみたいだけど。


 …さっき、タヌキの掘った穴とは言ったけどさ。


 本当にタヌキかも分からないから。


 だって、穴が何処どこにあるかもわからないし。

 人が急に消えたんだからさ。


 こっちの知るタヌキとは違う。

 別のかも知れないし。


 …それに、あの学生さんも今はどうだか。


 だって、明かりも無しの飲まず食わず。

 二ヶ月もぶっ通しで歩いてる。


 今も、数人の歩く音だけがして。


 光も無いのに。

 どこに向かって歩いているんだか。


 まあ、分からない以上はどうしようもない。


 ――生きていても、そうでなくとも…ね。

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