関係者インタビュー:「妙な葬儀」

 …ええ、こちらの用意もほんの一部。

 式場と花の注文ほどで。


 名札も棺の用意も司会進行も。

 ご家族の関係者で行われていました。

 

 撮影に関しては学生さんが数人ほど来られて。

 最初は冗談かと思いましたよ。


 …花、ですよね。私どもも、進行担当者さまからお話を聞かされて驚きました。


 会場にいる全員が一輪の菊を持つよう言われて。

 式の最後まで離さないようにとの注意を受けて。


 …いざ式が始まると学生さんのカメラが回って。


 なんでもドキュメンタリーに使うとのことで。

 あとで脚色されると聞いて。


 どこか不自然さは感じていましたね。


 …話を戻しますが、式は粛々しゅくしゅくと進みました。


 ご遺族の挨拶から、お坊様が経をあげて。

 ――そのとき、妙なことに気づいたんです。


 関係者から式場にいる参加者まで。 


 端から数人の足元に花びらが散っていく。

 手に持つ花が茎だけになっていく。


 …おかしな話ですよ。


 購入したのは生花。

 そんなに早く散るはずがない。


 なのに、順繰りに菊の花びらが落ちていく。


 …ひとり、また一人と落ちていって。

 そこで、私は次の番だと気づいたんです。


 正直、怖かったですよ。


 関係者は素知らぬ顔で立っていますけど。

 こちらは何が起こるかわかりませんから。


 …そうして、隣の人の花びらが落ちたあと。

 何かの息遣いが手元で感じられて。

 

 次々と、まるで引きちぎられるかのように。

 花びらが中心から抜かれていく。


 でも、何もいない。


 最初から、最後まで。

 が見えることはありませんでした。


 …こうして、式はつつがなく終わりました。 


 遺族の方々とその後の連絡はありません。

 こちらは式場と花を注文しただけなので。


 ただ、動画サイトに式の様子が残されて。

 でも、あの学生さんたちは行方不明という話で。


 …花を食べたのは亡くなった方では、と?


 私も、そうは思いたいのですけれどね。

 映像にハッキリと残っていましたから。


 花を食べていた

 …人の姿では、ありませんでしたからね。

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