第10話 発覚の誤解
きょとんと首をかしげるみどりは、ただの人だ。
さっきまでの空気がうそのように霧散していた。
「むしゃ、 お姉ちゃん?」
口を結んでいたテミスへ無垢な目が問いかけると、彼女はぎこちなく動きを再開する。
「ご、ごめんなさい。ちょっと考えごとを……」
「話がそれたけど、要望は確認したよ。一日あれば全部済ませられるな」
口を閉ざすテミスに代わり、この場の
なにか気になることでもあるのだろう、彼の興味は希薄だった。
着替えが四着、下着、肌着、探索用服……。
女児と女子の服。
そんな縁のないものを想像しながらも、隔世の
家の改築用の角材、どうしよ。
庵ふくめみどりの建てた建築物はすべて深層(五百階層以降)から伐採してきている木を使っている。
わざわざ足で行こうとは思えない。約四百層を降りるのはめんどくさい。
「己が編むのはあくまで、シンプルな構造のやつだけ」
「複雑な注文なんてしません」
世捨て人のあなたにできるとも思えませんし。
言外の思考は、空へむかって絵を描くように予定をたてるみどりのあずかり知らないまま、二の句をつむごうとして止めた。
どうして素直に我を通して話せるの?
彼が奔放で己を隠さないから、恩人であり同時に探索者としても興味の惹かれる存在だから、どれも正解のようですべてが否のようにも感じる。とどのつまり分からない。
不毛な疑問だったと息をつき、食について議題を移そうとしたときだった。ぐうう、寝巻きのリストの腹から食を求める声が上がった。姉妹の腹事情は似ているのかもしれない。
「……先に朝にしよ」
「ええ……」
とうのリストはみどりの隣で木製くまへと手を伸ばしていた。
話の半分も聞いていないようで、二人の視線に?を浮かべるばかり。
「リストは気楽ね」
「お姉ちゃんみたいに⁉︎」
顔をそらしていた。
少女の認識を超え、気づいたときには、である。
なにもこんなところで格の違いを見せつけなくてもいいじゃない!
「…くっ、テミス、昔はこんな感じだったの?」
屈辱はそこにあった。
美貌の少女の
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「己はね、思うのよ。探索者の殺人パンチを一般人に向けちゃだめだって」
「だれが一般人ですか。冗談は深層『霊峰』に住んでることだけにしてください」
「しんそう?なに言ってんの、ここは九十層『霊峰』であって、深層は五百階層からでしょ」
「え、五百?」
「ごひゃく〜」
「うんうん、リストは素直だなあ。深層とまで言わせるんだ、それなりの過酷じゃないとね」
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