甘いか、しょっぱいか。それは、問題だ。

鯉登りとんちの卵焼きって、甘いの?」

 鮎華あゆかに卵焼きを自分で作ればいいと言った男子に訊き返す。


「甘い」

 不貞腐ふてくされた声が返ってきた。

「けど、甘いの、あんま すきじゃない」


鮎華あゆかんちは?」

 会話が続く。


「うちは、醤油がらいんよ」

 鮎華あゆかが笑って答える。

「まぁ、そこが おいしいんやけどね」


「ふぅ〜ん」

 鯉登りと鮎華あゆかの弁当箱をのぞきながら つぶやく。

「今度、食べさせてよ」

 鮎華あゆかの耳もとで、そっと。

鮎華あゆかの作ったやつ、食べさせて」


 それが、鮎華あゆか鯉登りとを意識した 最初だったと、

 鮎華あゆかは記憶している。








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