簡単そうで、難しい。

 高校生にもなって、

 料理のひとつもできないって訳ではないけれど。


 鮎華あゆかは、まだ 自分の納得がいく卵焼きを作れたことがない。


 卵焼きって、

 あの くるくるするのが、難しいんだよね。


 卵焼きを作る時は、専用の卵焼き器を使う。

 それは、鮎華あゆかの母のこだわりでもあった。

「そのフライパンで卵以外焼かないでね。においが付いちゃうから」というのが、その理由だ。


 卵焼きを作る時にしか使われることのないフライパン。

 なんて贅沢なのだろう。


 でも、鮎華あゆかにとっても、それは破られてはならない決まりルールなのである。



 一度、横着おうちゃくをして、卵焼き器でそのままウインナーを焼いてしまったら、焦げがついて後始末が大変だった。

 焦げを洗い流した後で作った卵焼きは、

 確かに

 母の言う通り 卵以外の匂いが付いてしまって、にはならなかった。


 卵焼き専用であることが いかに重要か、鮎華あゆかは身をもって知っているのだ。



 鮎華あゆかは、早く 自分の納得がいく卵焼きを作れるようになりたかった。





 


 

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